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第48話 入学試験2日目



 静かな森の中。

 朝を告げる小鳥のさえずりが聞こえ、僕は目を覚ました。

 そしていまが入学試験中であることを思い出す。

 

「うん、よく眠れた」


 僕は小さく呟いた。


「おっはよー!!」


 突然、上の方から発せられた大きな挨拶。

木の中だからすっごく響きわたる。

 僕の静かな朝は一瞬で終わりを迎えた。


「おはよう、ミールさん」


「うん!おはよう!クーフ君」


「朝から元気だね」


「そらそうでしょ!こんな風にお外でお泊りなんてしたことないもの。

 ワクワクしかないよ」


「そう、それはよかったね」


「うん、ありがとう!それよりクーフ君のターゲットの動物か魔物を探しに行かないといけないね」


「そうだった。意外と野生動物と低級魔物って見つからないものなんだね」


「うーん、本来はここまで来たらたくさんいるはずなんだけど。あ、お父様から聞いた話ではね」


「そうなんだ。じゃあもしかしたら試験で力のないペアが危険にさらされないように間引いたりしてるのかな?」


「それは考えられるわね。だとしたら早く見つけないと狩ることができないかもしれないわよ?」


「え、どうして?」


「だって、森の中心に向かえば向かうほど、野生動物や魔物が増えるからその分間引いてるんじゃないかしら?」


「えー、それって入学試験の意味あるの?強さを見るためには間引く必要ないと思うけど」


「そうね、私もお父様から聞いただけだから確かかどうかはわからないけど、魔法学園へは力だけではなく、基本的な知識や臨機応変さを重視することもあるみたいなの」


「それがたまたま今回の試験だったってこと?」


「その可能性はあるわね」


「ということは序盤で狩りをしておかないと受からないかもってこと?」


「かもしれないわね。でもそうではないかもしれないわよ?

 まあ考えてもわからないので、このままさらに中心に向かいましょ」


「う、うん。そうだね」


 こうして僕らはさらに森の中心へと向かった。

 一時間ほど歩いたところで森の中とは思えないほど、視界が開けた。

 そして目の前には直径10メートルほどの大木とその周りを円状に敷き詰められた石畳が現れたのだ。


「ミールさん、こ、ここってもしかして?」


「え、えぇ。どうやら第1ステージのゴールのようね」


「なんだかすっごくキレイな景色で見惚れてしまうね」


「そうね、まさに圧巻。といった感じよね」


「うん!でも大木があるだけで他に誰も見かけないけど、もしかして僕たちが一番乗り?」


「・・・かもしれないわね」


「よしっ、ならあとは僕が狩りをすればクリアだね!」


「そうね。少し周辺を散策する?」


「いや、精度は良くないけど、僕は感知魔法が使えるから近くの木に登って周辺を探ってみるよ」


「感知魔法使えるの!?」


「あ、う、うん。そんなに珍しいの?」


「感知魔法を使うには無属性魔法の訓練をかなりしないと出来ないのよ?」


「あぁ、僕は魔法の訓練ばかりしていたから」


「本当に魔法の訓練ばかりしていたのね。なら知識が乏しいことも納得だわ」


「は、ははっ」


 あれ?いまのは褒められた?ディスられた?

 いや、気にしないでおこう。それよりも獲物だ!


