第54話 第2ステージ 2日目
第2ステージ2日目の朝。
「うーん、よく寝た!」
僕は昨日の戦いの疲れもなく、すっきりとして起きることができた。
「さてと、今日は第四戦目と第五戦目か。気を引き締めていこう」
今日も会場へはリンキーとエルプーリさんと一緒に向かっていた。
「なあ、クーフ。そろそろ手の内がバレてきて対策されてるんじゃないか?」
「うーん、まあでも大丈夫でしょ!圧力制御魔法を使ってないし」
「まあそうなんだけどな。戦い方っていうのはそれぞれ個性が出るもんだからなあ」
「そんなに心配しなくても大丈夫だって!僕もそれなりに作戦立ててきたし」
「作戦ってなんだ?」
「それは試合開始と同時に先手必勝で仕掛けるよ」
「・・・それを作戦と?」
「うん!僕は昨日の戦いはすべて様子をうかがってからだったから今日の一戦目に関してはふいを突けると思うんだよね」
「なるほどな。確かにそう言われてみればいけそうな感じがするな。
でも油断だけはするなよ?クーフはすぐに調子に乗ってピンチになるんだから」
「ははっ、ピンチはチャンスっていうからピンチでもいいんだよ」
「そういうところを言ってるんだけどな。
まあ応援してるから頑張ってくれよ!」
「うん!ありがとう」
「私も応援してるから頑張っておくれ」
「ありがとう、エルプーリさん」
会場の入口で二人と別れた僕は控室で準備運動をしていた。
すると扉がノックされ、昨日と同じくカリンさんが入ってきた。
「クーフ君。相変わらず、昨日君は相手を煽っていたね。
まあそれも作戦のうちならもう私からは何も言わないよ。今日も全力を出して頑張ってきてくれ」
「はい!ありがとうございます!
カリンさんから学んだことを精一杯活かしてきます!」
「ふっ、私はそんなに多くは教えられなかったが応援してるよ。
行ってきな!」
「はい!行ってきます!」
それから僕はゲート近くで待機していると会場が騒がしくなってくるのを感じた。
『それでは皆様、2日目の男子第四戦目を行います。
まずは東側ゲートよりここまで3連勝と破竹の勢いで勝ち進んできたクーフ君の入場です。
クーフ君、入場をお願いします!』
「よしっ!いくか!」
僕は気合いを入れなおして入場すると会場から割れんばかりの声援が轟いた。
「頑張れよー!平民小僧!応援してるからな!」
「キャー!クーフ君、頑張ってー!」
「小僧!今日も泥遊び楽しみにしてるぞー」
一部野次のような声援も混じっていたが、どうやら僕のファンクラブができそうな雰囲気もあるようだ。そんな黄色い声援を受けながら僕はお辞儀をしてから観客席へ手を振ってこたえた。
そして今日の戦う相手の紹介が始まった。
『それでは西側ゲートより登場するのはオシアン君です。それではオシアン君、入場をお願いします』
そうして現れたのは全身甲冑を身に着け、剣と盾を手にした大柄な少年が現れた。
「あれって・・・なんだ?本当に魔法使いを目指してる、の?」
僕は一瞬、混乱しかけたが騎士相手なら魔法で遠・中距離で攻撃できるからむしろラッキーと考えた。
『では両者中央へ。
―――それでは試合始め!』
僕は先手必勝とばかりに左手で風球を遅めの速度で相手へ放ち、右手で小石混じりの土を発動させ風球へと投げつけた。
そう、これは初めてカリンさんと狩りにいったときにアドバイスしてもらった技だ。
風球により高速加速した小石がオシアン君へ直撃するのを確信した僕だったのだが。
「ふん、この程度の小細工は私には何てことはない」
オシアン君はそう言いながら剣捌きによりすべての小石を叩き落とした。
盾もあるのに剣捌きで防いだということはかなり剣術に長ける人物のようだ。
「てかなんで?そんな重そうな甲冑をきているのに素早く動けるの?」
「ふっ、貴様はあまり賢くないようだな」
「うっ・・・。」
どうして僕はいつも賢くない認定されるのだろうか。
「貴様はこの戦いが魔法学園の入学試験ということを忘れているのか?
