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第60話 長旅の始まり

本編へ戻ります。



 僕らはスキルを授かり、エルプーリさんへ挨拶をしたあとはすぐに村を出た。

 村を出るのはこれで3度目だ。

 僕はいまだにこの世界のことをよくわかっていない。

 なのでリンキーに王都までどのくらい掛かるのかを聞いてみた。


「ねぇ、リンキー。

 王都までってどのくらい掛かるの?」


「んー、わからないな。

 歩きだと2ヶ月くらいじゃないか?」


「2ヶ月!?

 リンキーはこの村に来たときも2ヶ月掛けてかたんだ・・・。」


「そんなわけないだろ。

 高速馬車を使えば3日くらいで着くぜ」


「え、高速馬車って何なの?」


「簡単に言うとだな、めちゃくちゃ速い馬車だな!」


「僕らがこの間、町まで行くときに乗った馬よりも?」


「あぁ!もちろんだ。

 高速馬車はな、車体部分は魔道具だから馬は重さを感じることなく走られるし、馬は普通の馬ではなくて魔物の馬だからスピードもパワーも桁違いだぜ。

 ただ乗車賃がめちゃくちゃ高いんだけどな」


「そうなんだ。

 やっぱり良いものは値が張るんだね」


「そうだな。

 あ、もしクーフが魔法学園の人に迎えに来てもらっていたら高速馬車に乗れたはずだぜ」


「えっ!?そうなの!?」


「あぁ、魔法学園が何台か所有してるらしいからな。

 やっぱり乗りたかったか?」


「うーん、乗りたいけど、すぐに飽きちゃいそう。

 それよりもリンキーと旅をしながらの方が絶対楽しいよ!」


「ははっ、さすがクーフだ!

 ならこの旅は全力で楽しもうぜ!」


「そうだね!魔物とは積極的に戦っていこ!

 僕らのコンビネーションだったらある程度なら大丈夫でしょ」


「だな!」


 僕らは魔物と出会えることに気持ちを高めながら旅を始めたのだった。

 


 そして夕方。

 ポツリポツリと木が生えてる草原を僕らは歩いていた。


「リンキー、魔物全然見かけないんだけど」


「あ、あぁ。

 まあそんな日もあるだろう。それより野営の為の準備をそろそろ始めないとな。

 暗くなると作業しづらいからな」


「野営の準備ってリンキーは何をするつもりなの?」


「ん?

 まず近くの木屑を集めて、火を起こし、昼に狩った鳥を焼いて食べて、夜の間は交代で見張りだろ?」


「ふっふっふ。

 リンキーは常識にとらわれすぎだよ。

 僕たちがなんでそんな"普通"のことしなくちゃならないの?」


「ん?どういうことだ?

 というか一体何をする気だ?」


「これだよ!」


 僕は手に収まるほどの小さな木の枝をリュックから取り出した。


「木の枝?」


「そう!これをこうして、こうすれば。

 ーーーほらね!」


「おー!なるほどな」


 僕は枝を地面に差し、魔力を込め木を成長させた。


「じゃあリンキーこれで簡単な家を作るから風魔法でカットお願い!」


「おう!

 大きさはどのくらいにするんだ?」


「そうだね。

 リンキーの住んでた小屋くらいにしよう!」


「オッケー!じゃあ行くぜ!」


 リンキーは瞬く間に木材をカットし、積み上げた。


「おー!さすがだね!

 リンキーの魔法コントロールって本当すごいね」


「ははっ。ありがとな。でもまだまだ精度はよくないな。大きさが安定してないからな。

 それでこれを組み上げるのはわかるが、かなり時間がかからないか?」


「これから数日は慣れるまで時間がかかるかもしれないけど、まあその内早くなるよ!」


「それもそうか。

 じゃあオレの住んでた小屋を思い出しながら組んでいくか」


「うん!

 あと慣れてきたらもっと大きくしていくからね?」


「大きくする必要なんてあるのか?」


「リンキーが前にベッド作るときに言ってたでしょ?

 少しずつ良くしていくのは技量の向上に繋がるって。」


「あぁ、そうだったな。

 じゃあ豪邸を作れるくらいまで目指すか!」


「ははっ、そうだね!」


「じゃあ早速取りかかるか」


 僕らは小屋を作り始めたんだけど、すぐに疲れて休憩していた。


「リンキー、木材って思ったより重いよね?

 これ作り終えられるのかな?」


「んー、無理だな。このままでは。」


「じゃあやっぱりあれしかないか!」


「おう!」


 それから僕らは身体強化魔法を省エネで使いながら小屋を建てた。


「ふぅー。やっと終わったね」


「あぁ、もう周りは真っ暗だぞ」


「そこはリンキーの火球魔法で照明代わりになったから助かったよ!

