夜宵祭 ー起ー
「照島 祭」
僕は返事と共に立ち上がり礼をする。僕の過去を知るものはいない。だとしても極力目立ちたくはない。大きすぎず、小さすぎない声で、礼もしっかりと。この世界の『普通』を心掛けた。僕は着席して考える。なにせ僕はA組だから長い間暇なのだ。なぜこの学校にはK組まであるのか。ここのだけ少子化が起きていないのか。いや、僕には少子化よりも考えなければいけないことがある。
ユシマは、ここには厄を呼び寄せやすい人間が多くいると言っていた。この『多くいる』というのはどういう意味なのか。人数が多いため多く見えるのか、本当にここには多くいるのか。人数が多すぎる故にそこのところが分からない。普通に考えれば前者であろう。だがあいつには人間の普通など通用しない。他の可能性も考えておかなければならない。
「一年D組」
そもそも僕は特別な力は使えない。あくまで身体能力が跳ね上がっているだけである。人間が出せない力は使えないのだ。かなり不満や心配はあるものの、『人間に憑くような厄は人間の力で祓える』らしい。安全は約束してほしいものだが。
「一年E組」
もちろん死ぬ時は死ぬ。これだけ危ない役目を担われてるのだから、死なないぐらいの特殊効果があってもいいと思うのだが。ちなみに仕事をしても報酬は無い。しかし、恩がある。暫くの間は協力せざるを得ない。流石に死にそうになったら助けてほしいものだ。
「一年F組」
F組が点呼されると同時に会場の電気が全て落ちた。次に電球、蛍光灯が後ろから順に割れていった。会場はざわついている。動こうとも、暗闇のため前が見えないのだ。すると扉が開き、懐中電灯を持った人たちが表れホールの外へと案内してくれた。僕たちはホールの外を見て驚愕した。ホール周辺の電気系統が全て落ちていた。微かに見える明かりもここから15分ほど歩く距離離れていた。まだ夕方であったため道は見えた。それだけでも混乱は抑えられた。