つまりこの甲冑は魔道具であるということだ。」
「・・・また、魔道具か。」
「当たり前だろう、魔術師として魔道具を使いこなすのは当然の嗜みだ。
むしろ何故、貴様は魔道具を使用していないのか、そちらの方が不思議だ」
「くっ・・・、その甲冑には高速で動ける性能があるのか」
「それは違うな、この甲冑は耐久性が高いまま重量をほとんど感じない特性があるのだよ」
「で、でもさっきの剣捌きは?」
「あれは鍛錬で得たものだ。
私が目指すのは魔導騎士。つまり魔法を補助的に利用し、剣術などの体術系統の力を最大限に引き出すことを目的としている」
「・・・じゃあ甲冑の魔道具は金属性になるのか。ならこれでどうだ!」
僕は火球魔法を乱れ撃ちした。
僕の狙いは甲冑を熱して相手を火傷によるダメージでダウンさせようとした。
「貴様はやはり、賢くないようだ。
こんなもの、―――ふんっ、ふんっ、ふんっ!」
オシアン君の剣捌きだけで火球魔法がかき消されてしまった。
どうやら僕の先手必勝作戦は早くも失敗に終わったようだ。
「―――なんだ?もう攻撃は終わりか?ならこちらから行くぞ」
オシアン君は甲冑を着ていなくても十分すぎるスピードで僕の方へ走ってきた。
僕はすかさず地面に手をつき、泥魔法を発動させた。
だが、オシアン君は少しスピードが落ちたくらいでなぜか泥の上を走ってきていた。
「えっ、なんで沈まないの!?」
「こんなもの沈む前に走り切ればいいだけだ」
僕はオシアン君の脳筋思考に恐怖を感じ、とりあえずその場から離れるため、小屋のある方へ走って行った。
走りながらも近距離戦になれば僕が不利になるため、何とか身を隠しながら対策を考えなければならないと思い、そのまま小屋へ入ることにした。
「ふっ、小屋に入るとは愚かな。袋のねずみとはまさしくこのような状況のことを言うのだな。
この小屋ごとぶった斬ってやる」
すると数秒後、オシアン君は袈裟切りのようにして本当に小屋をぶった斬ってしまった。
僕はオシアン君が何かに魔力を込めたことを感知魔法で気付けたので伏せてなんとか回避することができた。
姿が見えたときに確認できたのだが、どうやらオシアン君は剣に風魔法を纏わせて強化していたみたいだ。
「ほう、伏せて避けていたか。
ん?小屋の中には武器が置かれていたのか」
そう、この小屋にはありとあらゆる武器が置かれていたのである。
僕も小屋に入ったときはびっくりしたけど、その驚きも落ち着かないまますぐさま伏せていたのだ。
僕は近くにあった武器を一通り握ってから使えそうだと思った盾を拾い上げ、オシアン君の次の攻撃から身を守ろうと構えていた。
「ん?貴様は盾を使ったことがないだろう?構えをみればわかる」
「当たり前だ!僕は魔法特化型の魔術師を目指してるんだ!」
本当は武器に触れる機会がなかっただけだけど。
「だから“弱いんだ”。魔法は補助的に使用するのがもっとも効率がいいんだよ。
せっかくだから証明してやろう。私が盾の使い方ってものをね」
オシアン君は剣を背中の鞘へと戻した。それから盾を構えながら僕の方へ突進してきた。
僕は衝撃を和らげるべく土クッション魔法を足元に発動していたが、盾と盾がぶつかった瞬間に地面と平行に30メートルほど吹っ飛ばされてしまった。
だが地面とぶつかる前にもう一度土クッション魔法を発動させたことでダメージを軽減することができた。
「はぁ、はぁ、ヤバかった。なんであんなに強い衝撃だったんだ?」
まるで軽トラが突っ込んできたかのような衝撃だった。
「これが魔法を補助的に使う効果だ。ぶつかる瞬間、風魔法で甲冑ごと加速させ、盾にはさらに重量感が増すよう瞬間的に金属性魔法を掛けたのさ。
どうだ?これで効率的に魔法を使用するということがわかっただろ?」
「・・・うん、よーくわかったよ。魔法を笑う者は魔法に泣かされるってね」
「ん?何言ってんだ。まあいい、貴様はここで終わりだ!」
オシアン君は再度走り出して僕へ盾での体当たりを仕掛けようとした。
「魔法使うには魔法の特性をよく理解しなければならない」
「ん?何て言ったんだ?。
・・・っ!?これはどういうことだ!?」
小屋にあった武器がオシアン君の甲冑に引き寄せられるかのようにぶつかっていた。
僕は先ほど盾を手に取る前にすべての武器に触れ、魔磁力を付与しオプション効果により、発動時間を遅らせていたのだ。
時間を遅らせたのは武器がオシアン君に引き寄せられるときに僕が巻き込まれるを防ぐためだ。まあ突進によって盾ごと吹っ飛ばされたのは予想外だったけど。
「オシアン君、君は魔法をもっと理解しなくちゃいけなかった。
魔法を補助的にと下に見ていたのが仇となったみたいだね」
「こ、こんなもの引きはがして、って引きはがせない!?」
「まあ磁石効果を発動させてるからね」
「くそっ!だったらこのまま動けばいいだけだ!」
「それも大量の武器が重くてできな・・・いはずなんだけど、何で動けるの!?」
「こ、この程度、日ごろの鍛錬と風魔法で動きを補助すれば動けないことないんだよ」
「・・・うん。ヤバイ、逃げよう!」
僕は迷わず雑木林の方へ逃げた。
さすがに武器の重量があるせいかオシアン君のスピードは落ちていたがあのまま体当たりされたら一発KOで僕の負けになってしまう。
「き、貴様!逃げて恥ずかしくないのか!」
僕は雑木林に入ったところで木に手を掛けて立ち止まり振り返った。
「うん?誰が逃げたって?」
「やっと正々堂々と戦う気になったか。それにしてもこんな安い挑発に乗るとは貴様はやはり賢くないようだな」
オシアン君はそのままの勢いで僕に体当たりをしようとしてきた。
僕は思わずニヤリとしてさらに雑木林の奥へ逃げた。
「ま、また逃げやがって!
