デートは、ほどほどに
あの後、これからのデートために本を見ながら、ハンバーガーショップで昼食を食べていた。
「この本を参考にするんだよな?」
「当たり前でしょ!デートなんて初めてなんだから、本でも見なきゃわかんないじゃないの!」
結局の所、やはり、麗奈が選んだ本を全面的に信用し、デートをすることになった。
まぁ、仕方ないけどな…
とりあえず定番だが、まず映画館に行くことにした。
ハンバーガーショップを出て、映画館に向かう途中、俺はあの本の1つ目の試練が頭に浮かんだ。
1.歩くときは、肩に手をかけろ!とまでは、言わないが最低、手は繋ぐ!
しょっぱなから、きついなぁ!女の子と手を繋いだことなんてほとんどない。子供の頃、自然に麗奈と数回だけ…それもお互い、ある程度、大きくなってからは、そのようなことは、していない。すなわち、タイミングが、つかめない。
大体、麗奈もあの本を見て当然、手を繋ぐ!ということも知っているわけであって、あとは、俺のタイミング次第ってわけだ…
あぁ、緊張する。だってそうだろ?いくら幼馴染みで俺への扱いが、ひどいと言ったって学校1の美人で、しかも無言でさっきからチラチラこっち見てるし…
まるで
「ねぇ、早く手を繋がないの?」と催促されてるみたいで、さらに緊張する!あぁ、どうしたらいいんだぁ!俺が、そんな考えを巡らせているとふと、麗奈が立ち止まった。
「ど、どうした」
緊張で鼓動が速くなっているのを気付かれないようにおそるおそる聞いた。
「…………」
麗奈は何も言わず手を差し出してきた。俺は一瞬、呆気にとられたが、すぐ覚悟を決めて麗奈の手を掴み、手を繋いだ。
「あ…」
自分から、手を差し出してきた麗奈だか、おそらく麗奈も緊張していたのだろう、手を繋いだ瞬間、麗奈の口から小さい声が漏れた。
とりあえず、手を繋ぐことは、成功したけど…麗奈の手は小さくてとても綺麗で繋いでいて心地よく、そのせいか、俺はドキドキしていた。
「海斗、やっぱり男ね!私より全然、手が大きい…それに何か、凄く安心するし、それに…ドキドキするわ…」
「お、俺も、緊張する。だって麗奈、…物凄く綺麗だし!」
「え…あ、ありがと!」
満面の笑みを浮かべながら、更に手を強く握ってくる麗奈に、麗奈の手が綺麗って言おうとして間違えて麗奈が綺麗だって言っちゃったんだ!とは言えるはずもなく、恥ずかしさを感じながら、映画館へと再び歩きだした。
駅前から、そう遠く離れていない大きな映画館に入った俺と麗奈は一応、公開されている映画を確認することにした。
アニメが2本、アクションが3本、ホラーが2本にラブストーリーが1本だった。
2.基本、映画は、ラブストーリーを見とけ!
あの本によれば、ラブストーリーを見とけばとりあえず、ハズレはないらしい。
「まぁ、あの本にも書いてあったし、ラブストーリーでいいよな!…ん?」
俺は重要なことに気付いてしまった。映画館に入ってもまだ、手を繋いだままだということに。俺たち以外で映画館の中で手を繋いでいるカップルはいない!それどころか周囲の人達から、あの2人バカップル?というような視線を感じる。
「そうね!あれでいいわ…ていうか、海斗あんたさっきから何、まわりをキョロキョロ見てるのよ?」
おそらく、次第に手を繋ぐのにも慣れていったのだろう。麗奈は、まだ気付いていないようだった。
「なぁ?映画館の中で手を繋ぐって結構恥ずかしくないか?」
俺に言われ、ようやく周囲からの視線に気付いたのか、頬を赤く染めながらこう答えた。
「そうね、さすがにここでは、やめといた方が、いいみたいね」
俺たちはようやく繋いでいた手を離した。
予想通り映画は、まさに王道のラブストーリーという感じだった。ベタと言えばベタだか、これはこれで結構面白かった。
映画を見終わった帰り道、そのまま映画館を出ようとしたら麗奈に手を掴まれた。
「何だよ!急に?」
「もう、忘れたの?手を繋ぐんでしょ!」
あ!そうだった。なんか麗奈の奴、やたらと手を繋ぐのに慣れてきやがったな。俺は、全然慣れてねぇのに…
「じゃあ、これからどうする?もう夕方だし、帰るか?」
まだ暗くは、なってないものの既に日は落ちかかっているし、これから、何処かに行くという選択肢は、明らかに無いと思う。
「そうね、とりあえず家の方向に向かって帰りながらブラブラするわよ」
「ブラブラって寄り道するってこと?」
