おしゃべりは、ほどほどに
あれから麗奈を家まで送った後、すぐに家へと帰った。
「ただいまー!」
「おかえり!海斗。」
「母さん、飯は?」
「すぐ出来るから座って待ってなさい。」
「了解!」
俺は、テーブルのいつもの席に着いた。しばらくすると母さんの作った料理が、テーブルに並び、隣に舞がやってきた。
「海斗さぁ、今日、麗姉とどうだったの?」
「ゴホッ…ゴホッ!」
俺は、今日の事を思いだし、咳き込んでしまった。俺と麗奈が、2人で出かけることは、そう珍しいことじゃないはず…なんで舞の奴、いつもは、そんなこと聞かないのに今日に限って聞いてくるんだよ?
「あら?麗奈ちゃんと何かあったの?」
追い討ちをかけるように母さんが質問してくる。
「べ、別に俺と麗奈が出かけることなんて珍しくもなんとも無いだろ!」
「ふーん…そう。」
舞の奴、信じてねぇなあ…こうなったら、
「ごちそうさま!」
急いで残りの夕飯を食べて俺は、その場から逃げだすことにした。
「あら、逃げちゃって、わかりやすいわね。でも舞、どうして麗奈ちゃんと海斗に何かあったってわかったの?」
「そりゃあ、わかるわよ。だって海斗が、帰ってくる少し前に麗姉からのメールがね…」
「何て来たの?」
「それが私が『今日、海斗と出かけたんだよね?』ってメールしたら、『そうよ、出かけたんだけど、本当、海斗って全然度胸ないしアホでバカなのよね…それに少し…エッチだし…今日は本当、困ったわよ!』だって!」
「何か、あったわね!海斗と麗奈ちゃん。」
「でしょ!でしょ!本当、わかりやすいよね!」
「2人は、やっと大人の階段を上り始めたのよ。温かく見守ってあげましょうね!舞。」
「はーい」
・・・・・・・・
ふぅー…危なかった。あのままあの場所に居たら今も質問攻めだったろうな。
舞と母さんから逃げてきた俺は自分の部屋のベッドに寝転がっていると携帯が鳴った。
「♪〜♪〜♪♪〜♪♪」
着信は麗奈からだった。
「もしもし!」
「もしもし!私。」
「ああ、どうしたんだ?何か用か?」
「そうよ、半田さんのことだけど…」
そういえば、俺と麗奈がデートをしたのは、麗奈に彼氏が居ることを半田さんに見せつけ、麗奈にお見合いをさせないのが目的だったな。
「で、結局どうなったんだ?」
「………」
麗奈は黙っている…まさか…
「お前、半田さんと…」
「そう、結婚するの。やっぱり偽物の恋人だってばれたの。だから…」
「…………」
俺は言葉を失っていた。こんな時、どんなふうに声を掛ければいいのか、わからなかった。
「…………」
「……クスッ!アハハ!」
何で、こんな状況になって笑えるんだよ?まさか現実逃避?
「アハハ!嘘よ!嘘!」
「はぁ?嘘?」
「そうよ、半田さんは私に彼氏が居ることはわかったから、身を引くって言ってた」
「なんだ…よかった!っていうか何で嘘ついたんだよ?」
今の状況で嘘つく必要無いでだろ?まったく!
「別に!私が結婚するって言ったら、あんたがどんな反応するかと思ってさ」
いや、反応って話の成り行きからして喜ぶことはまずないだろ!
「どうだった?お前のお望みの反応だった?」
「まあまあだったわ!」
基準は何なんだよ!俺は心の中でツッコミをいれた。
「ところで海斗、そ、その明日からの学校だけど!キ、キスしたからって変に意識しないでいつも通りに過ごすのよ…ほら、あのキスだって仕方なかったんだし…」
さっきまでとは違い麗奈の声は少し歯切れが悪かった。
麗奈の奴、いきなり学校の話してきたけど…やっぱりキスしたこと意識してんのかな…ここは麗奈の言うとおり無理にでも意識しないようにする方が俺自身のためだな。
「ああ、わかってるよ。もしなんかの拍子に俺と麗奈が、キスしたことがばれたら、ほかの男共に何されるかわからん…それに俺だって彼女、欲しいしな!…?」
「…………」
あれ?携帯越しなのにこのひしひしと伝わってくるオーラは…麗奈が怒ってる?
「へぇー彼女ねぇ!へぇー彼女かぁ……彼女欲しいんだ?」
欲しい!けど…
「欲しくないです」
負けた!欲しいって言いたかったけど…無理だ。
「へぇーじゃあ、さっき言ってたのは?」
「出来心です。」
「ふーん…まぁいいわ。海斗、あんた明日の朝、覚えときなさい!」
ツーツーツーツー…
一方的に切られたか…また麗奈の機嫌を悪くしてしまった。憂鬱だ。
「海斗ー!お風呂入りなさーい。」
「はいよー!」
俺は憂鬱な気分のまま風呂へと向かった。