帝国の内乱
魔法使いなんて簡単に実力差がついてしまう。
全魔法使いの99%が所属する魔術師協会は、過去なんども協会に所属する必要なんてないと言わんばかりに奔放に振る舞う魔法使いに煮え湯を飲まされてきた。
「まぁ99%と言っても、魔法使いってだけで勝手に会員扱いしちゃってただけなんですけどね。」
私の嘆きに友人はそう答える。
魔法使いとは主に我々魔術師と、憎き錬金術師、怨めしき呪術師、おぞましき精霊術師がおり、皆魔術師協会の会員だ。
魔術師の管理下に置かねば錬金術師や呪術師は何をするかわからない、精霊術師は正直怖い。
帝国の内乱は3代目の皇帝が双子だった事に端を発する。双子の皇帝の共同統治は数年のうちに不和を生んだ。そして皇帝の叔父に当たり他国からの防衛を名目に本国から多大な支援を受け軍事力を手に入れた大公、帝国の拡大期にいち早く恭順を示した事で帝国併合後も王を名乗る事を許された7人のうちの1人で最も力をもった大王、2人の皇帝を影で操ると噂される宰相、そして世界的宗教である女神教とそこから分裂し互いに争い合う女神正教。
それぞれの思惑により内乱が起こっている。
内乱では人には人の魔法使いには魔法使いの戦いがある。
魔法使いが普通の人と戦う訳には行かない。
1人の魔法使いは10万の人の兵に勝つ。
だから魔術師協会は魔法使いの戦争への参加を禁止しているのだ。
互いに牽制し合う均衡は、女神正教を味方につけた大公の反乱により口火が切られた。
・・・という事になっている。
私のような魔術師協会の下っ端には真実を知る由もない。魔術師協会は女神正教と反目し合う女神教が中枢に深く入り込んでいるのだ。
そもそも戦争では防衛側だけ魔法使いが自衛の範囲で参加できる関係から守りが有利である。
どこまでが自衛かは明確な基準は存在しない。
その中で他国を打ち倒し大帝国が誕生したのは魔術師協会が裏で糸を引いていたからというのは、くだらぬ陰謀論とは誰も考えない。どの程度関与したかが謎であるに過ぎない。ただし魔術師協会が帝国に肩入れした理由を知るものは少ない。
帝国には現役では世界最強の魔術師、ウォルター氏がいる。
1人の魔法使いは10万の兵に勝つ。
嘘ではない。1人の魔法使いは魔法使いでない全ての人に勝てるのだから。
人は人と戦い、魔法使いは魔法使いと戦う。
戦争とは守る側の魔術師をどう戦いに参加させないかにかかっている。
10日の間に7000万人の犠牲者を出した帝国の内乱はわずか200人の魔法使いの陽動作戦から始まったのだ。




