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ピッキングは、ほどほどに

思ったよりも学校の校舎は広く、さんざん迷ったあげく、ようやく俺は第2資料室の前に着いた。



コンコン!


ガラッ!


「失礼します。さっき呼び出された1年B組の三上海斗です。」


俺は部屋に入ると辺りを見回した。そこには、俺を呼びだしたはずの先生はおらず1人の女の子が立っていた。あれ?この人も呼び出されたのか?


「あなたが、三上海斗ね。初めまして!私の事は、言わなくてもわかるわよね!」


そんなこと急に言われたって…知るはずもない…綺麗な瞳に長い黒髪、スタイルもよくかなりの美少女。こんな娘に会っていて忘れるはずない。結果、俺は初対面だという結論に達した。


「いや…初めてだとおも…」


「……………」


目の前にいる彼女は信じられないといった表情で俺を睨んでいる。


「…………」


「…………」


何だよ。この沈黙は…思い出せってか、無理だって!絶対知らねぇもん。


「言っとくけど思い出すの待ってるんだったら、はっきり言って無駄だけど。」


「はぁー!」


彼女は呆れたように大きなため息をつくと諦めた様子で口を開いた。


「私の名前は、高坂紅羽こうさかくれはよ。ちなみにこの学校の理事長の娘よ。」


理事長の娘?そういえば美咲が、

「今年、私たちと同じ学年で理事長の娘が入ってくるわしいわよ!」って言ってたような気がする…美咲の奴、学校のことなら大体知ってるからな!親友の麗奈でさえどうやって情報集めてるかわからないって言ってたしな。

…だけどやっぱり会った覚えがない…


「えーと高坂。悪いけど、やっぱりどこで会ったか、いまいち思い出せないんだが」


「本当に覚えてないの!信じられないわ!」


いや、だから覚えて無いって言ってんじゃん!麗奈といい高坂といい俺のまわりの美人は何かしら性格が変わった奴ばっかだな。


「っていうか人違いじゃないのか?さっきから言うように…」


「人違いなんかじゃないわよ!」


高坂が俺の言葉を勢いよく遮る。


「…………」


そんなこと言われたって覚えてないものは覚えてないし…


「なあ、俺と高坂はどこで会ったんだ?」


最初から、こう聞いておけば良かったかもしれない。

まあ聞ける雰囲気じゃなかったけど…


「…ミスコンよ!あの時、私も出てたじゃない。」


「ミスコン?えっと…あっ、思いだした。確か、最後に麗奈に負けて2位だったんだよな。」


「いちいち負けたって言うなぁぁ!」


負けたことかなり気にしてるな。まあプライド高そうだし、一応フォローしておこう。


「何だよ、負けたって言っても最後まで残ったんだから高坂は凄いって!」


「そ、そうかしら」


おっ!乗ってきたな!あと一息。


「そうだって、大体麗奈に勝てるわけないだろ?」


そう、俺が言った瞬間、高坂は再び、怒りの表情を見せた。


「何ですって!私が北条麗奈に勝てない?そうね、確かにミスコンでは負けたわ。屈辱だった、28年間破られていなかった1年生でのミス紅高の称号。それをあろうことか、私以外の人が受賞してしまうなんて…でも、それはまぐれ!私は2度は負けないわ!そして私が1番だってことを北条麗奈に見せつけてやるわ!」


うゎ!めんどくせぇ!素直にそう思った。それに何か、自分を1番だと勘違いしてる痛い奴だし…あれこれ言わずに関わるのは、もうやめよう。


「そうだな、存分に見せつけてくれ!あと見せつけるなら、俺じゃなく麗奈を呼んでくれ!俺は、関係無いだろう」


「何言ってんのよ。三上海斗!北条麗奈に勝つには、まずあなたを利用させてもらうわ。」


利用?ということは、麗奈を騙したり闇討ちするってことか…できない!たとえ内閣総理大臣の命だとしてもだ。返り討ちにあうどころか殺されるのが、オチだ。


「無理!無理!無理!」


俺は、首を横にふって必死に拒否した。

その様子を見て高坂が笑っている。

う…なんか怖い!


「何か勘違いしてない?三上海斗」


そう言って高坂は、俺に近づいてきた。

何企んでるんだこいつ?


「か、勘違いってどういうことだよ?」


「私は北条麗奈を倒せなんて命令しないわ。」


倒せって…そのまんまだな。


「じゃあ、俺に何してほしいんだよ」


まあ何言われたって聞く気なんかないけど!


「私の、彼氏になりなさい!命令よ!」


高坂の衝撃的な言葉に俺は、とっさに部屋を出ようとした。


ガチャガチャ!あれ?鍵が開かない…


「そこの鍵は、私が持ってるこのリモコンで開くようになってるのよ。さぁ、もう1回言うわ!三上海斗、私の彼氏になりなさい。」



ガチャガチャ…

ガチャガチャ…


開かない…


高坂の方を見ると、勝ち誇った邪悪な笑みをしている。ああ!戻りてぇ!あの頃に戻りてぇ!…そんなことを思いながら、これから、どうすれば、いいのかまったくわからない俺は、ひたすら開くはずがない鍵を開けようとした。




ガチャガチャ…


ガチャガチャ…


「無駄よ」


「はい」




俺は、このとき初めて自分にピッキングの才が無いことを悔やんだ。







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