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第5話 母のスキルと過去の出来事


 家に帰ってきて、僕から母さんに報告した。

ちなみに母さんは髪色がブロンドでロング、目の色は茶褐色のスレンダー美人だ。


「母さん、僕、魔法が使えるようになったよ!でもさっきね、魔力切れで倒れちゃったんだ」


 そのことを告げると、母さんは心配そうな顔でしゃがんで僕の手を握ってきた。


「クーフ!大丈夫!母さんがヒールで治してあげるから!ヒール!」


「母さん、ありがとう」


 まあ僕はすでに回復していたのでヒールの効果を感じることはなかったのだが。それでも母さんはさらにヒールを掛け続けてくれていた。


「ヒール!ヒール!ヒール!」


 そして、そんな様子をみていた父さんが母さんのことを心配しすぎていたのが気になった。


「おい、イザリアやめるんだ!また気持ちが落ち込むことになるぞ!クーフは問題ないんだ!」


「ヒール!ヒール!」


「イザリア!やめてくれ!」


「母さん!僕は平気だよ!」


「クーフ、本当に治ったの?もうヒール掛けなくていいの?」


「大丈夫だよ!母さん。僕、普通に喋れるし、ほら歩けてもいるからね」


「そう、よかったわ。」


「イザリア、あんまり無茶はしないでくれよ」


「父さん、母さんはヒール使いすぎるとよくないの?」


「あ、うん、そうだな。この際、クーフにもきちんと説明しておくか。」


「あなた!クーフにはまだわからないわよ!」


「いや、大丈夫だ。この子はもう魔法を独学で使えるし、話もよくわかる子だ。な、クーフ、そうだろ?」


「うん!僕、母さんのこと心配だからきちんと知っておきたいの。ダメかな?」


 僕は上目遣いで母さんにうるうるな瞳で訴えてみた。


「クーフ。わかったわ、だからそんなに悲しい顔をしないで。」


 そう言いながら母さんは僕の手を離して、それから僕の頬を両手で包み込んでくれた。

それから母さんは昔の出来事を話してくれた。


*********


「これはアルフ、つまりあなたのお父さんと結婚する前の話になるの」


 こうして母イザリアからヒールについて語られた。

それは今から15年前、父アルフと母イザリアが19歳のときの話だ。

アルフとイザリアは幼馴染みで子供のころからよく遊んでいたらしい。というのも、2人とも両親はおらず、教会の施設で育ったようだ。

 でも12歳の天啓の儀で、アルフは農耕スキルを授かったことから、荒れ果てた土地を与えられ、自立することになった。

 そしてイザリアはヒールスキルを授かり、教会でケガした人や病気の人を癒やすための訓練をしていた。

癒やすと言っても村での出来事は転んで擦り傷を負った子供や少し咳が出ている村人を治すだけで、大きなケガや病気を治す経験をすることがなかった。

 一方、アルフは農耕スキルを授かったものの知識もないまま、農耕をすることになったが、周りの同じようなスキルを持った人の助けもあって、一生懸命に芋を作っていた。

そしてお互いに忙しくもあり、顔を合わせることも少なくなり、気付けば7年ほど経過していた。


 アルフは周りの助けと農耕スキル、それから教会より貸し出される魔道具じょうろで農耕に関する知識や経験により1人で生活できるほど稼ぐことが出来ていた。

それに毎日の作業でかなり身体が鍛えられていた。

 しかし、一方でイザリアのヒールスキルは軽い症状のケガや病気を治すことは出来るようにはなっていたが、特に大きな病気や怪我を治療する機会はなかった。

そんなある日のこと、村で事件が起きた。


「ふぅー!今月も畑の世話と新規開拓が予定通り進んだな!今日はまだお昼前と少し早いが、切り上げて作物を納めに行くか!まあ芋しかないけどな。」


 アルフは月に一度、芋を納めにいき、いくらかの賃金を得ていた。そして、今日も毎月同様に芋を納めるために教会へ向かった。


「よお!イザリア!久しぶりだな。調子はどうだ?」