「あれ?あっちから誰か来るわよ」


 大木を挟んで逆の方向から二人組が来るのが見えた。


「ん?え、あれはもしかしてリンキー?」


「知り合いなの?」


「うん、たぶんあの雰囲気は僕の友達のリンキーだと思うよ」


「ふーん、そうなんだ」


「あっちのペアの方に行ってみよ」


「え、えぇ、わかったわ」


 僕らは大木へ近づいていたもう一組のペアの方へ向かって行った。


「リンキー!リンキー!」


「ん?クーフか!もうゴールに着いていたんだな。

 オレが一番乗りだと思ったんだけどな。」


「ははっ、まあ僕だけだと来れなかったけど。

 あ、紹介するね。こちらが僕のペアのミールさんですごく知識があって僕は助けられたんだ。

―――それとこっちが僕の友達のリンキーね」


「ど、どうもですわ」


「こんにちは、リンキーです。

 じゃあオレの方も紹介すると、こちらがオレのペアのサーワちゃんで、こっちが友達のクーフだ」


「こんにちは、クーフです。よろしくね」


「サーワです。こちらこそよろしくね!」


「なあ、クーフ。サーワちゃんはめちゃくちゃ可愛いだろ?これで魔法の腕もあるんだぜ?すごくないか?」


「そ、そうだね!サーワさんはすごく可愛らしい女性だよ」

「・・・」


「そうだろ?オレにとって最高なパートナーだよ!

 それよりクーフはゴールした後なのか?」


「いや、僕はまだ獲物を狩れていないんだよ。というより全然遭遇しなくて」


「そうなのか?こっちは熊やイノシシ、それにスライムやゴブリンを倒してばかりで疲れたぞ?」


「えー!?なんで!?ルートが悪かっただけなのかな?」


「そうなんじゃないか?ちなみに全部オレが倒したんだけどな。さすがに討伐証明は荷物になるからそれぞれ一つずつしか持ってないからクーフに譲ることはできないけどな」


「いらないよ!僕は自分の力で試験を突破するんだから」


「ははっ、そうか。じゃあ頑張ってくれ!オレ達は先に第1ステージをクリアすることにするよ」


「うぅ、悔しいけど、僕はまだ条件達成してないからなぁ」


「じゃあオレがゴールするところでも見ててくれ」


「うぅ、それも悔しいけど見送ることにするよ」



「確かここで言えば良いんだったな。じゃあサーワちゃん一緒に言おうか」


「は、はい!」


「「無事到着しました」」


 リンキーたちが報告をすると、突然目の前に神父さまが現れた。


「2日目のこの時間に到着とはなかなか大したもんだな。

 うむ。リンキーよ、合格だ!それからサーワよ、君は失格だ!」


「え、どうして私が失格なの?」


「ちゃんと告げただろう?一体討伐すること、一人一体とな。

 これは自らの手で討伐することが条件だ。それが達成できぬままゴール宣言をしたお主は失格ということだ。」


「そ、そんなぁ」


「お、裏ルールか。サーワちゃん、なんだかごめんね。

 でもまあオレは合格か、ラッキー!」


「そ、そんなぁ」


「じゃあクーフ、あとは頑張ってくれ!」


「リンキー、気を付けないとその内刺されちゃうよ?」


「え、なにがだ?」


「いや、いいよ。まあ僕は元から自力で頑張るつもりだったから、早く獲物見つけてゴールするよ」


「おう!じゃあな」


 それから僕とミールさんはリンキーたちがやってきた方へ獲物を探しに行くことにした。

 大木の姿も見えなくなった頃、これまで静かにしていたミールさんが話しかけてきた。


「クーフ君」


「ん?どうしたの?」


「クーフ君の浮気者!」


「ん?どういうこと?」


「クーフ君、さっきのサーワさんのこと可愛いって目移りしてたよね?」


「あれは目移りというか、売り言葉に買い言葉的なやりとりというか」


「言い訳しないで!浮気よ、浮気!」


「なんで浮気になるの?」


「だってクーフ君は私に“互いにフォローし合おう”って言ったよね?」


「あ、うん。確かそんなようなことは言った気がするけど」


「これってプロポーズだよね?これから一緒に生きていこうってことだよね?

 それに昨晩は“同じ部屋で寝た”んだし」


「え、いや、それはちょっと違う気が・・・。」


「ひどい!私のこと弄んだのね!

