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第56話 魔法学園の決まり事



 試合を終え、しばらく部屋で休息を取ったあと、僕とリンキーは夕食をカリンさんと取るべく、待ち合わせのお店の前へと来ていた。


「ねぇ、リンキー。僕たちの今日の戦いで反省すべきところってあるかな?」


「ん?今日の戦いは互いの力を出し合ったからよかっただろ?何を気にしているんだ?」


「うまくいった日ほど、その中で“こうすればもっとよかったんじゃないないかな?”と考えないと成長が止まっちゃうよ?」


「なるほどな。だったらオレは泥に足をとられて転んだところとそのあと不用意にクーフに近づいたことだな。クーフはどうだ?」


「僕は・・・そもそも戦いで負けたからなぁ。僕の反省点は最初からリンキーの動きを予測して“現状を見ずに対応しよう”としたところだね」


「そうだな。あのあとの事象から見るとオレが足元を凍らせたときに水分量を調整していたらクーフの思惑通りに事が運んでいただろうしな」


「そうだね。あとは大木を出そうとしたところをリンキーの話術で吐露してしまったところとか?」


「ははっ、そうだな。クーフは言葉で誘導されやすいからな」


「うっ、今後は気を付けるよ」


「おっ、お母さんが来たみたいだ」


「こんばんは、二人とも。今日の戦いはすごくよかったわよ」


「ありがとう」

「ありがとうございます」


「こんなところで立ち話もなんだからお店に入りましょう」


 僕たちはカリンさんが予約してくれたお店に入った。


「おー!すごい豪華な場所だね」


「クーフ、ちょっと落ち着けよ。恥ずかしいだろ」


「僕こんなに素敵なお店来るの初めてだよ。それよりも僕の服装って大丈夫なの?」


「あら、お店に入るのに服装は気にしなくていいわ。さすがに汚れてると問題だけど」


「それならよかったです」


「いらっしゃいませ。カリンさま。奥の個室を用意しておりますので案内いたします」


 こうして僕らは個室へと案内された。

 その個室は中華テーブルのようなものが置いてあった。


「まずは食事を楽しみましょう。では予約していたコースをお願いするわ」


「かしこまりました」


 そこからは予想通り、中華料理がたくさん運ばれてきた。

 こういったものを食べる度に思うけど、僕のこれまでの食生活ってこの世界のなかでもちょっと特殊だよね。


「これすごく美味しいです。カリンさんはいつもこんなに美味しい食事してるんですか?」


「口に合ってよかったわ。いえ、この料理は特別よ。いつもはもっと質素な料理か狩りで得たお肉を料理して食べてるわよ」


「そうなんですね。今日はありがとうございます」


 どうやらこの食事が特別だったようだ。にしても宮廷魔術師クラスで狩りしたお肉って・・・。

 いや、もしかしたら“この人”だけかもしれないな。


「いいえ、気にしなくてもいいわ。それにねクーフ君を招待したのは今から話すことに関係あるからなのよ」


「お話?それは決勝戦のことですか?」


「そ、そうね。決勝戦に関係するといえばするし、しないとも言えるわ」


「お母さん、どういうこと?」


「一つずつ話をするから落ち着いて聞いてね。」


「うん」

「はい」


「まず、リンキー。あなたは魔法学園へは通えないわ」


「えっ!何で!?オレ優勝したのに?

 ・・・実は何かの判定負けだったの?」


「少し混乱するのもわかるけど、落ち着いて。

 決勝戦の判定はリンキーの勝ちで間違いないわ」


「だったらどうして?」


「それは私がいま魔法学園の教師をしているからだわ」


「お母さんが教師?宮廷魔術師じゃなかったの?」


「宮廷魔術師で間違いないわ。順を追って説明するわね」


 そしてカリンさんの口から宮廷魔術師のことや教師の事、リンキーが魔法学園に通えない理由が話された。


「まずは私が教師になった経緯だけど、2年ほど前に魔法学園の教師になるかどうかの打診があったの。

 魔法学園自体が国営であるため、必ず一学年に一人は宮廷魔術師を配置することが義務付けられてるのよ。それで私はあなたたちを一時期指導したこともあって受けてみることにしたのよ」


 なるほど、仕事内容が変わったからリンキーに会いに来ることがなかったのか。


「それがなんでオレが魔法学園に通えなくなることになるんだ?」


「それは魔法学園の決まりとして親族が教師をしている場合は入学できないという規則があるからなのよ。

 私はあなたが12歳になったらあなたはお父さんと商人になるための旅に出ると思っていたから何も気にすることなく、教師を受けたんだけどまさかこんなことになってるとは思わなくてね」


