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Sabbat・Servant(サバト・サーヴァント)  作者: ゆにろく
6月3日 日曜日
1/61

1話 二階堂 薫

初めましてゆにろくです!!

拙い文章ですがよろしくお願いします。

しっかり最後まで書ききるつもりですのでよろしければ最後までお付き合いくださいませ。

◆二階堂 薫◆

復讐というものは無意味だろうか。

成し遂げても殺された人間が生き返るわけではない。

憎い相手を殺すことで多少気は晴れるだろう。

しかし、その後待つのは社会的弱者の烙印だけだ。

利口ではない、そう俺は思う。

つまり。


裏を返せば

憎い相手をぶっ殺したとしても、殺された大切な人が生き返り、社会的弱者にならないとするなら復讐は利口だ(・・・・・・)


「契約って奴をして、俺と同じような人間を殺せば彩香は生き返るんだな?」


「えぇ。 それに殺したい奴がいるんじゃないの?」


「あぁ。 いる」


「あなたの復讐に手を貸してあげる」


俺はこのブロンドの髪をした小さな悪魔に魂を売った。


◆◆◆


俺──二階堂薫──は一週間前に婚約者である斎藤彩香を失った。

大学で彩香と出会い、恋人になった。

大学を卒業し、会社に就職、入社2年が経ち生活も落ち着きプロポーズをした。

二つ返事で受け入れられ、


次の日に死んだ。


通り魔に刺されて死んだ。

通り魔。

彼女が何をしたわけでもなく、ただイカれた野郎とすれ違っただけで殺された。

犯人の名は 石動通いするぎとおる

彩香の他に二人も他の場所で殺害、三日前に防犯カメラの映像から名前を特定され指名手配されている。

目的は不明でただ殺人を繰り返す殺人鬼。

彩香は死に、犯人である石動は未だのうのうと世を生きている。

奴は捕まれば死刑だろう。

しかし、逮捕にだって、その死刑にだってすら俺は無関係だ。

俺の知らない場所で逮捕され、俺の知らないところで死ぬ。

死に際の無様な面だって拝むことは出来ない。


それに、何をしたって彩香は帰ってこない。


行き場のない様々な感情は酒でしか紛らわすことしかできなかった。

仕事もバックれ、酒に溺れてはや一週間。


そんな時、窓から急に射し込んだ光。

窓は閉めていたはずなのにカーテンが翻り、6月の生ぬるい風が部屋に吹き込んだ。

そちらに目を向けると、


そこには黒いワンピースを着た、長いブロンドの少女が立っていた。


ここはマンションの4階であり、どうやったって窓から入ってはこれない。

幻覚……か?

挙げ句のはてに少女の背中からは黒い小さな羽が生えていた。

少なくとも人間でないことを悟った。

ただ少女を見ている俺に向かい彼女は口を開いた。


「私は悪魔のサーニャ」


「悪、魔……?」


「そう悪魔。 デーモンよ。 デビルでもいいわ」


そして、サーニャと名乗る悪魔はぺたぺたと窓から部屋に入り込んできた。


「別に取って食おうって訳じゃないわ。 私には人間の協力者がいるのよ」


少しずつ俺との距離を詰めてくる。

後ずさろうとしたが、酒が回ってたせいで、座ったままではうまくいかなかった。


「私と契約して『儀式』に手を貸して欲しいの」


「儀式……?」


「そう、儀式。 悪魔の新しい王を決める儀式よ。 候補者の悪魔は人間界へ降り、相方となる人間を探す。 そして、人間同士を戦わせ勝者を決める」


悪魔? 王?


「勝者になれば、人間にも褒美が与えられる。一定の範囲内であれば願いを叶えてもらえるのよ。 どう?」


ここまで俺が冷静でいられたのは、俺にぶち抜けた度胸があるからとかそんなんじゃない。

単に他のものに興味がわかなかったからだ。

それが悪魔との邂逅だったとしても彩香を失ったことに比べればあまりにも小さな出来事のように思えた。

自分を俯瞰でみている気分。

傍観者。


しかし、「願いを叶えてもらえる」という言葉を聞いた瞬間、今まで不透明だった『俺』がその実体を取り戻した。


「願い……」


「そう、『なんでも』といっても過言じゃないわ」


「その願いを叶えてもらえるってやつ……死んだ人間を生き返らせるってのはできるのか?」


冷静に考えれば、幻覚ともわからない、いきなり現れた悪魔を名乗る少女の話を聞き質問を投げかける。

正気とは思えない。

しかし、今の俺には、縋れるものが欲しかった──例えそれが人間でなくても。


「えぇ。できるわよ」


衝撃が走った。

悪魔なのだ。

嘘をついていないとも限らない。

それでも。

それでも、1%の確率でも彩香ともう一度会えるなら、なんだってしてやる。

失っていたエネルギーが、活力が、身体の底からみなぎるのを感じた。


「……。 具体的に何をすれば良い?」


「……見込み違いじゃなかったみたいね。 いい目付きじゃない。 あんたと私の他に悪魔と人間のペアが5セットいる。 そいつらを殺せば勝ち」


「殺す…… 」


人を殺す。

倫理的にも法律的にも犯してはいけない行為。


「心配はいらないわ。悪魔と契約した人間は身体能力が飛躍的に向上して、人殺し用の武器『武装イスティント』を使えるようになるの。 科学的には解明できないから警察なんかには捕まらないわ」


そうサーニャはいった。


「ああ、そうだ。ちなみに契約者はここ東京都内からの選出。 探すのはさほど難しくはないわよ」


「俺は……、俺は一週間前に殺された大切な人を生き返らせたい」


「そう」


俺は決める

──人を殺す覚悟を。



「契約って奴をして、俺と同じような人間を殺せば彩香は生き返るんだな?」


「えぇ。それに殺したい奴がいるんじゃないの?」


「あぁ」


「あなたの復讐に手を貸してあげる」


こうして、俺はこのブロンドの髪をした小さな悪魔に魂を売った。


石動通へ復讐できる。

サーニャは先ほど、契約をすれば捕まらず人を殺せるというような説明をしていた。

本当ならば、石動も殺せるし、彩香も生き返らせることができるわけだ。

サーニャはにやけていた。


「そういえば、名前聞いてなかったわ」


「俺は二階堂薫。やるよ、その儀式。 契約でもなんでもしてやる」


にやけた顔は更に笑みを増した。

しかし、その笑みはやけに歪んでいて、悪魔というに相応しいものだった。


「悪魔と契約を結ぶにはね、適正があって、それが悪魔にはわかるのよ。 生まれつき持ってる契約者としての才能。そして、

──世への不満、恨み、大きな欲望だったり大きな『想い』を持っていること」


なるほど。

やっぱり、俺の憎しみはわかってたわけだ。

酒と悲しさで押し込められていた、彩香を殺した石動という男への恨みが大きく、炎のように胸の奥で燃えているのが自分でもわかる。


「薫。 あなたは契約者としての素質も『想い』もとっても優秀。 勝てるわよ」


やってやる。

彩香を殺した石動をぶち殺す。


そして

ほかの契約者も殺してやる。


俺は彩香を生き返らせる。


やってることは無差別でないだけで、石動となんら変わらない。

史上最高にぶち殺したい男と同じ罪を犯そうとしている。


知ったことか。

他の契約者だってこんなイカれた誘いに乗って自分の願いを叶えようとしているエゴイストどもだろう?

同じ穴の狢。

ぶっ殺されても文句は言わせない。

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