「あぁ、アルフ。あなたはいつも元気いっぱいね。私はいつもと変わらないわ。ケガや病気する人も減ってきて、とても平和よ。」


「そうか。平和か!平和が一番だもんな」


 そう和やかな会話をしていた二人であったが、1人の村人の男性が焦った様子で走ってきた。


「まずい!魔物が出た!何人かが大怪我をしちまってる。とても運べねえから、姉ちゃん!怪我人のところまできて治してくれないか!」


「わかったわ!すぐ行くわ!」


「待て、イザリア!おい、そこのおっさん!魔物が出たってその魔物はどうなったんだ?魔物が居るところで治療なんてできねえだろ!」


「魔物は狩りスキルを持った冒険者がなんとか仕留めてくれたから大丈夫だ!だから早く来てくれ」


「すぐに行きます!」


「イザリア、俺も一緒に行くぞ」


 そうして村人に案内され、大怪我をした人のところへやってきた2人は驚いた。


「おい、お前たち大丈夫か?回復スキルの姉ちゃんを連れてきたから安心しろ」


 そう村人の男性が声を掛けた人は4人居たが、4人ともイザリアが経験したこともないほどの大怪我を負っており、腹部からの出血や顔面からの出血、腕や足が折れている様子で一刻を争うようだった。


「おい、イザリア!大丈夫か?」


 そうアルフがイザリアに声を掛けたがイザリアは青白い顔色のまま


「えぇ、すぐにヒールを使うわ!ヒール!」


 しかし、怪我人の様子はあまり変わらない。イザリアは叫び続けた。


「ヒール!ヒール!ヒール!」


 イザリアがヒールを掛け続けている間、アルフは幼き頃に教会で学んだ応急処置を怪我人に行っていた。

 そしてイザリアは怪我人が良くならないことに気付きながらも必死にヒールをかけ続けた。


「ヒール!ヒール!ヒー、」


 そして、イザリアは倒れてしまった。



 イザリアが目を覚ますと、そこは教会であり、目の前にはアルフが居た。


「おい、イザリア!目が覚めたか!」


「わ、わたし、あ!怪我人の方は!?」


「イザリア!怪我人よりも自分のことを考えろ」


「でも、でも怪我人の方を治すのが私の役目。」


 そして、アルフは苦虫をかみつぶしたような表情でイザリアに伝えた。


「怪我人は俺たちが着いたときにはもう手遅れだった。俺も応急処置をしたが、とても治るレベルのものではなかった」


「そ、そんな、私がヒールをうまくできなかったから・・・。う、うぐ、ぐすっ」


 それからイザリアはスキルに自信がなくなって、少しの怪我でも過剰なくらいヒールを掛けるようになった。そんな様子をみたアルフが心配し、教会の神父様と話をして、イザリアにはスキルを使わない環境においた方が良いのではないかと相談し、また少しでも気が晴れるようにとイザリアにも農耕を手伝わせて、月日が流れ。なんやかんやでそのまま結婚となったようだ。


*********


「ということがあったのよ。だから母さんはあなたの姉のカンテナや兄のキールが小さい頃に外で遊んで転んだときにも過剰なまでのヒールをしていたりしたの。その度にアルフからは心配されていたけどね。幸い、クーフが怪我することがなくて最近使うことはなかったんだけどね。」


 なるほど。なかなか重めな過去だなぁ。というか父さん、弱ったところを狙うなんて、ちゃっかりしてるね。それにナチュラルに心理学的手法使ってるね。

というか、この世界には冒険者も魔物もいるんだね。冒険楽しそうだなぁ。将来、冒険者って道もあるのか!ワクワクしてきたよ。

 あと、いまの話でスキルについての仮説を立てられそうだけど、母さんのスキルについては父さんが過剰反応するからなぁ。いまはまだこの2人に話すのはやめておこうかな。


「母さん、僕は怪我しても父さんのお芋さんで元気になれるから心配いらないよ!」


「「クーフ、何て良い子なんだ!」」


 よしっ!これで両親からのよい子ちゃんポイントゲットだぜ!ぷぷぷっ。

 それよりもお昼ごはんのあと、キール兄ちゃんにお願いしてキール兄ちゃんのスキルで仮説を試してみよう!


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