「でもそれだったらお母さんが教師をやめて、また宮廷魔術師に戻ればいいだけなんじゃないの?」


「それがね、できないのよ。

“宮廷魔術師から教師へ派遣された者は最低3年間は職務に就くこと。

 但し、公的な理由がある場合は例外とする。“

 という規則があるのよ。一応ね、魔法学園へは掛け合ってみたんだけど許可は下りなかったわ」


「そ、そうなのか・・・。

 じゃあ初戦が始まる前にご飯屋さんで会ったときに何で教えてくれなかったんだよ?」


「そ、それは・・・。私があなたたちが本気で戦う姿を見たかったからよ」


「・・・。」


 うわぁ、めちゃくちゃ公私混同してるなぁ。リンキーがちょっと引いてるよ。

 まあ僕はそのおかげでリンキーと戦えて楽しかったけど。


「それでね、あなたが通えなくなったから枠が一つ空いたの。

 その枠に2位だったクーフ君が繰り上げで入ることになったのよ」


「・・・っ!?え、え、僕が魔法学園に通えるの!?」


 思わず興奮して立ち上がってしまった。


「そうよ。私はね、今大会の主査でもあったからこうして伝えなくちゃいけなくてね。

 クーフ君、繰り上げ合格になるけど受けてくれるかしら?」


「・・・。」

 僕は受けるべきか少し悩んでリンキーの方をみた。


「クーフ、オレのことは気にするな。というかな、オレはクーフ以外の奴が通うほうが嫌だからな」


「ありがとう、リンキー。ではカリンさん、僕は繰り上げ合格で魔法学園に入学します!」


「ふぅー、よかったわ。

 今回のことで同僚からネチネチと文句を言われたのよね。“息子の意向を確認せずに教師の任を受けるやつがあるか”とか“分かった時点で息子に伝えてやれよ”とかね。

 でもこうして丸く収まったからよかったわ」


 これは丸く収まったのか。ただ強引に事を収束させただけなように思えるけど。


「あぁ、あとリンキーに伝え忘れていたけど、あなたのお父さんは魔法をバリバリ使えるから安心しなさい。

 商人の旅とは言ってもあの人の通るルートはかなり道のり険しいルートを行くから魔法学園に通うよりもかなり実践的で身に付くものも多いわよ」


「そ、そうなんだ。そういやお父さんとは7歳から会ってないから魔法がすごく使えるなんて知らなかったな」


「まあ王都で意味なく魔法をぶっ放したら捕まるからね。

 あと商人の技術もしっかり学びなさいよ」


「う、うん。頑張るよ。ところでオレはいつからお父さんに付いていくことになるんだ?」


「それはあなたが天啓の儀を受けてからね。あと3か月ほど先の話になるかしら?

 それまではこれまでと変わらない生活を送れるわよ」


「わかった」


「あとクーフ君もね、天啓の儀を受けてからの入学になるから同じくらいの時期になるわ。

 本当は入学時期前に魔法学園の教師が入学対象者を迎えに行くことになってるんだけど、リンキーも同じ時期に王都に来ることになるからあなたたち二人で来る?」


「えっと、それがいいなら当分はリンキーと会えなくなるからそうしたいです」


「わかったわ。学園にはそう伝えておくわ。リンキーもそれでいいわね?」


「うん?あぁ」


 こうして僕らの今後の人生が決まった。

 この後は料理を美味しく食べ、デザートが出てきた辺りからカリンさんのダメ出し説教モードになったけど、事前に反省会をしていた僕らは何とか乗り切った。


 そして翌日の夕食時にエルプーリさんに僕らはこのことを伝えた。

 エルプーリさんは驚きながらも僕たちのこれからの門出を祝ってくれた。

 


 入学試験も終わり、僕らは残り少ないいまの生活を存分に楽しんだ。

 互いに隠していた技術を見せ合ったり、エルプーリさんが実はオプション魔法を習得しており、その魔法を見せてもらったりと充実した生活を過ごしていた。

 そんな楽しい日々は時間が過ぎるのも早く、気付けば3か月が過ぎており、明日は天啓の儀を迎える日となっていた。


「リンキー、明日はとうとう天啓の儀でスキルを授かるね。僕はスキルを授かれないからスキルが何だったかあとで教えてよ?」


「あぁ、というか一緒に来いよ。どうせそのあと一緒に旅に出るんだし、神父さまへ挨拶するだろ?」


「あぁ、それもそうだね。あ、でも僕は朝早くに一度、家族が居る家に行ってくるよ」


「家に行っても大丈夫なのか?」


「うん!エルプーリさんから聞いた話では“家を出る者は家族に挨拶をする”って決まりがこの村にはあるから大丈夫なんだって。それにエルプーリさんから父さんへそのことは伝えてくれてるみたい」


「そっか。ならそれが終わったらオレの小屋まで来てくれ。

 それまでにオレも叔母さん夫婦に挨拶を済ませておくから」


「うん!わかった」


 そして翌日に僕は父さん以外の家族と2年ぶりに再会するのであった。



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