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3 Memories Defense Force 2


「Memories Defense Force?」


 聞き慣れない言葉に優希は首を傾げて詳細を問う。

 ああ、と頷いて紅夜はスーツの袖に隠れていた腕を見せ、つけていたチェーンに通されている四角い物体を腕から外してテーブルに置いた。

 小さくかたい音を発して置かれたそれはサイコロ程小さく、水晶のように透明度が高く室内の照明が反射して輝いている。


「簡単に言うと、思い出を守る集団のことだ。そしてこの物体はメモリーズキューブと呼ばれている」


「思い出を守るって記録したりするのですか?」


 優希の問いに紅夜は首を横に振り、チェーンを再び腕に通す。


「残されている記録によれば、遠い昔にたくさんの人の思い出を忘れないという気持ちと、忘れたいという気持ちが集まりそれぞれ結晶化したとされている。忘れないという気持ちは、今見せたメモリーズキューブに。逆に忘れたいという気持ちは形状は似ているが色の違うロックキューブとなった」


「メモリーズキューブとロックキューブ……」


「二つの力は人々の思い出を守る力と思い出すことのないよう閉じ込める力となってこの世に複数存在している。それぞれの力に賛同した人々が対立組織を作り、長年争っているんだ」


「夢みたいな話ですね……」


「そう思うのが普通だろう。メモリーズキューブとロックキューブの攻防はキューブが作り出す仮想世界で行われるから、どちらのキューブも持たない人にとっては知ることのない世界だ」


「春陽達の守る側は辛いことも悲しいことも全ての記憶がその人の一部だと主張して、閉じ込める側は忘れることも幸せの一つだと主張して争っているの」


 紅夜の言葉に続けて春陽が眉を下げた表情で言う。


「俺達は夜間に活動しながら新たな仲間も探してるんだ。人の数だけ思い出はあるし、賛同する人も反対する人もいるからな」


「変わった思い出を持っていたり不思議な力を持っていたりする人がキューブの力と共鳴しやすいんです。だから君を呼んだみたいですよ」


 続く薫と奏太の言葉まで耳に入れるも優希は頭が混乱した。


(漫画とかテレビドラマの話みたい……。――でも)


 自分の不思議な力もまた他者からすればあり得ない話なのだと、深い呼吸をして自分を落ち着かせる。


「私でも力になれるんですか……?」


 四人の顔を順番に見て答えを出す。

 自分の思い出が知らないうちに思い出せなくなるのは嫌だ。

 少しでも力になれるのならと決意する。

 優希の答えを聞いた四人が、心なしか体の力が抜けたように見えた。


「もちろん。強い思いがあればキューブはきっと力を貸してくれる」


「よろしくな!」


「今日から仲間だねー!」


「足は引っ張らないで下さいね」


「――オレ達の考えに賛同してくれてありがとう。篠崎さんにもメモリーズキューブを持っていてほしい」


 紅夜はチェーンに通されていないキューブを一つ、胸ポケットから取り出して優希に差し出す。

 先程優希に見せた物とは違って色は白く、受け取った彼女はまじまじと見つめた。


「今渡したメモリーズキューブはまだ力が眠っている状態のものなんだ。人の思いと共鳴した時、メモリーズキューブは色を変えて武器にもなる」


「武器に……」


「オレ達は基本的に一人一つを持っていて、武器の形や能力はみんな違う。君はまず見習い、という形になるんだ」


「心配しなくていいぞ。俺達が色々教えるからな!」


 快活に笑う薫に優希も口元がゆるむ。

 メモリーズキューブをテーブルに置き、ソファから立ち上がって深く頭を下げた。


「よろしくお願いします……!」




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