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第46話 わたしはミール

今回はミールさん視点でのお話になります。



 私の名前はミール。

 この町で一番偉い貴族であり、将来を期待された後継者。

 私が10歳を迎えた頃から、他の町の貴族や商人の跡取りが私と婚姻関係を結ぼうと訪ねてくることが多くなった。

 その頃の私はゆるふわパーマヘアでとても女の子らしい見た目であり、自分でもなかなかイケてると思っていた。

 なので、最初のころは私も異性から好意を持たれていると思い、舞い上がっていた時期もあったが、世間を知るにつれ“私に好意がある”というよりも“私の家に興味がある”ことに気づいた。

 それでも同世代の男の子がやってきては私の気を引こうと色々としていたんだけど、どいつもこいつもガキっぽさが出ていてうんざりだった。

 まあ王都の貴族ではなく、町の貴族に取り入ろうとするくらいだから、たかが知れているのも仕方がなかったのだけど。


 そんなある日、訪ねて来た貴族の跡取り息子は特にひどかった。

 「俺は魔法が得意だ。これを見たら俺に惚れるぜ」と下卑た笑みを浮かべながら、周りの状況見ずに風魔法を放ち、砂埃を舞い上がらせ私のお洋服を汚したり、「火魔法も得意だ」と言い、危うく町が大火事になりそうだったりと私を喜ばそうとするのではなく、ただただ自分の力を誇示し、自慢したいだけの男だった。

 また別の日に訪ねてきた男は、「クールな俺、カッコいいだろ」と言わんばかりに、髪ばかり触ってはこちらに微笑みかけ、口数が少なく会話も弾まなかったこともあった。

 確かに顔やスタイルは良かったけど、自分に酔ってるだけの人に興味は湧かなかった。


 そんなくだらない日々が1年ほど経ったころ、お父様に呼び出された私は書斎へ向かった。


「ミール、お前もわかっているとは思うが、我が家は魔法を得意としている一族である。」


「はい、お父様」


「それでだな、数か月後に行われる魔法学園への入学試験にお前も参加し、是非とも合格してほしいと思っている」


「はい、お父様。私もそのつもりで日頃から魔法の訓練に励んでおります」


「うむ。わかっているならよい。だがな、もし入学試験に落ちたとなるとこの家の名誉に傷がつく。

そうなった場合、お前はこの家から出て行ってもらう」


「・・・はい」


「まあ出ていくと言ってもな、これまでに訪ねてきた連中の誰かのところへ嫁ぐ形になる。

どこに行くかは選んでよいから、安心しなさい」


「・・・はい」


「では入学できることを祈っておる」


「ありがとうございます。お父様」




 そうしてやってきた入学試験当日。

私はどうしても入学試験に合格しなくてはならない理由ができ、また気合を入れるためにも髪をばっさりと切り、動きやすさ重視でこの入学試験に臨んだ。

 だが、入学試験早々に男女ペアにならなくてはいけないことに動揺した。

 なぜなら、わざわざ女らしさを無くしてまでこの試験に挑んだのにいきなり女らしさが必要な課題にぶつかったからだ。

 一人すごくカッコいい人が居たけれど、その人の周りにはたくさんの女の子が群がっているのを見たときに何だかカッコいいだけで実力が無さそうに思えたので、違う人を探すことにした。

 でもそこで気づいた。私が自分から異性に話しかけたことがないことに。

 絶対に合格しなければならない状況と異性への話しかけ方がわからないということも相まって、パニックになった私は周りをきょろきょろとみることしかできなかった。


 すると、明らかに平民の格好をしている一人の男の子が目に入った。

 私は正直「あぁ、あの子は誰ともペアを組むことが出来ずに落ちるわね」と思っていた。

 だけど、その子はすぐ近くにいた複数の男の子たちの足元や荷物に泥魔法や水魔法を使って妨害し、自分がペアを組める確率をあげている姿を見てすごく驚いた。

 魔法の扱う速度や有効性についてすごく合理的だったからだ。

 驚きのあまり、その場で固まっていた私の方にその子は歩いてきて声を掛けてきた。


「おはよう、僕はクーフって言うんだ。よかったら僕とペアになってくれない?」


「・・・あなた、何で、私に、声、掛けた、の?」


「僕はあっちで魔法の見せ合い大会しているような人は苦手なんだ。

 君は少し大人しそうな感じがして、気が合うかなって思ってね。」



 私はどうしても入学試験に合格がしたかったので、その子の魔法センスに掛けてペアとなることを承諾した。

 その他にも“私自身”を見て発言してくれたこともすごく好印象だった。

 ただ緊張しすぎて私はいつものように話すことが出来なかったけど、それについても馬鹿にしたり、私のことを無碍に扱ったりすることがなくてすごく安心した。

 その中でも次の会話は私にとってすごく新鮮で嬉しい出来事となった。


「君の名前を聞いてもいいかな?」


「わ、わたし、ミール、です」


「ミールさんね!じゃあとりあえず狩りをしに行こう。その方がお互いの実力が分かるだろうしね。」


 私の名前を聞いてくれて、すぐに呼んでくれたことが嬉しかった。

 しかも、ちゃんと私のことを知ろうとしてくれていることもすごく嬉しかった。

 そのあとも私の得意な魔法を聞いてくれたり、緊張を解す方法を教えてくれたりと私が抱えていた不安を次々に取り除いてくれた。

 それから私たちは森に入っていったのだけど、少し不安になる出来事があった。


「うわっ、何あれ?もしかしてスライム?」


「ええ、スライムね。クーフ君はスライム見たことないの?」


「う、うん。僕、魔物自体見るのが初めてだよ」


 魔物を見たことがない発言に私はすごく不安になった。

 なぜならこの森には魔物が出ることは常識だし、「入学試験を受けるなら魔物討伐は経験があるのが普通だ」とお父様からも言われていたからだ。

 まあでもクーフ君はすぐにスライムを倒していたから不安はすぐに解消されたけどね。

 しかもスライムの回収ができない状況はちょっとお茶目な部分があって“カワイイ”って思ってしまったわ。

 それで私もクーフ君に私の良いところを見てもらおうと、そのあとの熊討伐は張り切ったわ。

熊を捕らえたときと討伐したときにクーフ君が私の方をじっと見つめてくれていたから、きっとクーフ君は私に好意があると思うわ。


 まだ試験が始まったばかりだけど、この第1ステージはクーフ君と一緒に期限内に必ず条件をクリアするわ。

 そうすれば私たちは相思相愛だし、大きな壁を乗り越えたことできっと結ばれるに違いないものね。

 私にとっては今回の試験は恋の試験でもあるので、これからも精一杯頑張るわ。




次回はまた通常通りに戻ります。

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