朝早いのは、ほどほどに
「…………」
「…………」
この状態!さっさの軽く3倍くらいは、気まずいな!しかも、舞に至っては、もう勉強してねぇし!しかも、めっちゃ二人とも俺のこと睨んでるなぁ…っていうか、勉強は?舞!勉強しないなら、俺は帰るぞ!…なんて言えるわけなく、あるかどうかわからない黙秘権を行使することにした。
「…………」
「いいかげん、こたえなさいよぉぉぉぉ!!」
麗奈が、俺の胸ぐらを掴んで叫んだ!あぁ!俺これからどうなるの?
「ちょっと、麗姉、落ち着いて!ね!」
おぉ!舞、さすが、持つべき物は、空気を読める妹だな!ちなみに舞は、麗奈のことを麗姉と呼んでいる。舞に言われ、渋々といった感じで俺の胸ぐらから手を放した麗奈は、かなり不機嫌になり、不機嫌オーラをだしている。残念だったな、いくら舞と仲が良いとはいえ、しょせん他人!兄弟の絆には、、勝てまい!
「じゃあ、海斗、麗姉も落ち着いたから、さっさと言っちゃいなさい」
舞!!!!寝返ったな!いや、まてよ、今まで、こいつが、俺の味方になったことは………結構、記憶をさかのぼってみたけど、俺の記憶では、常に麗奈側だったな!ここは…もう、降伏しよう。お前らには、負けたよ、最凶コンビ!!!!
「えーと、好きな人だったな!でも俺の好きな人知ってどうするの?」
「そうね、あんたなんかじゃあ、その子は、無理ね!って大笑いしてやるためよ!」
動機が、めちゃくちゃだな!そんなこと言われたら、例え幼稚園児でも口を割らないだろう!
「はぁぁぁぁ!!」
また、ため息かよ!いい加減態度じゃなくて言葉で伝えてくれって!まったく!だが、舞は、遠慮などせず、言いたいことをしかも、はっきり言う奴だ!それは、間違いない!なら舞が、言わない理由は、1つ、、舞の発言により、この場に何らかの障害が生じる!それしかない!なら俺は、舞のため息に気づかないふりをする!それしかない!
「ちょっと、何黙ってんのよ!」
おっと、麗奈の不機嫌さが、最高潮に達していた!限界だ。答えるしか道はない!
「えー、今のところ好きな人はいないな!大体、高校入ってまだ1ヶ月だろ?まだ、どんな子が、いるかとかもわかんねぇし!」
「ふーん、そう!」
あれだけ聞きたがっていて、何?この反応?それと少しの敗北感…
大体俺の好きな人は、お前らに関係ないだろうが!こいつらの考えてることは、俺には、予測不能だ。
「じゃあ、次は、麗姉の番ね?」
「えぇぇぇぇ!こ、ここで、言うの?」
おいおい、人に催促しといてその動揺のしかたは、無いんじゃないの?落ち着け麗奈、これは、皆が、通る道だ!まあ俺の知る限りでは、俺だけだから…おめでとう!お前が2人目だ!
「そうよ、ここで、言うのよ!まずは、好きなひとからね!」
おっ、舞!俺には、今のお前の笑顔が、どうしても、悪魔の邪悪な笑みにしか、見えん。まあいい!今、追い詰められてるのは、おれじゃないしな!
「早いとこ、言っちまえ!楽になるぞ!」
「お前は黙ってろ!」
いかん、いかん、さっきと立場が入れ替わり、つい軽率な発言をしてしまった!以後、気をつけよう!
「…………」
「…………」
また沈黙か、いい加減このパターンもあきてくるな!
「いるわよ!好きな人!」
うぉ!いきなり言ったな!しかも、そんな大声ださなくても聞こえるのに!よし!ここで麗奈にフォローを入れて、機嫌を直そう!まあ、明日不機嫌な麗奈に連れ回されるのは、きついからな!
「でも、好きな人が、いるなら、何で告白しないんだ?お前だったら、絶対うまくいくって!というか、お前の好きな奴だってお前に惚れてるかもしれないぜ!なんたって、一年で、ミス紅だもんな!」
そう!こいつは、入学式直後、紅高の伝統である、ミスコンを制覇し、ミス紅高に輝いた!ちなみに一年生でのミス紅高は、28年ぶりだと聞いた!完璧だ!ここまで誉めれば、麗奈の機嫌だって良くなるはず……
「本当?」
「え?なにが?」
「だから、私が、告白したら、絶対上手くいくって言ったの本当?」
「ああ、本当だって」
やばい!予想以上に機嫌が、悪い!理由は、わかんないけど…
「じゃあ、ここに証拠として書きなさい」
書く?書くって何のために?俺は、一応麗奈の表情を確認してみた!睨んでる!物凄い、勢いで睨んでる!俺は、結局、書くしかなかった!書いた内容はこうだ!
『私、三上海斗は、北条麗奈さんの告白が、上手くいくことを固く保証します』という物だった!何のために書かされたかは、わからないが、さっきよりか、麗奈の機嫌が、良くなったので、良しとするか!
「海斗!数学は、もう終わりにするから、帰っていいわよ!」
まったく!感謝というものをしてないな、舞は!まあ、今に始まったことじゃないし、さっさと部屋に帰るか!
「ちょっと待って海斗!」
部屋を出ようとした所、麗奈に呼び止められた。
「何だよ?」
「今日、すぐに寝なきゃだめよ!」
「な、何で?」
「明日、とっても早く出かけるの!だからよ!」
「…………」
「そういうことだから、おやすみ!」
「お……み」
多分、俺の声は、あいつらに届いていなかっただろう!疲れた足取りで自分の部屋のベッドに入り、必死に明日のいい出来事を想像しようとするのだが、どうしても麗奈に振り回される姿しか思い浮かばない俺であった。
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