っ!?なんだ?体が動かしにくい。
・・・いや、木に引き、寄せ、られる、う、うわぁー!」
オシアン君はそのまま木に張り付いた状態で動けなくなった。
実はさきほど挑発に乗るふりをして僕は木に魔磁力を発動させていたのだ。
魔磁力は同属性に限らず、何を引き付けるかを指定するので金属性を引き付けるよう魔法を掛けていたのだ。ちなみに僕は平民服装なので金属類はほとんど身についていないから影響は受けない。
「どう?全く動けないでしょ?これで時間が経てば僕の勝ちだね」
「き、貴様、正々堂々と戦え!騎士道精神に反するだろ」
「僕は騎士でも何でもないので関係ないんだよね」
「う、うぅ・・・。」
オシアン君はそのままうなだれた。
◆
『オシアン君は動きを封じられた状態で一定時間が過ぎたため、勝者クーフ君!』
「「「うぉーーー!!」」」
「ふぅー、よかった」
『それでは第五戦目は30分後になりますので皆さましばしお待ちを』
僕はもう慣れたように医務室へ向かい、治癒と回復の処置を受けた。
それからゲートに向かい、第5戦目に向けて気持ちを作っていた。
「すぅー、はぁーー、すぅー、はぁーー、すぅー、はぁーーー」
『ここで皆様にお知らせがございます。次の対戦者であるマーク君が棄権を申し出たため、第五戦目は不戦勝でクーフ君の勝利となることを連絡いたします。
なお、明日は決勝となりますので皆さま、お楽しみにー!』
僕は不戦勝となったことに少し拍子抜けしながらも会場を出るとリンキーとエルプーリさんが迎えに来てくれていた。
「クーフ、やったな!さっきの戦いはかなりしびれたぜ!
魔磁力の使い方、なかなかおもしろかった!」
「ありがとう、相手の人強かったよね?危うく負けるところだったよ」
「何言ってるんだ?クーフはまだまだ余裕あっただろ?オレにはわかるぜ。
それに明日はオレと決勝だな!楽しみにしてるぜ」
「うん!僕も楽しみにしてる。それよりなんで第五戦目のマーク君は棄権したのかな?」
「あー、それはだな。マークが第1ステージをクリアできたのはペアの女の子のチカラのおかげなんだ。」
「何で知ってるの?」
「ほら、オレは一人でゴールして暇だったろ?だからゴールする人を待ってて、それでゴールしたてのマークを捕まえて色々と話をしていたんだよ」
「そうだったんだ。でも棄権しなくても戦ってみればよかったんだけどね」
「いや、さすがにあの甲冑野郎が勝ちそうな雰囲気で登場したのにそれに勝った奴を見たらよっぽどの実力がない限りは怖気ついてしまうぜ?」
「へぇ!ってことはリンキーも明日は棄権しちゃうのかぁー、残念だなぁ」
「んなわけないだろ!甲冑野郎相手でもオレだったら圧勝だわ!」
「ははっ、そういうと思ったよ。リンキーだったら高密度の火球魔法で一撃だったんだろうなって思いながら戦っていたよ」
「まあそうだろうな、魔法は得て不得手で相性があるからな。
ってそんなこと考えながら戦っていたとか余裕だな。
明日はオレも存分に楽しませてもらうぜ!」
「僕も楽しみながら全力で戦うからね!」
「二人とも明日が楽しみだね。クーフ君、決勝進出おめでとう!」
「ありがとう!エルプーリさん」
「それにこの二日間の戦いでかなり成長しているようだね。
戦いながら作戦をたて、うまく実行に移すというのは簡単なようでそうでもないからね。
特に少しでもパニックに陥るとすぐに落ち着くことは困難だからね。そういった意味でも素晴らしかったよ。
二人とも明日、応援しているから全力で楽しんでおくれ」
「「はい!」」
こうして僕らは明日、決勝を戦うことになった。
この戦いで今後の人生が大きく左右されることはわかっていたが、それ以上にリンキーと勝負ができることのワクワク感が勝っていた。
そして翌日、僕たちの人生が決まるのである。




