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「お姉様はブスなんですから、前髪を伸ばして眼鏡をかけていればよくて?」と言われ続けた地味令嬢.......王子に見出されて、大変身!?〜抑圧されていた令嬢、まさかの大変身で逆ハーレムになりました!〜

作者: しろ
掲載日:2026/08/12

「お姉様はブスなんですから、前髪を伸ばし、眼鏡をかけて、大人しくしていてくださいませ!!!」


 物心つく前から、妹のセレナにそう言われ続けてきた。わたしは……その、逆らう勇気もなくて、言われるままに前髪を伸ばし、分厚い眼鏡をかけて生活してきた。


「フロレンス様はまた同じ髪型ですのね.......陰気だこと」


「話しかけるのもはばかられますわ」


 学園でも、わたしは常に嘲笑の対象だった。妹のセレナは、社交界の花として持て囃される一方で、わたしは日陰者として過ごすのが当たり前になっていたのである。


「お姉様........今日の刺繍の授業、また失敗なさったんですって?」


「そ、それは、その……」


「本当に、お姉様は何をやらせても駄目ですのね。せめて目立たないようにだけはしてくださいませ」


 くすくすと笑う妹の取り巻きたちの声に、わたしはただ俯くことしかできなかった。反論する言葉も、勇気も......とうに擦り減ってしまっている。


(今日も、誰とも目を合わせずに帰ろう……)


 そう決意を固めながら、俯きがちに廊下を歩いていたその時、誰かとぶつかってしまった。


「あ……申し訳ございません!!!」


 慌てて謝ると、相手は静かにこちらを見下ろしていた。今まさに私を見ている彼はそう.........


 ーーーこの国の第二王子、クロヴィス殿下だ。


 ---


「フロレンス嬢、だったか.......なぜ、そんなに前髪で顔を隠しているんだ......?」


「そ、それは、その……妹が、わたしはブスだから隠せと......」


「――今そいつはどこにいる」


 低い声で問い返され、わたしは思わず身を竦めた。


「あ、あの......殿下、お気になさらないでくださいませ。わたしは、その、慣れておりますので.......それに、事実ですしね」


 そう言いながらハハっと笑う私をみて王子は静かに一言、こう溢した。


「慣れる必要のあることではないだろう」


「で、ですが……」


「妹の言葉を鵜呑みにする前に、一度くらい鏡を見たことは?」


 思いがけない問いかけに、わたしは言葉に詰まった。そういえば、まともに自分の顔を見た記憶すら、随分とない気がする。


 クロヴィス殿下はそう言うと、躊躇いなくわたしの前髪にそっと触れた。


「――少し、失礼する」


 そう言って、彼はわたしの前髪を横に分けた。次の瞬間、周囲にいた生徒たちから、小さなどよめきが起こった。


「な……嘘だろう......!?」


「フロレンス様が、あんなに......?」


 戸惑うわたしの手から眼鏡を外し、クロヴィス殿下は静かに微笑んだ。


「――思った通りだ。そなたの美貌は隠しておくには、あまりにもったいない」


「そ、そんな、殿下......お戯れを……」


「戯れで言っているわけではない。今すぐにでも、証明して見せようか?」


 真剣な眼差しに、わたしは頬が熱くなるのを感じた。


 ---


 その日を境に、わたしの学園生活は一変した。


「フロレンス様、お加減はいかがですか?」


 生徒会長のオーウェン様が、休み時間のたびに声をかけてくるようになった。


「あの、ほんとうに大丈夫ですので......お気遣い、ありがとうございます」


 まだ慣れない周囲の視線に戸惑いながらも、わたしはたどたどしく答える。


「以前から、フロレンス様の授業中のノートの取り方に感心していたのです。丁寧で、要点が的確で.....ずっと機会を窺っておりました」


「そ、そんな、ずっと見ていらしたのですか……?」


 思いがけない告白に、わたしは頬を赤らめるしかなかった。


「僕はフロレンス嬢の剣の腕前に興味がある。今度、稽古をつけてくれないか」


 剣術部のエース、ジャスパー様までもが声をかけてくるようになった。


「け、剣の腕前、ですか? わたし、そんなに得意というわけでは……」


「謙遜するな。以前、護身術の授業でお前が見せた足運び、あれは並の令嬢にできる動きじゃない」


「あ、あれは、その、たまたまで……」


(な、なぜ急にこんなに……?)


