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仇祭 〜アダマツリ〜  作者: lätt
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ゼンヤサイ 其ノ壱

 僕はあの日出会ってしまった。日頃の行いが悪かったのだろうか。おそらく、裏路地を通らなければ今も平和な日常を送っていたのだろう。僕は気が付かなくていいものに気がついてしまったのだ。それについては今は説明しない。説明しなくてもすぐにわかるからだ。すぐにわからない方が平和でよっぽどいいのだが。


 僕は『照島てらじま まつり』今日から高校生である。そしてまさに今、登校中である。『今日から高校生』ということは僕にとって都合がいい。なぜなら、少なからず僕の体は以前と違うものになっている。まず明らかに身長が縮んだ。上半身と下半身のバランスがおかしい。次に身体能力が異常に上昇している。春休み中に鍛えたなどというレベルではないのだ。自分で言うのもおかしいが、完全に別人なのである。そして、今自分に起きている状況は極力秘密にしておきたい。別にバレたところで何かペナルティがあるわけではない。だが、自分の異常さが広まるのは面倒なのだ。過去の自分を知らないものがいないというのは、皆が私を見る基準がこれから制定されるということであり、第三者から見た私の基準となる。つまり私はこれらを隠す必要が無いのである。実は僕が自分の変化に未だ驚いていたりするのだが。


 そんなことを話しているうちに僕は、入学式が行われる市営ホールへついた。ここのホールへは小さい頃からよく訪れていて、かなりの人数が収容できるホールがいくつかある。その広さは他県の学校がわざわざこのホールを使いに年に数回訪れるほどである。ここから僕の最悪で、残酷で、史上最高の高校生生活が始まる。そう意気込んだときだ。突然、辺りが静かになった。ここには入学式へ来た大勢のの新高校生と保護者で溢れていたはずであった。いや、確かに今もまだ大勢いる。普段と違う事といえば、動かないことである。表情一つ変えず、片足で止まっている者もいれば、水を飲みながら止まっている者もいる。つまり、僕以外の時が止まったのである。信じられないかもしれないが、僕だけが動くことが可能で、意識があるのだ。ということは『アレ』が始まるのだ。


 目の前にあった天使の彫刻に、凄まじい音を立てて稲妻が落ちる。砂埃が晴れた先には動く天使の彫刻がいた。

「祭、こんな時で悪いが話がある」

 今、僕に話しかけているこの天使の彫刻は簡単に言えば『神』である。とても可愛らしい姿をしているが、それは仮の姿であり本来の姿ではない。神はわざわざ地上に下りるほど暇ではないらしく、地上と更新する必要がある際は何かモノに憑依しなければならないらしい。そしてこれから僕へと命令が下されるのである。そう、つまりこれがまさに『神のお告げ』である。神は人間にはお告げを伝えることなんてら『人類に相当な危機が迫っている』とき以外にはないだろう。もし、それであったら僕は人類史に名を残すヒーローとなっていただろう。しかし残念ながらそれは違うのである。


 なぜなら『僕は既に人間ではないから』だ


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