表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

第0章 山田太一という男

いつもの居酒屋で芸人、山田太一は、酒を飲みながら自分よりも売れている後輩にお笑いを語っていた。

後輩たちも内心、呆れながら聞いたふりをしていた。


「んで~明日、爆バトの収録があってよ~」


喋りは達者なんだが、オチもない話をダラダラと話す。


「マジすか?

自分らも明日、爆バトっすよ」


この中で唯一、東京に染まっていない【オンスタイル】の井田が言った。

すると、太一の顔色が変わり、井田の目を見て言う。


「頑張れよ」

「何すか、人事みたいに…

先輩も明日でるんすよ」


関西訛りの言葉で話す井田。

太一は、笑いながら「んな~オレはもう慣れてるよ」と酒の入ったグラスを持ちながら言う。


芸歴6年、3年前まではコンビ組んでいたが…解散してしまった。


爆バト 7戦5勝 最高505pt

WMG(若手漫才グランプリ)準決勝進出


輝かしい成績を誇っていた。



太一ピンになってからも一生懸命頑張り

爆バト 3戦3勝 最高457pt

PNK(ピン芸人NO.1決定戦)準決勝進出


するなど実力は認められているが、その平凡なルックスからなのか、決して売れることはなかった。


そして、明日一月三十日にチャンピオン大会出場(一期に4勝)をかけて挑むのだ。


次の日ー


雪がふり、息が空気中き白く広がる。


楽屋では、審査される緊張感からかネタ合わせを必死にやる出場者。

井田と相方の石上も端っこでしていた。


「……コンビっていいなぁ…」


楽屋のイスにもたれ掛かり、天井を見上げて言う。

今日の出場者は太一を除いて、全てコンビ。

昔、コンビを組んでいた太一だから相方の心強さは充分わかっている。


「失礼しま~す

一番目と二番目の方、そろそろ準備をお願いしま~す」


今どきの若者言葉のようにダラダラした言葉で言う新人スタッフ。


「わかってましたよっと」


太一は、ネクタイを締め直し、イスから立ち上がる。

そして、舞台に向って歩き始めた。


「すいませ~ん

トップバッター僕たちなんすけど……」

「……そうだっけ……」


新人スタッフは、膝がカクンと抜けた。


トップバッターのライダースが漫才を披露しているのを舞台袖でずっと眺める太一。

お客のウケは、爆笑とまではいかないし、スベっているとも言えない。


「……漫才か…」


悔しいそうにライダースを見つめる。


「だから、Mr.ドーナツ」

「結局それかよ

いい加減にしろ」


漫才の定石とも言える終わり方でネタを終える二人。

ライダースと書かれたバケツに100人のお客が球入れるか審査する。

バケツに入って行く球を見て、太一は「417か…」と呟いた。


「ライダースのお二人でした

続きましてはこの人だ!!」


爆バトのテーマソングが流れ、太一はセンターマイクの前に走って行った。


いつもの居酒屋のカウンター席でオンスタイル、井田と飲んでいた。


「結局トップ漫才組かよ!」

「兄さんだってオンエアしたじゃないですか」

「あんなもんで満足するかよ」


計量の時、うすうす感じていた。

オンスタイルの受け方が尋常じゃなかったことを。


量って見ると、オンスタイル509pt

山田太一453ptとその回のワンツーフィニッシュだった。


「でも差開き過ぎだろ…」

「関係ないですよビキナーズラックですって…」

「お前優しいな…」


酒を飲むと感情が出やすくなる太一は、涙目になりながら井田の肩を叩いた。











その後太一は、井田に送ってもらい何とか家についたのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