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第42話 魔法学園の話


 僕とリンキーは11歳になった。

 僕はあれから毎月、モジモジ・ソワソワする父さんと会ってるが、回数を重ねるたびに観察されてる感が増している気がする。たぶんだけど、母さんに何か言われてると想像できる。

 他には衣服も無事に手に入って、旅立つ為の貯金もそこそこ出来てきた。

 そんな中、エルプーリさんから魔法学園についての話がされたのである。



「クーフ君、リンキー君。二人とも少し話があるんだけどいいかな?」

 

 とある日の午後の魔法訓練時にエルプーリさんが山の中腹までやってきて、僕らに声を掛けた。


「どうしたの?エルプーリさん。」

「なんでしょうか、神父さま。」



「実はね、君たち二人が魔法を学ぶための環境について話をしようと思ってね。」


「え、それってもしかして魔法学園のこと?」


「おや?クーフ君は知っていたのかい?」


「いや、魔法学園があるらしいくらいまでのことは兄のキールから聞いたことがあるくらいで、詳しくは聞いたことないよ」


「そうかい、じゃあ魔法学園について説明をしよう。それから二人で魔法学園に入学するかについて考えてほしいんだ」


「「わかりました」」


「では、今日の夕方に教会の別室で説明するから、来てくれ」


 エルプーリさんは僕たちに伝えたあと、すぐに教会へ戻って行った。

それから僕はリンキーに魔法学園のことで何か知っているか聞いてみた。


「リンキーは魔法学園のことを何か知ってるの?」


「あぁ、それなりには。って程度だが、聞いたことあるぜ。」


「え、知りたい!教えて!」


「夕方から神父さまから説明があるから、説明いらないだろ?

 それより訓練に集中しようぜ。」


「えー、自分だけ知ってるとかズルくない?」


「ズルくない!

