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矛盾は、ほどほどに


俺は、この部屋での出来事を嘘偽りなく茜さんに話した。

話を聞き終えると茜さんが俺たちに向かって口を開いた。。


「なるほどね!話は大体わかったわ。聞いたところ、7:3で紅羽が悪いわね。」


7:3?何かおかしいような…


「あの、念のために聞きますけど、俺の3の内容を教えてくれませんか?」


「秘密よ♪」


「……………」


いや、ちゃんとした理由を教えて下さいよ…と言おうとしたが、茜さんから出ている『秘密って言ったら秘密よ♪」オーラの前では、軽く流されてしまうだろうと思ったため言っても無駄だと確信し、潔く諦めた。


「さて、冗談はここまでにして本題に入るわよ!」


そう言うと茜さんは俺から隣にいる高坂に視線を移した。



…っていうか冗談だったのかよ!


「…………」


相変わらず高坂は、うつむき黙っている。そこまで実の姉が怖いのか?おれがそんなことを考えていると茜さんが高坂に対して強い口調で言う。


「紅羽言ったわよね?明日香あすか姉さんのお見合いは、おかしいって!好きでもない人と結婚するのは間違ってるって!」


そう言う茜さんの表情は少し怒って見えた。


「…………」


高坂はまだ黙っている。


「言ったわよね?」


「…う、うん…」


消え入りそうな小さな声で高坂が呟いた。


ところで俺はというと全く話が掴めないどころか明日香さんという知らない人まで出てきて…『ちょっと待ってください!それはどういうことなんですか?』と口を挟むことも出来ず、2人のやりとりを黙ってただ見ているしかなかった。


「あ!海斗君はわからないよね。ごめん!ごめん!一応当事者だしね」


1人話が掴めず置いていかれていた俺にようやく茜さんが気付いてくれたみたいだ。

でも、もし事情を知ってしまったら『聞いたわね!聞いたらもう後戻りは出来ないわよ!』みたいなことになるかもしれない…いや待てよ!俺は被害者なんだぞ。ここは何があっても断固として強気の態度に出よう。そう俺は心に決めた。


「あのね、うちの家ってここの学校もそうだけど何個か系列の学校を持ってるのよ。でも最近は経営があまり良くなかったの…そんなとき偶然にもある大財閥の息子が私たちの姉の明日香姉さんに一目惚れしたみたいでお見合いを申し込んできたの。私たちの両親も学校の経営が悪いことは気にすること無いって言ったんだけど…明日香姉さんは自分が犠牲になって結婚するって言いだしたたのよ…」


なるほど!ようやく話を掴めた俺はこの2人と同じ土俵で話せる状態になった。


茜さんは言い終えると再び高坂に視線を向けた。



「あんなこと言って明日香姉さんを止めたくせに自分は好きでもない人と付き合うっていうの?」


「…………」


高坂は返す言葉がないらしい…そりゃあそうだろう。自分の姉さんに好きでもない人と結婚するのはおかしいと言っておいて自分は好きでもない人と付き合う!これじゃあ矛盾もいいとこだ。


「何とか言いなさい!紅羽。」


茜さんの声が部屋中に響き渡る。



「…わかったわ!姉さん…私、三上海斗と…つ、付き合うのはやめるわ」



高坂の言葉に俺はホッと胸を撫で下ろした。


「海斗くん!妹が迷惑かけて本当にごめんなさい。ほら紅羽も謝りなさい。」


「ご、ごめんなさい!」


茜さんに言われ高坂は素直に謝った。


「いや、もういいよ!これで一件落着したわけだしな。あっ!それと茜さん!ありがとうございました。」


「ちょっと!やめてよ!お礼なんか私たちが悪いのに。」


そんなことを話ながら俺はドアの前にきた。


「じゃあ!そろそろ俺はこれで!」


「あ!そうね。」



ピッ!ガチャ!


茜さんがリモコンで鍵を開けてくれた。


「ちょっと待って!」


もうすでにドアノブに手がかかっていた俺はふいに高坂に呼び止められた。


「な、何?」


「私と友達になってくれない?」


「友達?」


俺は、びっくりして聞き返してしまった。さっきまで付き合えと言っていたのに今度は友達?何か企んでるのか?


「私、学校で友達が全然いないのよ、だから良かったら…」


俺は高坂の後ろにいる茜さんを見た。茜さんはというとお願い!っと体の前で手を合わせている。あの茜さんの様子を見ると高坂は純粋に友達が欲しいのだろう。


「ああ、俺で良かったら友達になるよ!」


俺がそう言うと高坂の表情がパッと明るくなり嬉しそうに笑った。


「うれしいわ!それと私たち友達になったんだから高坂なんて名字で呼ぶのはやめて紅羽って読んで欲しいわ…私も三上海斗ではなく…海斗って呼ぶから。」


突然の申し出だったがとくに断る理由がなかった俺は抵抗なく受け入れた。


「わかった!じゃあ、高…紅羽またな!」


「ええ!またね!」


俺はそう言って第2資料室を後にした。






キーンコーンカーンコーン!!


「ハァ、ハァ、セーフ!」


結局昼休みの大半を第2資料室で過ごしてしまった俺は、午後の授業が始まる寸前に教室にすべりこみ自分の席に座ることに成功した。


「ずいぶんと遅かったじゃない?一体何で呼ばれたのよ?」


そう言って話しかけてきたのは隣の席に座っている麗奈だ。


麗奈が俺に疑いの目を向けてくる。相変わらず鋭いな!


「ん?別にこれと言って大した用事じゃなかったけど!」


「そう、ならいいわ。」



この後、午後の授業が終わるまで麗奈が、この事を聞いてくることはなく何事もなく放課後を迎えた。


「海斗!帰るわよ!」


「了解!帰るか!」


ちなみに俺と麗奈は互いに用事があるとき以外は、必ずと言っていいほど一緒に帰っている。周りの男たちから嫉妬の視線を感じるが、幼馴染み!というポジションのおかげで俺は今も麗奈と2人で帰っていても無事でいられる。

俺はいつも通り校門を出ようとした時、見てはいけないものを見てしまった。


紅羽が、校門のところで誰かを待ってる!もしかして…まさか…


「ねぇ、あんた、どうしたの?急に浮かない顔してさ!」


俺の動揺に気付いたように麗奈が聞いてきた。


「いや、何でもない。」


俺は冷静を装い何のためらいもなく校門をくぐろうとした。



不覚にも紅羽と目が合ってしまった。


「あっ!海斗!」


紅羽が俺に気づいて駆け寄ってくる。

やっぱり俺だったんだな…隣にいる麗奈は、駆け寄ってくる紅羽に驚きのまなざしを向けている。


とうとう紅羽が俺の目の前にきた。


「待ってたわよ!さあ一緒に帰りましょ!海斗。」


そう言って紅羽は俺の隣に並ぶ。


「…………」


俺は今まで何度も麗奈に睨まれてきたが、ここまで殺気を感じるのは初めてだった。



やばい!殺られる!!

そう直感で感じた!






お前はすでに死んでいる!










誰だぁ!俺のことすでに死んでるって言った奴はぁぁぁぁ!!!!

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