5日目、6日目②
月の民の2人の侵入、サラは参加していない。
必要なら人数を増やすが誰か1人でも国を作れればよい。だからみんないつでも捨て石になる覚悟がある。そういう考えだ。
サラはおそらく本家筋のポーラを最優先にする。
だから別行動をさせた。
魔術師の生まれやすい月の民とはいえ、王族に3人も優秀な魔術師が生まれる等奇跡に等しい。
魔術がそもそも奇跡だという事を抜かして考えればもちろん奇跡ではない。
3人必要だから同じ時代に生まれた。
奇跡ではない。奇跡ではないがチャンスを逃したくはない。
高級なホテルとはいえ魔術師が戦うには狭すぎる。
だから無限の広さを持つ結界に進む。
400人と2人が向かい合う。
同門同士の戦い。
殺し合う気は無い。
明日の会談さえ失敗させればそれでいい。
けれど犠牲者が出ないかはわからない。
人数差があるとはいえ魔術師の戦いは簡単に差がつく。
だからウォルター氏は先頭に立つ。互角に戦えるのは自分1人。まともに戦えるのは10人。その10人も10人がかりで1人に勝てない。魔術師の戦いは互角になった途端戦闘は加速度的にながびく。
だからウォルター氏は10人を中心に援護に徹する策を取る。戦力を温存したまま1人倒せば勝つ。
「先生、いつから気づいてたんですか?」
ポーラは今回の襲撃の事、ひいては月の民の国取りの事を合わせて聞いた。
ウォルター氏は苦しげに考える。目をかけた大切な弟子が自分を狙う。弟子は使命の為に戦っており、その使命に対してけして反対ではない。
けれど講和が長引き犠牲者が増えることも本意ではない。また弟子にそんな道を取ってほしくなかった。
だからウォルター氏は片方にだけ答えた。
「君たちが死んだ可能性は低いと思っていた。敵に君たちを殺せるものはいない。だから私はこの国内の誰が来てもまけない布陣を敷いた」
ウォルター氏は自分は最強ではないとよく言っている。けれど自分は魔術師らしく戦えるといっていた。
意味はわかる者にはわかる。
けれどウォルター氏はサラ以外にはと呟くようにつけ足した。