 ほら、続きをやるぞ!」


「はぁ、わかったよ。」


 僕はモヤモヤ感を抱えたまま、その日の訓練を終えた。

 そして夕方。

 僕らは教会の黒板のある部屋に来ていた。


「やあ、お待たせしたね。それじゃあ魔法学園について説明していくね」


「「お願いします!」」


 それからはエルプーリさんから魔法学園についての説明が始まった。

 魔法学園の場所は王都ウリンシンに在り、国が経営している。

 その為、国の決めた基準に則り試験を行い、その試験をクリアした者が魔法学園に入学できる。

 また魔法学園で優秀な成績を修めた者は将来、適正に合わせ国の機関で働くこととなる。

これは役立つ人材を育てることを目的としているためだ。

 生徒数は全3学年あり、各学年200名、全校生徒600名からなる。

 基本的に生徒は貴族の割合が多く、平民はごく少数となっており、また男女比は半々となっている。

 男女比が半々の理由としては貴族の嗜みを学ぶ授業があり、その際に男女ペアで授業で受ける必要があるからだ。

 また授業内容は新魔法学と旧魔法学はもちろん、その他にも様々な魔法に関することを学ぶことができ、成績順位も全員に公表される。

 教師はもちろん超一流の魔術師が在籍し、学ぶ環境としては最高の環境が揃っている。

 住む環境については寮制度となっており、在学中は長期の休み以外は全校生徒がそこで生活することが義務付けられている。

 義務付けられてることもあって、魔法学園では授業料、寮費、食費はすべて無料となっている。

 そして、その魔法学園に入る試験については各地方よって試験内容が異なるがそれは地域の考え方によるものが強く反映されている。


 最後にこの村やその周辺の町を含めた魔法学園入学試験についての詳細が告げられ、僕たちは戸惑いを覚えた。


「それからこのエリアでの魔法入学試験についてだが、合格者は最大1名となる。」


「「えっ」」


「そう、つまり君たち二人が一緒に通うことはできないんだ。

 あとね、この村からは今まで魔法学園の入学試験を受けたことはない。

 というのも生活魔法以外の魔法が2種以上使えることが条件だから、この村では魔法を教える環境がないことと、魔法学園へ通いたいと向上心のある者もいなかったからね」


「エルプーリさん、僕は魔法学園へ行って、もっと魔法を学びたい。だから入学試験を受けさせてください」


「そうかい、わかったよ。リンキー君はどうする?」


「はい、オレも受けたいです。」


「そうかい、わかったよ。正直、君たち二人の実力なら確実にどちらかが受かるよ。」


「リンキー。どちらが受かっても恨みっこなしだよ。」


「あぁ、オレは一切手加減しないし、全力で挑むよ」


「二人とも覚悟は出来たようだね、では試験内容について説明するので、それまでは試験に向けて訓練を行ってくれ。」


「「わかりました」」


「試験内容は2つのステージに分かれる。

 まず1つ目のステージは自然の中にコースがあるタイムトライアルだ。

 そのタイムトライアルで規定時間内にクリアすると、第2ステージに進むことが出来る。

 タイムトライアルの内容は毎回変わる為、どういったものが来るかはわからないが、臨機応変さを求められることと思ってもらえればいいよ。

 それから第2ステージはバトルになる。第1ステージをクリアしたものがトーナメント戦で戦い、最後まで勝利した者が魔法学園への入学権利を得ることとなる。

 といった感じになるだが、何か質問はあるかい?」


「あの、エルプーリさん。試験はいつあるの?」


「試験は今から6か月後になるよ」


「そうなんだ。

 話を聞いた感じだと、これからの訓練は今までよりも実践的なことをした方がいいと感じたんだけど、その為に山頂まで行ってもいい?」


「山頂か。まあこの山には魔物は居ないが、大型の野生動物が出る。

 二人でという条件なら構わないよ。ただ、自己責任となることだけは分かっておいてくれ」


「うん、わかった。

 ちなみに山頂付近はどんな野生動物がいるの?」


「私も最近行ってないのでわからないが、熊とか虎が居たはずだよ。」


「熊と虎か。わかった、注意する。」


「うむ、他には何か質問はあるかい?」


「僕は特にありません。」

「オレもありません」


「じゃあまた何かあれば聞いておくれ」


「「はい」」


 こうして、魔法学園の話は終わった。僕ら二人は早速、次の日に山頂まで向かってみることにした。


 翌日。

 僕の家で待ち合わせをし、そこから山頂へ向かうことにした。

 ちなみに僕はまだオプション効果二重掛けはできない。

 その為、家の採光対策として格子窓を作った。刑務所のようとは思わないようにしている。

夜は相変わらず暗いが、月が出ている日は意外と明るいので、まあそれなりに生活はできている。

 と、話は少し逸れたが、朝早くリンキーが訪ねてきてくれた。


「クーフ!準備できたか?」


「やあ、リンキー。もちろん準備できているよ。」


「そうか、じゃあ行こうか。」


「うん。」


 こうして僕らは気を引き締めながら山頂へ向かった。

 道中は野生動物が出てくることも、感知魔法に引っかかることもなかったが、いつもよりもかなり警戒していたから、普段よりも体力を奪われた。


