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7



「ではおれがいちばんはまっているゲ―ムをしょうかいしましょう」


「お―!」

ノリがいい桜。家に帰って、さっそく俺の家に桜を入れた。


 母親が凄い喜んでいたよ。


「桜ちゃん! よく来たね!」


 久々の友達の来訪。しかもちょっと前までに隆の家によくお邪魔していた変なお友達ではなく、近所のさくらちゃんだ。



 この頃本当に変わったお友達が多かった。



 だってまともな友達ほとんど放課後は習い事してたし。


 変なお友達例として、永森君がいたな。

 うんこしてもトイレを流さない。



 俺、ろくな友達いないな!



 だから多分、俺が怪しい方向に進んでいたのを母親なりに危うんでいたのだろう。

 占い師の弟子やってるし、古式泳法しこまれてるし、友達は奇人しか来ないし。

 

 親としては将来を危ぶまざる負えないよね。


 きっとこのまま成長していったら、いつか隆ちゃんロリ系の犯罪おこして、近所のおばさんに生活態度とか暴露されて、同級生が持っているつい書いてしまった中二病まっさかりな文集をテレビとかでさらされてしまうわ! どうしましょう……。


 という、親の心配を吹き飛ばすお友達がやっと来たってところなんだろうね。桜だったら、急に奇声とか発っしないし、ちゃんとうんこは流すと思うし。


「マリオじゃないの」

「マリオむずかしいじゃん」


 フ―フ―しながら、ファミコンにカセットを差し込む。

 あれだな。ファミコンのカセットにフ―フ―するのは端子が湿気でやられちゃうから、よくないみたいだな。


 ゲ―ム屋でバイトしてる友達が言ってた。


 画面が、得体の知れない模様や色になったり、なんか絶望感すら漂わせるよくわからないビ―プ―という音を出すのを繰り返してから、ようやく正常な画面になった。


「ロックマン?」

「ただのロックマンじゃない。2だ」


 テレビの2チャンネルに写った映像は、後々にロックマンシリ―ズ最高傑作と謳われるロックマン2である。

 このころはビデオ映像なんてなくて、テレビで使わないチャンネルを使って、ファミコンをやっていたのだ。



 絶妙な難易度。

 思わず口ずさんでしまうBGM。

 よりアイデアに満ち溢れたボスの武器。

 もうたまらない傑作である。



 あんたもやったことあるだろ? ないの?

 メタルブレ―ドの便利さを知らないなんて、人生損してるよ。5から? 

ため撃ちでもしてろ! 


「まぁ、やってみなよ」

「……うん」


 俺は桜にコントロ―ラ―を渡すと、様子を見守る。


「なんかいっぱいいるよ」

「そのなかから、たたかいたいあいてをえらぶんだよ」


 テレビの画面では、ボスを選ぶ場面であった。桜は色々な所にカ―ソルを選んでいた。


「え―、どうしよう」


 ピコ、ピコと悩ましげにカ―ソルを動かす桜。


 ピロロン!


 テレッテレッテ―、テレッテレッテ―、テレッテテレッテ、テッテテレ―。


 選んだボスはウッドマン。


「なんで?」

「かわいいから」


 かわいい?


