第2話~出会い~
「世界を変えるなら、まず身近なものから」
そう考えた俺たちは、亡くなった人たちを供養することから始めた。
散らばっている亡骸の一つ一つに悲しみや苦しみの表情が表れている。
「小さな葬式だな……」
たくさんの人が亡くなった悲しみとVIPへの怒りが混ざった感情が、涙としてあふれた。
「これで少しは安らかに眠れるだろう」
桐生の一言には優しさの中に底知れぬ怒りがあるのを感じた。
「この小さな葬式は、世界を変えるための大きな一歩だ」
――3月26日――
日本に帰ってきてから3日が経った。
「お前は周りで起こってる事は全て知っているのか?」
「いいや、知らない」
桐生が言い放った予想外の一言に俺は驚いた――――
どうやら彼もまだ周りの事は把握していないようだ。
このままではラチがあかないと思った俺たち二人は、周辺を調べることにした。
交番に着き、地図を見せてもらおうとしたが人の気配がない。
そんな時だった――
「キャー」
女の子の悲鳴とともに銃声が辺りに響きわたった。
「パン――――」
ドサッ……
女の子はこっちに向かって走っていたらしく、撃たれた足が限界をむかえて交番の前に倒れこんだ。
「大丈夫かッ!」
桐生は交番を飛び出し女の子をかばいながら言った。
「黒川ッ!何か止血に使えそうなものを探してくれ」
状況がつかめず混乱していたが、その言葉で我を取り戻し、ポケットにあったハンカチを渡した。
「痛いだろうが銃弾は抜けている、少しの辛抱だ」
そう言って桐生は持っていた水筒の水を女の子の傷口にかけた。
「いたぁッ――――」
女の子は激痛のあまり気絶してしまった。
すぐにハンカチで傷口を覆った。
桐生の動きには一切の無駄がなく、とても手際がよかった。
その関心はつかの間……女の子を撃ったらしきヤツが来た。
「なに邪魔しちゃってくれてんのかなぁ」
笑いながら言うヤツの目は、俺たち三人を人間と見ていないような目だった
「あのさー、そこに倒れてる“もの”こっちに渡してくんない?大事なもの盗まれたんだよ」
確かに女の子の右手には気絶しているのにも関わらず何かを大事そうに持っている。
この男の言うことにも一理あるが、この子を“もの”扱いする時点でどちらが日本という組織にとらわれているかなんて決まっている……
「俺、VIPに雇われた警察なんだよ。ねぇ……優しくしてるうちに返そうよ」
やはりそうだった。
VIPという言葉を聞いた俺と桐生は怒りをわかせていた。
そんな中、気にかかった事が一つ……その言葉は人間が発するにはあまりにも冷たい声だった。
「俺の主人らVIP達が決めたルールに、13歳以下および、一万位以下の価値の人間は、金属を持つことは許されないと記されている」
この子は確かに金属を持っている。
どうやら写真いれのようだ。
「それのランクは1052位。その年ではすごいが、主人の許可は得ているんだ。それは殺させてもらうよ」
男が銃口を向け、引き金に指をかける……その時だった――――
~第三話へ続く~