Viewpoint 幸成
美紗季が小学校に行っている間、俺は保険会社に勤めていて、営業という仕事をしている。朝から晩まで。
美紗季が生まれてくる前はまでは、契約はノルマ以下しか取れていなかった。でも最近はノルマ達成とまではいかないが、達成されそうなところまで来ている。
「伊村君、ちょっと」
「はい、部長」
部長が居る席に向かった。
「お待たせしました」
「最近、契約が順調に取れているそうだね」
「いやいや、まだノルマには達していませんので、正直まだ、頑張らないといけないので」
「まぁ、そうだな。でも、私がこんなことを言うのもあれだが、契約も大事だが娘さんも大事にしてやれよ」
「わかりました」
と言って俺は、席に戻った。
机には美紗季と美鶴、そして俺が笑顔で写った家族写真がある。
この写真……いや、この家族の笑顔を守るのが俺の役目。
でも、ここ最近一緒にいる時間が少ない。
夜、家に帰ると、美紗季が走ってきた。
「おかえりー」
「ただいまー」
美紗季は相変わらず元気だ。
俺はバックを置き、夕食が並ぶテーブルに座ると、
「パパー。日曜日、遊園地にいきたーい」
今日は木曜日。日曜日は……、いまのところ空いている。
「そうだな。遊園地に行こうか!」
「やったー!」
大いに喜んだ。
この様子を見ていた美鶴は、
「よかったねー、美紗季。……そういえば、今日学校で何をしてきたか、パパに教えてあげたら?」
「うん!」
美紗季が赤いランドセルを俺の前に持ってくると一枚のプリントを出してきた。
「なんだいこれは?」
「きょうね、かかりを決めたの~」
係り決めか……、小学校では定番行事……とでも言える。
「美紗季は、なんの係りになったの?」
「あたしはね、しょくぶつがかり になったのー」
しょくぶつがかり……?
「なにをするかかりなんだ?」
「それがよくわからないの……」
「そうか……、プリント……見せてくれるか?」
「うん」
俺はプリントを見せてもらった。
そこに書いてあったのは、
“教室に飾る動植物の管理”
だった。
俺は読めるからいいが、美紗季には読めないだろ。まだ1年生だから。
なにを考えているんだ先生は……。