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第43話 入学試験 0日目



 魔法学園の話を聞いてから6か月が経った。

とうとう明後日からは入学試験第1ステージが始まる。

 この6か月の間、僕たちはあれから何度も山頂へ行き訓練をしていた。

 実は5m級の虎を討伐後は、数週間単位で異なる山の主が台頭しており、その度に僕らはコンビネーション技を使いながら、次々と新たな山の主を討伐してきた。

 時には熊であったり、時にはゴリラだったり、はたまたある時には鷹であったりと、何故か山の主になる動物は皆、巨大化しており5m級の怪物になっていたのだ。

 僕とリンキーの間ではこの現象を村の七不思議の一つとして、昼食時の話のネタとして盛り上がっていた。他の6つの不思議については話すと長くので割愛するが、一つは栄養価満点になる魔道具じょうろも入っている。

 まあ僕らにとって数少ない娯楽のネタだということだ。

 

 明後日から始まる入学試験について、夕方にエルプーリさんから詳細の話をすると聞いていた僕らは黒板のある部屋に来ていた。



「やあ、待たせてすまないね。

 では早速だが、入学試験についての話をするよ」


「「よろしくお願いします」」


「昨日の夕方にね、事前に私から申し込みをしておいた入学試験の案内が届いてね。

 それで内容を確認すると、明後日の試験会場は2つほど山を越えた隣町の森の中で行うことが記載されていた。

 なので明日、私と一緒にそこへ向かってもらうよ。」


「「はい!」」


「リンキー君は居候先のご夫婦には先ほど私の方から適当な理由を付けて話を通しておいたから数日は帰らなくても問題ないよ」


「神父さま、ありがとうございます。」


「うむ。それで入学試験を行うにあたって必要なものだが、第1ステージでは数日分の着替えと食料が必要とあったので、準備できるかな?」


「エルプーリさん、2つ質問してもいい?」


「あぁ、何かね?」


「数日分ってことは、第1ステージは1日では終わらないってこと?

それと食料は森の中でも調達できるの?」


「そうだね、詳細は入学試験当日に発表されるんだけど、過去の傾向から考えると大体3日前後のルートとなることが多い。

 ただ、期限が3日だとしても2日でクリアする人も居たりするので、そこは実力次第で食料の持参量が変わるんだ。

それと森の中で調達できるかどうかについては基本的に野生動物や低級魔物が生息している箇所が選ばれる為、可能だよ」


「そうなんだ、ありがとう。

 あと低級魔物って何なの?」


「あぁ、クーフ君は魔物のことは知らなかったね。

 低級魔物っていうのはスライムやゴブリンといった魔物のことになるんだけど、口で言うより絵で見てもらった方が良さそうだから、黒板に描くよ」


 エルプーリさんは黒板にスライムとゴブリンの絵を描いてくれた。

前世の僕の認識通りのものであったので、少しホッとした。

 ちなみに絵は“写真か”っていうくらいに繊細なタッチで描かれており、恐らく何らかの魔法を使っていると思われた。


「・・・っと。絵はこんな感じだね。

 スライムは雑食で何でも食べてくれるので、ごみ処理としても利用する魔物だよ。ただ荷物をその辺りに置いておくと、スライムが知らない間に食べてなくなるから注意が必要だよ。」


 なんだ、その置き引き的な行為は。

まあとにかく前世で治安の良くない国に行った時のような心構えで居れば大丈夫そうだね。


「はい、気を付けるようにします」


「それからゴブリンは同族以外を見つけると何も考えずに襲ってくるから、見つけた場合は避けるか、戦闘して倒すかのどちらかだね。

 集団で行動する場合が多いから数が多すぎる場合は要注意だよ。」


「そうなんだ。それも気を付けるようにします。

 それとスライムとゴブリンの強さってどれくらいなの?」


「そうだね、スライムは物理耐性が高いが、中級魔法攻撃で倒すことができるよ。強さのレベルでいうとイノシシくらいを魔法で倒せたら十分に問題ないよ。

 ゴブリンについては物理・魔法共に効くが個体差がかなりあるので相手の体格を見て判断するしかないね。7歳の子供程度の大きさならイノシシ程度、12歳くらいなら熊程度という感じだね。