 戸惑うわたしをよそに、周囲の変化は止まらなかった。以前は視界にも入らなかったはずの生徒たちが、次々と声をかけてくる。まるで、これまで見えていなかった存在が、急に浮かび上がったかのような感覚だった。


 ---


「――お姉様、一体何のつもりですの.....!?」


 血相を変えて詰め寄ってきたのは、妹のセレナだった。


 咄嗟に、いつもの癖でうつむきそうになる。


 だが、目の前にはもう、隠す前髪も分厚い眼鏡もない。誤魔化す術を失った代わりに、不思議と喉の奥から、これまで抑え込んでいた言葉が押し出されてくるのを感じた。


「――どこかおかしくて? 何のつもりも何も、殿下が勝手にわたくしの魅力を見出しただけですわ」


 口にしてから、自分でも驚いた。まるで、前髪と眼鏡の下にずっと押し込めていた本来の自分が、ようやく顔を出したかのようだった。


(あ、あら? さっきまで気弱だったのに、なんだか言葉がすらすら出てくるわ)


 自分でも驚くほど、堂々とした口調が出てくる。まるで、前髪と眼鏡の下に押し込めていた本来の自分が、ようやく顔を出したかのようだった。


「殿下に何を吹き込みましたの!? わたくしより目立つなんて、許しませんわよ!」


「もう一度言わせていただきますが、目立つも何も、殿下が勝手にわたくしの魅力を見出しただけですわよ? わたくしが仕組んだことなど、何一つございませんわ」


「そ、そんなはずございませんわ! お姉様がブスなのは、ずっと変わらない事実のはずですもの!」


「あら、それはあなたの願望であって、事実ではございませんでしたのね。今このように、周囲の反応が、何よりの証拠ですわ」


 淡々と、しかしはっきりと言い返すわたくしに、セレナは明らかに動揺していた。


「そ、そんな……!? い、今まで大人しかったくせに……!!!」


「大人しくしていたのではなく、あなたに大人しくさせられていただけですわ。ようやく、その必要がなくなっただけのことですの」


「わ、わたくしは、ただ妹として、その、忠告を……!」


「忠告と抑圧は違いますわよ、セレナ.......長年の恨み言を並べる前に、まずご自分の言動を省みてはいかが?」


 はっきりと告げると、セレナは顔を真っ赤にして立ち尽くしていた。周囲の生徒たちからも、これまでとは違う視線がセレナに向けられ始めている。


 ---


「フロレンス、随分と楽しそうな会話だったな」


 騒動を聞きつけたクロヴィス殿下が、静かに歩み寄ってきた。


「あら殿下、お聞きになっていましたの?」


「ああ。それより――」


 殿下はオーウェンとジャスパーに、鋭い視線を向けた。


「二人とも、彼女に近づきすぎではないか?」


「別に......普通の距離だと思うが?」


「.......僕もそう思う」


 きっぱりと返す二人に、クロヴィス殿下は珍しく苛立った様子を見せた。


「フロレンスの魅力に最初に気づいたのは私だ。横入りは感心しないな」


「それを言うなら、僕は前々から彼女のノートに注目していた。それこそ殿下より早いくらいだ」


「僕も剣術の才能には気づいていたぞ!」


 三人が張り合う様子に、わたくしは思わず苦笑した。


「あら殿下.......随分と独占欲がお強くていらっしゃいますのね?」


 からかうように指摘すると、クロヴィス殿下は少し照れたように視線を逸らした。


「――悪いか」


「いいえ、まんざらでもございませんわ」


 くすりと笑うわたくしに、殿下は驚いたように目を見開いた後、ふっと表情を緩めた。断罪まがいの抑圧から始まった日々は、思いがけず、賑やかで眩しい毎日へと姿を変えていくようだった。


「――さて、これから一体どうなることかしら」


 不敵な笑みを浮かべるわたくしを、その場にいた誰もが、それぞれの想いを胸に見つめていた。


 セレナはといえば、遠くでこちらを睨みつけながら、悔しそうに拳を握りしめている。長年抑え込んできた姉が、まさかこんな形で日の目を見るとは、想像もしていなかったのだろう。


「フロレンス様、明日もぜひお話を.......」


「僕も.......稽古の約束、忘れないでくれ」


「二人とも、私が先に約束を取り付けている!」


 三人がそれぞれ主張する光景に、わたくしはとうとう声を立てて笑ってしまった。抑圧されていたはずの日々が、こんなにも賑やかな未来に繋がるとは、少し前の自分には想像もつかなかったことである。


(お姉様なんて呼ばれる筋合い、もうございませんけれど)


 心の中で呟きながら、わたくしは晴れやかな気持ちで教室へと足を向けた。長かった日陰の日々は、ようやく終わりを告げようとしていた。

 最後まで読んでいただき、ありがとうございます!


 もし少しでもすっきりしたり、きゅんとしたりしていただけましたら、評価ポイントとブックマークをいただけると、次の話を書く一番の励みになります!


「変身後のギャップ最高」「妹の顔真っ赤なのスカッとする」など、感想コメントもお待ちしております!


 妹セレナの本格的な断罪や、三人の求愛がどう転がっていくのか、まだまだ書きたいことがございます。よろしければ作者フォローもしていただけると幸いです!


 それでは、また次のお話でお会いしましょう!

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