 あんま可愛いいとは言えないよなぁ? 例えるなら切り株を胴体にした人間ってところか……。


 冷静に例えるとキモいね。


 始まったけど、初見だからか、桜のやり方はグダグダ。


 バシュっとダメ―ジを受けながら、ごり押しで横スクロ―ルを進む桜ロックマン。


 しかしそれではうまくいかなかったらしく、敵ステ―ジの地下に行くと、巨大なトラロボット、フレンダ―にやられて終わる。


「むずかしいよ」


 しかめっつらしながら、こちらを見てくる桜。


「そうだよ。だってぼくもぜんぜんクリアできないもん」

「それならやめようよ……」

「でもふたりならクリアできるかもよ」

「さいしょからしょしんしゃをせんりょくにいれないでよ……」


 さくらの的確なつっこみ。

 小学生にしたら的確な抗議されながら、コントロ―ラ―を渡された。


「さくら、てあせすごいな」

「もう! よけいなこといわないで」


 渡されたコントロ―ラ―、手汗でべしょべしょ。

 思わぬさくらさんのデリケ―トな部分に触ってしまった俺。

 といっても俺もうまいわけではないので、フレンダ―を倒したはいいが、力尽きて終わった。


「……」

「……」


 桜ちゃん。無言の抗議。


「しょうがないじゃん」

「……」


 それでも抗議は続く。

 場を明るくさせるために、しょうがなしに俺はある考えが閃いた。


「あ、おれのちんちんみる?」

「やめて!」


 間髪入れず拒否する桜ちゃん。


 面白いんだぜ。チンチン芸。

 チンチン芸のパイオニア。山下はミカンの袋とか使った芸で大爆笑を取っていた。

 山下なみのクオリティは無理でも、この空気を壊し、それに近いものを出来ると思ってだよ。


 でもさくらさんはうんこネタには笑ってくれたが、ちんちんには笑ってくれなかった。


「おやつ、持ってきたわよ」


 そこにタイミング悪く、永森君の時など普段は持ってこねぇ、おやつをお盆に持って母親登場。

 桜に詰め寄りながら、ズボンに手をかける息子を見て。

 何事もなかったようにおぼんを置いて。


「い、いっぱい食べてね」


 そそくさと部屋の扉を閉めて帰る母親。


「……」

「……」


 桜は何かを察した。


 俺は正直、全然気がついてなかったが。


「よし、ロックマンやるぞ!」

「う、うん!」


 そこで脅威のチ―ムワ―クを発揮!


 二人でロックマンを交互にプレイ。ウッドマンステ―ジクリアし、終了!


小学校低学年の男女がそんなことになるわけないのにねぇ。



 俺が聞いた最速の体験談は小5で虫取りに行った帰りの時に雨宿りで……というお話だけだから。

 そいつは神としてあがめられたが、やっかみをうけました。


 プ―ルの時に。


『うわ! なにこれ! すげぇ! 俺たちのにはおてぃてぃてぃんがついているのに、お前のには……』




『男性器がついてるよ!!!』




 みたいなからかいは当然ありました。



 とにかくその日はゲ―ムをやりあってお終い。



「こんにちは。おばさん」

「いらっしゃい。さくらちゃん」


 翌日も桜と一緒に帰り、遊ぶ約束をしたので、うちに桜がきたのを嬉しそうに母親が迎えた。


 なんかコージーコーナーのケ―キとかスタンばってるし。


 アホな友達の永森が来たときみたいに、パンの耳とかだせよ。扱いが違うぞ。

 あげパンみたいにカリカリに揚げてあって砂糖まぶしたヤツ。意外とうまいけど。


「いつも隆と遊んでくれてありがとね」

「そんなことないですよ。わたしがあそんでもらってるんです」


 ……桜は保護者評価は常に高い女だったよ。


 ほわほわしているだけではなく、腹黒いのかもしれない。


「おかあさん。もういいから。ほら、さくら。いくよ」

「うん」


 また二階へとどたどたと上がっていく。

 さくらも慣れているように二階へと行く。


「またロックマンやる?」


 昨日はウッドマンステ―ジクリア出来たし、また他のステ―ジクリア出来るかもしれないかと思ったから。


「きょうはわたしがもってきたあそびをやってみない?」

「いいよ。なに?」

「これ」


 そう言うと桜は背負っていた膨らんだリュックサックから、馬鹿でかい何かを取り出した。


「じゃ―ん!」

「うおッ! すげぇ、かってもらったの」


 そこには子供のこづかいではとても買えそうもない、おもちゃが!


「シルバニアファミリ―!?」

「いいでしょ―!」


 いつもはおとなしめのさくらだが自信満々。それもそのはず。

 そこにはバブルのパワ―でさらにパワ―アップしている(値段が)ブルジョアジ―なお友達でしか手に入らないものがそこにあった。


 説明しよう!


 わかんないだろ? シルバニアファミリ―?

 

 あれだろ? セックスとドラックと暴力の町で育ったんだろ? その町で作られた料理は全部、娼婦風って枕詞がつくんだろ?


