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愛の劇場

キャプテンとマネージャーは恋に落ちるものなのか?

作者: towa


ここは『愛の劇場』、今回は何と現代である。ファンタジーの世界とは違い設定や環境は思い通りに行かないことも多いが読者はそれをくみ取り温かい目で見てくれるだろう。


 さっそく見えたのは今回のターゲットだ。どちらだ?どちらもカワイイぞ。いや……今回はアイツだな。




「今日ね、お兄ちゃんが彼女を連れてくるの。面白そうだから私たちも家に行ってみようよ」

「はぁ?なんでだよ」

「だってさ〜あのクソ真面目なお兄ちゃんが彼女を連れて来るだなんて。妹の私が家族との仲を取り持つのがイケメンの兄を持つ妹の定めなの」



 そして彼女と向かう彼女の実家。俺と彼女は大学2年の時に大学で知り合った友人の紹介で付き合うことになった。付き合い始めもうすぐ1年が過ぎようとしていた。サバサバしていて友人のような彼女だ。彼女の実家まで電車で1時間。電車の振動で俺はウトウトとしてしまった。そして……。





※※※※


「なぁ、祐希。あのマネージャーとはどうするんだ?」

「ん?マネージャー?あ〜佳代子か?」

「もう呼び捨て?」

「まぁ、佳代子がな」

「付き合うのか愛華ちゃんと別れてさ」

「は?なんで?」


 5月となり夏に向けて景色は変わり始める。

 放課後の教室で親友と楽しいおしゃべりの時間。


「なんでって、お前たち……いや祐希とマネ子ちゃんの噂がな」

「噂?」

「互いに好き合っているのに愛香ちゃんに気を使って別れを言えず、付き合えない『悲恋のお似合いカップル』とな」


「佳代子とは……そんな仲じゃ」

「いやいや、デートしてるだろ、こっそりと」

「違う。あれは相談とか、打ち合わせでな」

「打ち合わせで遊園地に行くのかな。2人きりでカフェに何時間も?その後はカラオケ?」


「いや……その……だな」

「なぁ、お前はどうしたいの?どっちと付き合いたいの?」

「愛華とは中学の頃からの付き合いで」

「何?長く付き合っているから別れを伝えるのが可哀想?」

「そうじゃなくて、嫌いな所もないし、安心できるのが愛華でな」

「ドキドキするのがマネ子ちゃんね」


 俺は何も言えなかった。実際に佳代子が気になっていたから。2年で可愛いと評判の佳代子。そんな彼女は俺を慕っている。好意を寄せているのはわかっていた。2年の時、夏のインターハイが終わり3年が引退し俺はバスケ部のキャプテンになった。マネージャーの佳代子とは試合後や練習後の打ち合わせをするため、よく話すようになった。そして部活以外の休み時間や廊下でも顔を見ると話をしていた。