 ありがとう!」


「あぁ、でも3時間くらいかかったんじゃないのか?」


「そうだね。でも今日は2人ともぎこちなかったし、無駄が多かったからだよ。

 明日は役割決めてから作ろう!」


「そうだな。

 じゃあ早速晩御飯にしようぜ!」


「うん!もうお腹ペコペコだよ」


 それから僕らは鳥の丸焼きを食べ、小屋で寝ることにした。

 一応、魔物対策のため小屋周辺は泥魔法で侵入防止策を施してね。

 そして翌朝。


「うーん、よく寝た!」


「お、起きたかクーフ。おはよう」


「おはよ」


「じゃあ行くか。

 それでこの小屋はどうするんだ?

 燃やして処理でもするか?」


「うーん、せっかく作ったし、このままで良いんじゃない?

 それに他の人も使えるしね」


「この道を歩いて旅する人はいないと思うが。

 まあ残しておいても問題ないか」


「うん!じゃあ出発しよう」


 こうしてこれから毎日僕らが残していく小屋が後にこの周辺の発展に繋がるのだがそれはまた別のお話である。




 そして夕方。


「リンキー、今日も魔物いなかったね」


「あぁ、まあよく考えてみれば入学試験のときにこの道通ったけど魔物みなかったもんな」


「たしかに!

 なら今日は小屋を建てて早めに休息を取って、明日は朝早くから町まで急いでいこう!」


「だな。」


「そういや、リンキーの超絶集中スキルってどんな感じなの?使ってみた?」


「いや、全然使ってなかったな。スキルよりも旅の方が楽しみだったからすっかり忘れてたよ」


「じゃあ今から小屋を作るし、木をカットするときに使ってみて昨日と比較してみてよ」


「ああ、じゃあやってみるか。

 クーフ、木を準備してくれ」


「わかった!それ!」


「よしっ、やってみるぞ。

 まずは集中力高めてみるイメージだな。

ーーーこんなもんか。

 じゃあやるぞ!」


「おー!すごい!

 昨日と比べるとスピードは速いし、カットした木のサイズもかなり均一だ!」


「ふぅー。でもこれかなり疲れるな。

 あまり使い勝手よくないスキルかもな」


「そんなことないよ!」


「なんでだ?」


「僕のお兄ちゃんが超集中スキルなんだけど、使い方を工夫すればめちゃくちゃ使えるんだ!」


 それから僕はキール兄ちゃんがやっていたことをリンキーに説明した。


「なるほどな。

 使う意識を変えてみる、か。それと瞬間的に使うってのも良い案だな。

 いまから試してみるからもう一度木を準備してくれるか?」


「わかった!

 ーーーそれ!」


「よしっ、じゃあ風魔法にスキルを使うのではなく、カットするイメージにスキルを発動させればいいんだな。

 ーーーやってみるぞ」


 リンキーは先ほどと同じように木をカットした。


「うむ。確かに使い方を変えるだけで疲労感が激減するな。

 というより通常の魔法と変わらないな」


「えー!もうできちゃったの!?

 リンキーのセンス羨ましすぎるよ」


「まあクーフのアドバイスがあったからだな。

 やっぱり教会で先生を、やってただけあって説明がうまいもんな」


「えへへっ、それはよかった!」


「じゃあさっさと小屋を建てて晩ご飯にするか」


「うん!」


 それから僕らは小屋を1時間ほどで建てたあと夕食を食べながら話をしていた。


「今日はかなり早く小屋を建てることができたね!」


「あぁ、そうだな!

 互いにやることを決めたら早かったな」


「うん!」


「そういや、クーフの特殊思念だっけか?

 スキルを使ってみてくれよ」


「僕のスキル使ってもいいけど、どうすればいいの?」


「オレに何か念じてくれよ」


「何かって、なに?」


「そうだなー、"リンキー様、あなたの魔法の力には敵いません"って念じてくれ」


 リンキーはニヤニヤしながら、僕に要求してきた。


「えー、何だかイヤだな。

 まあでも試すだけだから、とりあえずやってみるよ」


「ははっ、イヤがっても事実は事実だからな。

 入学試験の戦いでオレが勝ったんだからな。

 じゃあ、頼む。」


「じゃあいくよ。」

 『リンキー様、あなたの魔法には敵いません』


・・・。


「ん?クーフ、何も感じないぞ?

 ちゃんと祈ったか?」



「え、祈ったよ?エルプーリさんのときは上手くいったんだけどな。」


「じゃあもしかして『特殊』な何かが働いたのか?」


「うーん、わからない。まあ、僕は別にスキルなくても困らないよう体力も魔法も訓練したから気にしないことにするよ」


「・・・そうか。この『特殊性』が、何も悪さをしなければいいんだがな」


「やめてよ、まるでこれから『特殊思念』によって、僕の人生がうまく行かなくなるみたいな言い方」


「悪い、悪い。まあ気にしなくていいよ。

 これからもお互い頑張っていこうぜ!」


「うん!じゃあまだまだ道のりは長いけど王都ウリンシンまでの旅を楽しんでいこー!」


「そうだな」


 こうして『特殊思念』についての解釈を曖昧にした僕は、これからの人生を苦労することになるのであった。




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