第59話 別れのあと
今回はクーフが実家から旅立った直後のお話です。
すこし短めです。
クーフは満面の笑みで旅立ちの挨拶をし、去っていった。
「クーフ、行ってしまったわね」
「そうだな。イザリアはもっと話さなくてよかったのか?」
「えぇ、本当はもっと話したかったけれど、あれ以上話してしまうと"あの子の旅立ちを止めてしまう"かもしれなかったの」
「そうか」
「だけど、これからずっと話せないわけではないものね。私たちがしっかりと頑張れば!」
「あぁ、そうだな」
「その事に関しては私にまかせて!
ゾーシンとナガリオさんとで立てた計画では10年程でこの村の意識改革ができるはずだから」
「10年・・・か。
やはりそれほどの時間は掛かってしまうのだな。」
「・・・うん、こればっかりは村から町、さらに町から次の町、そして遥か先の王都までを考えるとそれぞれを行き来するだけでもかなり大変みたいなのよ」
「それは魔物が出るからか?」
「いいえ、比較的魔物は少ないようなの。
ただ適度に休息をとれるところがなくて野営になるのよ」
「なるほど。そうなるとある程度の人数や馬車が必要ってわけか」
「そういうことなの。
それでね、たくさんの人が来れるようにゾーシンを主としてまずは道中に休息エリアを設けようとしているの」
「ということは休憩所のような建物が必要ってことなのか」
「えぇ。休憩所ができれば少人数でも旅がしやすくなるし、そうなれば様々な規模の商会の人たちがこの村まで来やすくなると考えているの」
「カンテナ姉さん。俺も何か手伝いができることがあれば一緒にするから声を掛けてくれよ?」
「ありがとう、キール。
でもあなたはまずこの畑を発展させてほしいわ」
「畑を優先するのか?」
「えぇ、だってクーフが帰ってきたときにまだ芋しか作ってなかったらあの子ガッカリするわよ?」
「あぁ、そういうことか!
なら俺は畑の発展を進めてそれから手伝いに入るようにする」
「えぇ、あなたならすぐできるわ。
魔法とスキルの掛け合わせがうまくいってるんでしょ?」
「う、うん。い、いや、実はさっきは見栄を張ってしまった。
クーフが魔法学園に通うって思ったら何だか悔しくてな」
「あら?だったらあなた大変よ?
クーフは魔法に関してはすごく貪欲だからね。
あの子が帰ってくるまでに魔法とスキルの掛け合わせを完成させておかないとね。ふふっ」
「そ、そうだな。
じゃあ俺は当分、手伝いに参加できなさそうだ・・・。」
「気にしなくていいわ!
それぞれがそれぞれのことを頑張りましょう」
「カンテナ、本当に困ったときは遠慮なく相談しなさいよ?
私たちが力になれるかどうかはわからないけど、1人で抱え込まないようにね」
「ありがとう、母さん」
「よしっ、ではとりあえず10年後の再会を目指してみんなで頑張りましょ!」
「「「おー!」」」
こうして一致団結した家族はクーフを迎え入れる為にそれぞれが役割意識を持って動き出すのであった。
カンテナはゾーシンたちへクーフのことを話してからやる気に満ち溢れていた。
それはまさかゾーシンがクーフの為に動いてくれると思ってなかったからだ。
そしてその頃からカンテナはゾーシンに対して深く尊敬の念を抱くようになった。
互いに敬い合うようになったカンテナ夫婦は後に周りから理想の夫婦と呼ばれるようになるのだがそれはまた別のお話である。
次のお話から次章に入っていきます。