 一度、愛華から小言を言われたが気にするなと言った。愛華は悲しそうな顔を見せたが俺は気にもしなかった。



 3年の5月、俺は愛華の教室に向かった。そして、友人達と楽しそうに話す愛華に話かけた。


「愛華、どうして佳代子に」

「何?佳代子さん?すでに呼び捨てにする位の仲なのね」

「ッ……うちのマネージャーが泣いていた」

「どうして?」

「愛華にキツく言われてだな」

「何を?」

「俺に近づくなと」


「あら。彼女はそんな風に祐希に伝えたのね」

「は?彼女を虐めるようならば、俺達はもう」


「終わりにする?そうすれば彼女といられるわね。私に嘘をついて2人で出掛ける必要もないだろうし」


「愛華……本気で言ってるのか?」


 横にいた愛華の友人達は止めようとするも愛華は凛とした表情で俺を見つめた。


「わかったよ。お前とは終わりだ」


 教室を怒りながら祐希は出て行った。


「愛華……?いいの?」

「いいのよ。前からわかってたのよ。祐希はもう私を見ていないとね」



 その後は、愛華とは話すこともなくなり、そして俺は佳代子と付き合う事にした。そして、6月に入ると愛華は学校に来なくなった。



「祐希は、マネ子ちゃんを選んだのね」

 親友と久しぶりに放課後の教室で話す。

「え?お前が」

「ん?どっちにするのか?とは言ったけどマネ子ちゃんと付き合えば~なんて言った覚えはないよ〜」

「そうだったな。実は愛華は佳代子を虐めていて。それで俺は愛華に別れを言ったんだ」

「ほお、長年付き合った彼女の言い分を聞かず?まぁ俺の大切な彼女から聞いたのはね。こんな話だ」



 親友から教えてもらった事は、愛華が佳代子を虐めたのではなく佳代子が愛華に対し、俺と佳代子が2人で会っている事、早く別れて欲しいと俺が言っている、と愛華に何度も言っていたようだ。しかも、佳代子は友人達を連れて愛華1人を囲み散々俺との関係を聞かされていたようだった。


「まさか……そんな愛華の方が佳代子に色々と言われ続けてた?愛華は何も言っていなかった」


「じゃぁさ。祐希は彼女と最後にデートしたのはいつかな?前は放課後とか休み時間に一緒に過ごしてたよね。でもさ変わったよね。結城は長年の彼女の事ではなく、佳代子ちゃんを優先して、最終的には彼女と話し合う事をせずに嘘を信じた。これが現実だ。それからね、愛華ちゃんは留学したよ。だからもう会えない」


「愛華が留学に?」

「祐希は、あの子に夢中だったからね。伝えられなかったのかな。まぁ留学するから別れたとなれば、祐希が他の人と付き合う事になっても祐希への非難の目は少ないね。良かったね、最後まで優しい彼女で。それじゃ、俺の彼女は君にカンカンでね。俺と祐希の関係は変わらないけど以前の様に4人では遊びに行く事はないからね」


 その後は、佳代子と付き合う事になったが佳代子は我儘だった。そして、俺の友達にも気安く話しかける佳代子に対し、友人の彼女らからの叱責もあり俺と友人達の付き合いが減ったのだった。そして、佳代子とは3ヶ月ほど付き合って部活の引退をきっかけに別れ、佳代子は直ぐに他の男と付き合いだしたのだった。


 

「…………き…………ゆ……き、起きて」

「あ……ごめん。寝ちゃった」

「もうすぐ、降りるよ」


 懐かしい夢を見た。久しぶりに見た愛華……。彼女は幸せに過ごしているのだろうか。そうして、俺と彼女は実家へと歩く。





「お兄ちゃん、ただいま〜」


「久しぶりだね美幸。お隣は恋人なのかな」

「そうなの、でも今日の目的はね。お兄ちゃんの恋人に会いに来たの」


「紹介するよ、僕の……恋人の愛華だ。ほら僕の留学に一緒に行った女性だよ。今は同じ大学に通っているんだ」

「あの時の?確か空港で会いましたね」

「はい、お久しぶりですね。美幸ちゃん」

「あの時も思ったけど、めちゃくちゃ可愛い〜お兄ちゃん良かったね」

「あぁ、留学先でも彼女は人気でな、勇気を出して告白して良かったよ」


「そうそう、あの時は愛華さん長年の恋人が他の人を好きになって別れたんだよね。落ち込む愛華さんを何とかしたいと、お兄ちゃんから秘密の相談されたね〜。懐かしいわ」


「美幸……余計な事は言わなくていい」

「ふふっ、いいのですよ。あの時、海斗さんが留学に誘ってくれたおかげで立ち直る事ができて、今は恋人として隣にいられるので幸せです」


「しかし、こんなに素敵な愛華さんを振る男はどうしてるのかね」

「ふふっ、私が振ったようなもんよ。きっと彼は素敵な恋人が出来て幸せにしてると思うわ」


「もう愛華さん、優しすぎ。そうそう、この男が私の彼氏の祐希。もうすぐ1年になるんだ」


「美幸の兄の海斗だ」






「初めまして、祐希さん。愛華です」

「……あ、愛華さん。初めまして、祐希です」





 ――――おしまい――――

読んでいただきありがとうございます。他の作品は『愛の劇場』シリーズにまとめてますので、時間があれば読んでもらえると嬉しいです。

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