 だったら私にも考えがあるわ!こうよ!」


「うわぁー!!」


 突然、僕の足首に蔓が巻き付き僕はそのまま近くの木のはるか上方に逆さに吊るされてしまった。


「これでしばらく反省して!」


「えぇ・・・・。」


「私はクーフ君が反省してちゃんと私に愛の言葉を言ってくれるまでは魔法を解除しないから」


 あぁ、何か知らないうちに地雷を踏んじゃったみたいだ。

 でもこのままミールさんの機嫌を損ねたままだと僕はペアが解消されてしまってゴールできないしなぁ。

だからと言って変に嘘の愛の言葉を言うとあとでどうなるかわからないのも恐いしなぁ。確かミールさんはこの町で一番権力のある貴族の家だと言っていたし。

うーん、困ったなぁ。とりあえず謝って様子でも見るか。


「ミールさん、ごめん。僕の言動が思わせぶりになってしまって」


「ふん!そんな言葉が欲しいわけではないのよ!」


 あ、失敗した。しかもこれは長期戦になるぞ。その間に動物や魔物に襲われなきゃいいけど。

でも不思議と感知魔法に全然引っかからないんだよね。なんでだろう?僕かミールさんは動物や魔物除けの何かがあるんだろうか。


 そして宙づりにされたまま時間が経ち、とうとう日が暮れ始めた。


「ねぇ、ミールさん。さすがに夜は動物や魔物が襲ってくるかもしれないから危ないよ。僕を下ろして。それで昨日みたいに仮宿を作るから」


「ふん、この数時間ずっと何も来てないもの。夜の間も大丈夫よ!」


「えぇ・・・。」


 そしてそのまま日が落ちた。が、この日は月明りで周りがよく照らされており見通しはよかった。

ミールさんはそのまま近くの木にもたれかかり、寝始めた。


「うわぁ、すごい度胸だな。仕方ない、ここは僕が寝ずの番をして、もし何かが襲ってくるようだったらこの蔓を魔法で断ち切ってそのまま撃退するか。」




 それから何も起きないまま朝を迎えた。

 いや、おかしいでしょ!このままだったらどっちにしろ僕は獲物を狩れずゴールできないよ。

 というか寝ずの番で宙づりだったから、疲労感がとてつもなくある。

 朝の光がミールさんの顔に当たって、彼女は目を覚ました。


「うぅん、あーよく寝たわ」


「おはよう、ミールさん」


「・・・ふん。」


「ねぇ、今日が試験の期限最終日だよ?もう僕を下ろしてくれない?それで狩りに行きたいんだ」


「・・・ふん。もういいわ。」


「ありがとう!」


「ん?何を勘違いしてるの?もうあなたなんてどうでもいいって言ったのよ」


「どういうこと?」


「もう私は一人でゴールすることにしたのよ。あなたはそのまま吊るされて失格になればいいのよ」


「え、でもペアでないとゴールできないんじゃ・・・。」


「ふんっ、あなたって本当にバカなのね。あなたのお友達がゴールした時のこと覚えていないの?

 ペアでゴールすることが条件ではないのよ。もしそうだとしたら、あなたのお友達も条件未達成であの女と失格になっていたわ」


「でもあれって、一人一体の討伐を守らなかったからではないの?」


「あなたちゃんと教会前での神父さまの言葉を聞いていたの?神父さまはこうおっしゃったわ。

“この試験は男女ペアで始めること”

 つまり始めるときだけペアでないといけないけど、“ゴールするときはペアでないといけない”とは言ってないのよ。」


「確かに、言われてみれば・・・。」


「だからそういうことよ。さようなら」


「え、え、このままなの?」


「ふんっ」


 そして僕は一人森の中に取り残されてしまった。

 第1ステージの終了まであと10時間ほど。それまでに僕は全然遭遇しない獲物を探してゴールしなくちゃいけない。この疲労困憊の体で。

 これからどうしようか、と考えていると近くに複数の何かの気配を感じ取った。



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