 ただ集団で襲われると厄介だからその辺りは十分に注意しなくちゃいけないよ。

 あぁ、あとこれらの魔物は食べられないからね。」


「はい、わかりました。

 あ、リンキーは低級魔物と戦ったことあるの?」


「ないよ。ただ本でその存在は勉強したから知っているって程度だな。」


「そっか。じゃあお互いに十分に注意しないといけないね」


「あぁ。」


「では二人とも最低限の着替えと食料の準備は頼んだよ。」


「「はい!」」


 そのあと教会の裏手でリンキーから圧力制御魔法での洗濯方法を聞かれたので、僕はレクチャーをした。

 僕が「着替えは1着分だけであとは洗濯すればいいや」って独り言をリンキーは聞き取り、「洗濯魔法を教えてくれ」と頼まれたのだ。

 他に食料は念のため、芋を3つ程度持参し、残りは現地調達とすることにした。



 翌朝、僕とリンキーは教会に来ていた。


「おはよう!クーフ君、リンキー君。」


「「おはようございます!」」


「じゃあ早速だけど、出発しようか」


「「はい!」


 こうして僕らは村を出発した。

 僕はこの世界に転生して、初めて他の地域へ行けることにワクワクしていた、のだけど。

 出発をしてからかれこれ2時間ほど僕とリンキーは走り続けていた。

なぜならエルプーリさんは馬に騎乗して移動しており、僕らはそれに遅れないようにするためであった。

 ワクワク感なんてとうに無くなっており、いつになったら休憩となるのかだけが気になりながら走り続けていた。

 そうして2時間ほどで馬の休息のために休むことになったのだ。


「二人ともすまないね。馬を用意していたけど、二人が乗れないことをすっかり失念していたよ。」


「はぁ、はぁ、はぁ、大丈夫。入学試験の為の訓練だと思って走っているので。はぁ、はぁ。」

「はぁ、はぁ、オレも大丈夫です。この程度。はぁ、はぁ。」


「そう言ってくれると助かるよ。このペースであと4時間ほど行くからね。あぁもちろん間でもう一度休憩は挟むから安心してくれたまえ。」


「「は、はい!」」


 僕とリンキーはこのあとも走り続け、山を2つ越えた。

無事に隣町に到着することが出来た僕とリンキーは顔を見合わせた。


「ねぇ、リンキー。」


「あぁ、クーフ。」


「「僕たち(オレ達)、体力ついてるー!」」


 これは本当に驚いた。知らず知らずのうちに1日に6時間走ることができる体力が付いていたことに。

 その喜びに精神的な疲労は吹っ飛んだ。

 そこからは僕の住んでいる村とは規模が異なる町の中をエルプーリさんが案内してくれた。

 といっても、今日泊まる宿と明日の集合場所の2つだけだ。

 それからエルプーリさんがご馳走をしてくれるとの事で、僕はこの世界で初めて外食をすることになった。

 訪れたお店はこじんまりとしたアットホームな雰囲気のある場所だった。

店に入るとエルプーリさんはいつも来ているのか、慣れた様子で僕らの分も注文してくれた。


「さてと、料理の注文も終えたし、明日からのことを話しておこう。」


「「はい、お願いします」」


「明日は日が昇る前には集合場所であるこの町の教会へ行ってくれ。

 そこで第1ステージに関する説明があるのでしっかりと聞くようにね。

恐らくは説明が終わった後に第1ステージが開始するからルールに則り、全力を尽くして望んでくれたまえ」


「「はい!」」


「じゃあ今日は美味しい料理を食べて、しっかり休息をとってくれ」


 こうして僕の初の外食はパスタだったり、海鮮サラダだったり、グラタンだったりを食すことが出来てすごく幸せな時間だった。

 料理のことをエルプーリさんに聞いたところ、どうやら僕の村だけが特殊な地域みたいで食が偏った人が多いみたいだ。

 ちなみにエルプーリさんは村の出身ではなく、神父として派遣された先が僕の村だったようで、最初はかなりのカルチャーショックを受けたそうだ。

 なので、こうして町へ来れるタイミングは至福の時だそうで、そんな楽しい会話をしながら食事を終え、僕らは宿で一夜を明かした。

 エルプーリさんも一緒の宿に泊まるみたいだけど、明日の朝からは別行動となると言っていた。



 翌朝。

 僕とリンキーは同じ部屋であった為、日が昇る前に起床し、互いに準備を終え、教会に来ていた。

そこには僕らと同じような年代の人たちが100名ほど集まっていたが、皆それなりに身分の良さそうな格好をしており、僕だけが完全に浮いていた。

 リンキーは良いとこの子なので身なりは整っているので馴染んでいた。

 そんなこともあって、僕は違う意味で目立っていたのだが、しばらくすると教会からこの町の神父さまが現れ、入学試験の説明が始まった。





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