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異世界の天使よりご挨拶

 ――異世界は地球、日本国にお住いの紳士淑女の皆々様、お初にお目にかかります。私、とある世界でとある神様にお仕えしている天使のものでございます。


 え? 天使って我々の想像する聖書やゲームやファンタジー的な、背中に大きな翼の生えているあの天使でいいのか? でございますか。えぇ、概ねその認識で間違いございません。それはもちろん多少の差異はございますけれども。翼の数ですとか、それに伴う振える力の質と量ですとか。そういう意味では本当にこちらの天使さんたちはいいですよねぇ。だって翼の数が皆さん多くても三対六翼でしたっけ? そのおかげかどうか知りませんが、天使としての力が質・量ともに少ないかわりに、私のように無理やりたくさんの仕事を一人に押し付けられる苦労はしなくていいですし。何よりお仕事自体、分業制ですし。


 いいですよねぇ……、分業制。いい響きですよねぇ……、分業制。憧れます、分業制。


 とはいえ少し分業し過ぎではないですか? それに天使の方たちも数があれだけいらっしゃるとおひとりおひとりお名前つけるのも覚えるのも大変でしょうに。天使さんたちの直属の上司にあたる熾天使ちゅうかんかんりしょくの方たちもこちらの神様もさぞ大変なことでしょうねぇ……。だって参考資料せいしょを拝見する限り、千×千とか万×万だとか。そうなると天使さんたちの数は少なくても100万とか10億とかでしょう? それも天使の名前といえば定番の〇〇エルさんばかり。少し考えるだけでものすごい数の〇〇エルさんたち。ただでさえ命名だけでも大変なのに、それを覚えるのも一苦労。さらにそれだけおられれば中には絶対『カエル』さんもいらっしゃるはず……。あぁ、陰湿ないじめなどがなければよろしいのですが。


 あぁ、話が少し脇道にそれてしまいましたね。いけないいけない。さて、突然こうして皆さまにお声掛け致したのにはもちろん理由が、果てしなく重く、果てしなく深い理由があるのでございます。え? どのぐらい重くて深いのかでございますか? そうでございますねぇ……。あくまで私にとっては重い重いものなのですけれども、私以外の方にはそうでもないような……。


 え~と、私自身の感覚ではだいたい目分量で皆さんの住んでおられる地球、それを照らす太陽がありますよね。あの日夜ギラギラと光り続ける憎いあん畜生の質量ぐらいには重いです。ちなみに太陽の質量はおおよそ三十四万地球ぐらいで、地球は一つ六十兆トンぐらいですね。まぁ、とんでもなく重いってことが伝わればいいんですけど、こういうのは。


 でも……軽くないか? と聞かれれば確かにそちらのお国で流通しているセール品お徳用5箱セット入り1個228円(税込)のティッシュ1枚分の重さもないかもしれません。


 あと深さのほうも同じく……深いのか浅いのか、正直私にはもう(・・)わからないのでございます。私の感覚をあえてお伝えするのなら、皆さんのお住いの地球で一番深い谷であるマリアナ海溝、水面下一万メートル以上、縦方向に十キロ以上の深さを持つマリアナ海溝をさらに一万倍したよりもまだなお深いのですが、浅いといわれてしまえばパラパラとしか降らなかった通り雨の後のアスファルトの上を揺蕩う水たまり未満の水以下かもしれませんねぇ……。


 えぇ、なんなんですかねぇ、この落差。私、果てしなく切ないのですが。


 あぁ、また話が脱線してしまいました。私の悪い癖でございます。それでは早く本題に。この胸の内に抱えきれないこの思いを……あぁ、……あぁ。どうか、どうか、聞いてくださいませ。



――あわれなあわれな天使わたくしぐちを。



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