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第8話 生活魔法



 僕はキール兄ちゃんに魔力切れについて聞いてみた。


「魔力切れ直前の感覚というのはだな、感覚でしかわからないから実践あるのみだな。クーフが魔力切れを感じることができていないのは、いきなり高出力の魔法を使ったから魔力切れの感覚がわからなかったのだろう。」


「じゃあ、僕はどうしたらいいの?」


「そうだな。まずは低出力の魔法である生活魔法を使って感覚を掴むしかないな。」


「じゃあキール兄ちゃん、生活魔法おしえて!」


「んーすぐに教えて使えるかもわからないし、俺は今日の畑仕事が残ってるからな。もう少ししたらカンテナ姉さんが帰ってくるだろうから、カンテナ姉さんに教えてもらうのがいいかもな。」


「えー。じゃあ僕はすぐに魔法の練習できないんだ。」


「まあクーフもまだ畑の水撒きが残ってるだろ?まずは水撒きをして体力を付けるのも魔法をたくさん使うための訓練だからな。」


「はーい。じゃあ水撒きしてきまーす」


 こうして僕は早く水撒きを終えて、カンテナ姉ちゃんに魔法を教えてもらうことにした。



 だが。

 くっ、僕の考えが甘かった。朝にできなかった分の水撒きのこと忘れていたよ。

休憩をいつもより短くして頑張ったからか、もうクタクタだし、いつもは朝7時頃から始めて、昼3時には終わるのに、いまはもう夕日が沈みそうになっている。

とりあえずお家に帰ったら、カンテナ姉ちゃんに話だけでもしてみよう!


「たっだいまー!」


「おかえり、クーフ。今日は遅かったのね」


「あ、母さん。僕、朝は魔力切れであんまり水撒きできていなかったからその分で遅くなっちゃったよ」


「あら、そうだったわね。体は大丈夫?」


「うん!大丈夫だよ!それよりカンテナ姉ちゃんはどこにいるの?」


「カンテナならいま、夕食の準備を手伝ってくれているわよ。何か用があるの?」


「うん、ちょっとね。生活魔法を教えてもらえないかなと思って。」


「それならいま、生活魔法を使ってると思うからちょうどいいんじゃないかしら?」


「やった!じゃあカンテナ姉ちゃんのところに行ってくるね!」


 魔法が使えるようになるかもしれないと思っただけでクタクタだった体は一気に元気になった。“病は気から”というけど、病を吹っ飛ばすのも気からなんだというのを実感したよ。

そして僕は駆け足で調理場にやってきた。

調理場は床が土で固められていて竈のある、いわゆる昔話に出てくるような土間の炊事場である。

 そこでカンテナ姉ちゃんを見つけた。カンテナ姉ちゃんは僕の11歳上で髪はブロンドでセミロング、目は藍色で14歳であるけど、すごくナイスバディな体型だ。

キール兄ちゃんもそうだけど、この世界は早熟に育つようだ。


「やっほー!カンテナ姉ちゃん!」


「(うっ、この声はクーフ!?テンション高いの苦手なのよね)

 あらクーフ、どうしたの?」


「生活魔法を教えてほしいなって思って。」


「あぁ、あんた魔法使ったんだってね。母さんから聞いたよ。生活魔法ね、いいわよ。ちょうど今からお芋を茹でるために薪に火をつけるところだから。見ていて。」


 そう言ってカンテナ姉ちゃんは人差し指に小さな火を灯して、薪に火をつけた。


「ほら、クーフもやってみて。」


 おぉ、スパルタ教育。

いきなりやってみてと言われてもできないよね。いたよね、前世にもこんな嫌がらせなのか、それともマウント取りたいだけなのか、よくわからない人。

 まあそれはさておき。


「うぅ、やり方がわからないのでおしえてください。」


「(あら、ちょっと意地悪しすぎたみたいね)

 火は熱いでしょ?それをイメージして指先が熱くなって、赤く燃え上がることをイメージするのよ。」


 えっ、それだけでいいんだ!魔法ってイメージだけでできるものなのか。前に父さんが言っていた何とかの原理って言ったのは何だったんだろう?

 とりあえず、出来るかどうか試してみよう。


「うん!わかった!やってみる!」

そして僕は蝋燭の火をイメージしてみた。


「お!おお!出来たよ!カンテナ姉ちゃん!」


「あら、一回で出来るのはセンスあるわね」


 何故かはわからないが、蝋燭の火より少し小さな火が指先に灯った。

 その後もガスコンロの火だったり、キャンプファイヤーだったりイメージして何度か試したが、火の大きさを変えることができなかった。だがそれでも小さな火を灯すことは出来、失敗することなく、火の魔法が使えるようになった。


「じゃあクーフ、火の生活魔法は使えるようになったみたいだから、次は水の生活魔法を教えるわ」


「はーい!お願いしまーす!」



「水も火と同じでイメージするんだけど、水のイメージはどうすればいいかわかる?

 (あ、また意地悪な質問しちゃったわ。さて、クーフはどう答えるかしら?)」


「水かあ。うん!なんとなく出来そうだよ!やってみても良い?」


「いいわよ!

 (一体この子はどういうイメージでやろうとしてるのかしら?)」


「じゃあやるよ!それー!」


 そして僕の指先からはチョロチョロと水が出てきた。


 ちなみに僕がイメージしたのは雨でずぶ濡れになって、滴り落ちる水をイメージしたよ。水も滴るイイ男って言いたくってね。ぷぷぷっ。


「クーフすごいわね!一体どんなイメージしたの?」


「ふっふっふっ!水も滴るイイ男ってやつだよ!」


「(ん?またこの子、テンション高めで変なこと言ってる。)

 そ、そうなのね。」


ん?なぜだ?カンテナ姉ちゃんがちょっと引いている。よし、話題を変えよう!


「他にも生活魔法ってあるの?あれば全部知りたいな。」


「あるわよ!あたしも全部できるわけではないけど、知っている物はすべて教えるわ!じゃあお芋を茹でている間に教えるわ」


「わーい!ありがとう!」


 そうして僕はその日のうちにカンテナ姉ちゃんから残りの生活魔法を教えてもらい、すべて使えるようになった。どうやら魔法に対してのセンスがあるようだ。

 でも、魔法は使えるけど、何とも言えないくらいにしょぼかった。

そのせいか、その日は魔力切れを感じることができないまま終わり、魔力切れについては翌日試すことにしたのであった。


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