「まあ、そんなところよ!」
「ふーん」
ちなみに俺と麗奈の家は、歩いて5分、走って2分のところにあり、はっきり言ってかなり近所になる。よって帰り道も最後までほぼ一緒ということになる。
しばらく歩きながら俺たちは、さっき見た映画の話をしていた。
「本当、鈍感だったわね。あの主人公!あれじゃあ、ヒロインが可哀想だわ!あれだけアプローチしてたのに。」
「そうか?俺には、そうは見えなかったぞ!結局、最後になるまでヒロインが、主人公を好きだったなんてわからなかったし、ていうかわかりづらいんだ…イタタタ!!!!」
急に繋いでいる手に力を入れてきた麗奈は、信じられない!といった表情で俺を睨んでいる。
「いてぇな…何だよ?」
「………鈍感…」
「何?聞こえねぇよ?」
「もう、いいわよ!」
麗奈は、そう言うと繋いでいた手を振りほどき、1人で先に歩きだしていった。
「ここ、寄ってくわよ!」
麗奈が、不機嫌モードのまま、入っていったのは、俺と麗奈が子供の頃、よく遊んでいた桜ヶ丘公園だった。
麗奈が、公園のベンチに座ったので俺もすぐに隣に座った。
いきなり何だよ?映画の話で何であんなにむきになる必要があるんだよ?なにか怒らせるようなこと言ってわけでもないのに…
「…………」
「…………」
やっぱり起こってるんじゃ?後々の事を考えたら謝ったほうが…
「ねぇ、あの本の書いてあった、次にやるべきこと覚えてる?」
あれ?怒ってないのか。さっきは俺の考え過ぎ?まあいい!えーとたしか次にやるべきことは…何だっけ?……
あ!たしか、
「思い出に残ることをするべし!だろ」
でも、何するの?とは思うけどな。
「そう、それでね、その思い出に残ること私が決めてもいい?」
「ああ、いいよ。」
どうぞ!どうぞ!だって俺じゃあ何も思い浮かばないからな。
「じゃあ、い、言うわね…」
「どうぞ!」
「その前に1つ質問があるわ…海斗、ファ、ファーストキ…キスってもうした?」
「え?ファ、ファーストキス?」
「そう、ファーストキス!」
「え?そりゃあ、したことないけど…」
何で、急にファーストキスの事なんて聞くんだよ?たぶん俺、今、顔真っ赤だよ!あぁ、恥ずかしい。
「ふーん、そうなの…実は私もそのファー、…ファーストキスはまだなのよ。だから…」
何でお互い、こんな報告しなくちゃいけねぇんだよ…お互い顔真っ赤じゃねぇか!
「だから何?」
「まだ、わかんないの?」
麗奈が、俺の方を向くが、顔が赤いため、睨んでるのか、見つめてるのかわからなかった。たぶん…睨んでいると思う。
「…………」
「…………」
しばらく沈黙が、続くと麗奈がはっきりとした口調で言った。
「思い出に…思い出にキスしようって言ってんの!」
えぇぇぇぇ?キス?そ、それは、まずいだろ…本当に付き合ってるわけでもないし…
「で、でも…」
「私に好きでもない人と結婚しろって言うのね!」
俺の言葉は麗奈に遮られた。確かに好きでもない人と結婚するのは、可哀想だけど、好きでもない人とキスは、いいのか?
「いい?私の事を思うんなら、キスしなさい!いいわね?」
そう言って麗奈は俺の目の前で目を閉じた。
「い、いいのか?」
俺は最終確認をした。それぐらい大切な物だと思ったからだ。
「何度も言わせないで!これ以上、女の私に恥かかす気?」
麗奈の今の一言で、とうとう俺は、覚悟を決めた。
落ち着け!落ち着け!俺は、必死に冷静になろうとするが、それは無理だった。今から、俺がキスする麗奈の唇は、とても綺麗で可愛らしくとても美しかった。俺は、ようやく麗奈の肩を掴んだ。その瞬間、麗奈の体に少し力が入った。恐らく緊張していていたのだろう。
「大丈夫?」
「だ、大丈夫よ!」
俺は、緊張している麗奈を見て、かわいい!キスしたい!と思った。そして麗奈の綺麗な唇に自分の唇を重ねた。麗奈の唇は想像どおり、とても柔らかかった。
どれくらい経ったのだろうか?ようやくキスを終えた俺たちは、まだベンチに座ったままだ。
「…………」
「…………」
「どうだった?」
麗奈が、恥ずかしそうに口を開いた。
「柔らかかった。」
俺は正直に答えた。だって、しょうがないだろう!これが、素直な感想だったんだから。
「…バカ…」
俺たちは、しばらくして公園を後にして家へと帰った。帰り道、俺と麗奈の会話が、いつもより少なかったのは言うまでもない。