 説明するから、暴力はやめろ。暴力、得意だなそんな町で育ったから。


 シルバニアファミリ―とはイタリアのシチリア半島に存在する組織犯罪グ、って痛い痛い。


 ……簡単に言うとド―ルハウスってやつだよ。

 可愛らしい擬人化した動物のお人形と、そのお人形達が暮らすお家がセットで売られているやつだ。


 これがまためちゃくちゃ高いのです。俺らのおもちゃで一緒のものとなると……そうだな。ネオジオくらいじゃね? ソフト一本何万ってするゲ―ム機。



 でもさすがバブルの末期。普通に売られているんだよね。



 しかも桜がもってきたのはシルバニアファミリ―の商品の中でも一線級の『赤い屋根のお家』だった。


 大きい家に可愛らしいお人形と家具がついたシルバニアファミリ―商品のエ―スなのです。


「はぁ―、さくらのおうちはおかねもちなんだなぁ」

「すごいでしょう」


 もう鼻が高々な桜。凄く自慢げである。


「このひとつひとつのちっちゃいものが、ちゃんとつくりあげられているの」


 そう言って見せてきたのは四角い白い固まり。石鹸らしい。


「すごいでしょう? それでこれ」


 また見せてきたのはその石鹸を入れる箱。そんなものまで作り上げている。


「こうやっていろんなものにこっているの! それでね! きわめつけはこれ」


 うさぎの人形をグイっと、俺の鼻先につきつけ、ダイナミックに動かしてきた。

 その人形はちゃんと着せ替えが出来るであろうワンピースが着せられており、間接の駆動がぬるぬる動いていた。


「すごいなぁ」

「すごいでしょう?」


 桜は自慢できる友達がいなかったのかと思うくらい、ここぞとばかりにシルバニアファミリ―の自慢をしてきた。


 実際シルバニアファミリ―、全てにおいて、クオリティが高い。


 なんか小さい小物に力入っているんだよなぁ。ベットとかも家についているし。贅沢って感じ。


「ぬぅぅ。やるな。さくら」

「でしょ。でしょ」


 でもここである疑問が浮かんだ。


「でもこれどうやってあそぶの?」


「え?」


 それを聞いて、笑顔のまま桜がストップモ―ション。


「どうやって?」

「うん」


 シルバニアファミリ―での遊びかたなどない。

 見て楽しむものであって、なにかをして楽しむわけではない。


「……そうだね。どうやってあそぼうか」


 シルバニアファミリ―での遊び方では、小学生低学年の溢れる体力を御し得ない。

 桜はちょっと残念そうに認めた。

 同じ女の子ならともかく、相方はうんことちんちんをこよなく愛す、短パン小僧である。とても満足させれるとは思えない。


 それどころか、幼いころの好奇心は。


 うさぎの裸ど、どうなっているのかなぁ?(はぁはぁ)


 といった感じにシルバニアファミリ―の服を脱がし、篠山紀信ばりにセミヌ―ドを見かねない。



 けれども、俺も変わった子供だったから。


「これでにんぎょうあそびしようよ」

「え?」

「たのしそうじゃん」


 男なのになんで人形遊びなんかしなきゃなんね―んだよ。だせ―。とか言わなかった。


 俺らの学校だけかな? お人形遊びって、ちっちゃい子供だけが遊んでいるっていうイメ―ジがあってさ。


 子供ながらに、男らしい趣味ではなかった。


「……おとこのこなのに、つまんなくない?」

「おれだって、プラモつくってにんぎょうあそびするよ」


 不安げな桜に俺は何がおかしいのとばかりに、不思議そうに呟いた。

 ゾロアットを作って、主役にした記憶がある。あとリックディアスとか、かっこいいじゃん。ずんぐりむっくりとかドムとか言うな。


 当時、地方テレビでzの再放送やってたんだよ。


 z難しいから、あんま理解できなかったけど。でも見てた。だから十万石饅頭とか知ってるぜ!



「うん!」



 不安げな顔から一変、嬉しそうに笑う桜。

 人形遊びって恥ずかしくて大抵一人で遊ぶんだよな。でも二人で人形遊びしたときの面白さは異常なのである。


「これおとうさん?」

「ううん。これおにいさん」

「よ―し、おれ、おとこやくやろうかな」

「じゃあ、あたしおんなやく!」


「……ただいまー」

「ねぇ。チューして」

「さくら。CMで、はやっているけど、そのてんかいはやすぎない?」

 

 今は無き化粧品。資生堂ルシェリ。




 おたがい人形を持ち、役になりきるのは楽しかったよ。シルバニアファミリ―でほのぼのとした家庭生活を満喫しました。


 そのころ流行ったドラマ。『ずっとあなたが好きだった』みたいな展開はないです。

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