誕生して1か月
美紗季が誕生して1か月が経過した6月3日。
今日は、1ヵ月検診の日だ。1ヵ月検診というのは、誕生から1ヵ月後に受ける赤ちゃんの検診のこと。
身長や体重など発育・発達は順調か、先天性の病気がないかなどをチェックする。この日が赤ちゃんとの初めてのおでかけという美鶴は少し嬉しそうだ。
検診結果は、もちろん異常なし。
早くも生命の砂時計効果が発揮されているかもしれない。
その日の帰り。
美鶴と幸成は、ベビーカーを買いにホームセンターに寄った。
インターネットでも見ていたが、実際自分の目で見たり触ったりしたほうが良い時もある。1時間ほどかけて見た結果、“地面からは遠く、ママとは近い。親子の絆と乗り心地をとことん追求した、55cmの安心ハイシート“と書かれたベビーカーを買った。
その2日後。お宮参りをするために出かけた。
お宮参りはもともと、赤ちゃんが氏神様の氏子になったことを認めてもらう意味の儀式。通常、男の子は生後30日目、女の子は32日目に行なうものとされているが、ママと赤ちゃんの健康状態や天候を考慮した結果今日になった。
美紗季にとってもお祝いの日だから、とっておきのお洋服でおめかしをする。この時の美鶴と幸成は、
「かわいいなぁ~」
しか言わない。いや、それしか、言えない。
これぞ、親ばかと言えるのか? 幸成は悪い気はしていない。
美紗季が誕生して2か月が経過した。そろそろ友人のみんなに誕生のお知らせカードを作ろうと幸成は考えていた。
赤ちゃんが生まれたら、誕生のお知らせカードを作って親戚や友だちに送りたいもの。最近はデジカメで撮った写真をパソコンに取り込み、インターネットのホームページ上からデザインを選ぶだけで簡単にポストカードや年賀状も作れるそうだ。経済的だし、忙しい美鶴には大助かりのようだ。
思った以上に難しいが、案外楽しいものだ。毎晩夜泣きして疲れるが、美紗季が笑っているときの写真を見ていると疲れが吹き飛ぶ。
プリンターとデジカメを駆使して何とか、世界でひとつのオリジナルカードが完成した。
予定だと30枚前後……、これは少ないのかな?
美紗季が誕生して3か月……100日が経過した。今日はお食い初めと呼ばれる儀式を行う。これは、赤ちゃんが一生食べ物に困らないようにと願うもの。お膳の上に赤飯、鯛の焼き物、汁物などを並べ、赤ちゃんを座らせ食べさせるマネをする。実際には、まだ食べられないが、美鶴の得意料理で祝ってあげたい……。そんなことを思い、作ったのは、甘口のカレーライスとブリの照焼きだ。
カレーは、もうちょい辛いのにしてほしいが、美鶴は辛いのが大の苦手なのだ。幸成たちがご飯を食べていると
「あっ、あっ……」
美紗季が手を伸ばして食べたそうにしている。
「今度離乳食を買ってくるからちょっと待っててね~」
「あっ、あっ……」
反応は同じに見えるが、喜んでいるように感じ取れる。
おむつを替えたり、夜泣きに悩まされたり、離乳食を食べさせたりといろいろな苦労が重なり、気づいたら幸成たちは、寝不足が当たり前の生活になった……。