「リンキー、思ったよりも体力と集中力が奪われちゃうね」


「そうだな。何事もなく山頂まで来ることができたが、途中で戦闘があったとすれば、もっと疲労感があっただろうな。」


「そうだね、でもこれで警戒しながらの移動が思ったよりも疲れると分かっただけでも良い収穫になったね。」


「ああ、じゃあ中腹まで警戒を怠らずに戻って、魔法の戦闘を考慮した訓練をしようか」


「うん!」


 僕らは山頂で少し休憩をしてから、下ることにした。

 下り始めた直後、感知魔法で背後に何かの生物反応を感じた。


「ねぇ、リンキー。」


「あぁ、クーフ。何かいるな、注意するぞ。」


 背後に居る“何か”は僕らと一定の距離で付いて来ていた。

僕らは相談し、二手に分かれることで、相手の出方をみようと左右に分かれた。

 すると、その“何か”は僕の方へ付いてきた。

その直後、僕は振り返り手に火球魔法を準備し、そいつに向かって走った。



 僕らの作戦はこうだ。

 そいつが付いてこなかった方、今回の場合はリンキーがそいつの後ろから追跡する。

 そいつに付いてこられた方、今回の場合は僕だけど、リンキーがそいつの追跡をして二重尾行の形が出来たと感じたら逆走し、前後から挟み撃ちをするという方法だ。

 なぜこのような形にしたかというと、尾行していた獲物がいきなり自分の方に向かって攻撃をしてくると混乱し、動きが止まるからと推測したからだ。

 もし、そいつが逃げ出そうとしても、後ろから攻撃できる状況を作っておけば、僕たちが有利になる。

 そう思って僕は思い切って逆走をしたんだけど、目の前に居たのは5m級の虎だった。


「うおっ!」


「クーフ!そのまま突っ込め!相手の動きは止まってるぞ!」


 僕は思わず立ち止まりそうになったが、リンキーがフォローをしてくれると信じて、そのまま野生動物が苦手であろう火を使い、虎に向かって行った。


 その虎は僕らの奇襲に一瞬怯んだようであったが、すぐに態勢を整えて僕に突進をしようと身を縮こませた。

 が、その瞬間。

 僕は火球魔法を虎へ投げつけた。そしてその火球魔法にリンキーの風魔法であるウインドウトルネードが炸裂し、虎は一瞬にして丸焼きになった。


「ふぅー、リンキー助かったよ。」


「クーフ、まだ油断するな。そいつは全身に火傷を負ってはいるが、目は死んでいない」


「えっ!」


 虎の目は怒りにより鋭くなっていた。


「クーフ!金属性魔法で手のひらサイズの鋼球を作ってそいつに投げつけろ!」


「わかった!それ!」

 

 僕は即座に鋼球を作製し、虎に向かって投げつけた。

鋼球が虎の体に当たる瞬間、リンキーはその鋼球に向かって、火球魔法(白)という高密度火球魔法を放っていた。

 鋼球は虎に当たる直前に火球魔法(白)により、高温となり虎の体を貫通した。

 貫通した個所からは大量の血液が噴き出し、虎の目は白くなり、その場で息絶えた。


「クーフ!やったな!たまたま心臓に当たって一発で仕留められたな!」


「うん!リンキーの魔法おかげだよ!ありがとう!」


「何言ってんだ、二人で出した成果だろ!」


「ははっ、そうだね!僕ら二人の力だ!」


 こうして僕らは協力し、5m級の虎を何とか討伐した。

 虎の皮は火魔法でボロボロになってしまったけど、肉は食べられそうだったから、解体して持ち帰ることにした。

 帰りの道中ではさらに警戒し下山していたが、特に野生動物と出会うことはなかった。

 それから虎が食べられるのかをエルプーリさんに聞くことにした。


「こんにちは、エルプーリさん。いま大丈夫ですか?」


「こんにちは、大丈夫だよ。どうしたんだい?」


「実は・・・」


 僕らは先ほどの虎討伐の件を話した。


「・・・というわけで、虎って食べられるの?」


「虎は食べられないこともないが、かなり獣臭いのであまり食べる人はいないな。

 それよりも5m級の虎を二人で討伐したって、よく生き残れたね。」


「えっ?」


「いや、恐らくその虎はこの山の主だったかもしれないね。

 その虎以外には動物を見なかったことがその証拠でもあるんだ。」


「どういうこと?」


「まあ簡単に言えば、そのエリアの頂点に立つものということだ。他に動物が居たら、即座に食べられるか排除されることになる。

 だからその虎以外に会うことはなかったんだよ」


「そうだったんだ・・・。いきなりボス戦とは僕たちはツイているのか、いないのか。」


「まあいいじゃないか、クーフ。オレたち二人なら何とかなったんだし。

 それにコンビネーション技もなかなか楽しかったぞ」


「リンキーはリスクを考えないポジティブ思考だね。」


「ん?どういうことだ?」


「いや、なんでもない。

 今回はたまたま上手くいったからよかったけど、今後を考えるとリンキーの言った通り、コンビネーション技も訓練しなくちゃね!」


「そうだろ!じゃあ早速訓練しよう!」


「うん!

 それじゃあエルプーリさん、ありがとう!」


「ああ、あまり無茶なことはしないで安全に訓練してね」


「「はい!」」


 こうして僕らは九死に一生を得る体験をしたことで、入学試験までの訓練について意識を高めることが出来たのであった。



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