第40話 さよなら大好きな人
僕は再び、家に帰った。
扉を開けると、みんなが驚いた表情で僕のことを見ていた。
「ちょっと、手洗うの長くなってごめんなさい。」
「「「「・・・。」」」」
あれ?僕のギャグがスベってる。
みんな唖然としちゃってるよ。ここは早く本題に入らないと。
「あ、あのね。僕、この家を出ることにしたよ。
僕はやっぱりリンキーとはずっと友達で居たいし、それに僕はこの家を継ぐことができないから元々家を出なくちゃいけなかったし。
ただね、さっきエルプーリさんにも話して、この村の掟のことを聞いてね。
“子どもの面倒はいかなる状況であっても12歳までは見なさい”っていうのがあることを聞いたんだ。
それで面倒をみるっていうのが、“家の主が食事を与えること”っていうことみたいなんだ。
だからね、みんなに迷惑が掛からないよう月に1回、父さんから教会でお芋を受け取るようにするよ。
父さん、手間取らせちゃってごめんね。今日は自分で持っていくから、来月からよろしくね。
じゃあ僕はこれで行くね。」
僕はこのままここに居ると決意が揺らぎそうだったので、早口で説明して、玄関からすぐに出ようとした。
「クーフ!」
「父さん、ごめんね。僕が勝手に決めちゃって、僕のわがままを通しちゃって。
でも、僕がこの家とはもう関係ないってなれば、カンテナ姉ちゃんやみんなに迷惑かからなくなるよね?じゃあ。」
僕は涙を堪えながら、家の外に置いてあるお芋を取って、すぐに教会へ向かった。
*****
アルフは膝から崩れ落ちながら、呟いた。
「クーフ・・・。
何で、そんなに急いで。もっと、もっと、たくさん話したいことがあったのに。
そんな決意を固めた表情で言われると、俺はもう何にも言えなくなるよ。」
「あなた。あなたの気持ち、私も同じよ。
でもあの子が自ら決めて、私たちのことも考えてくれた上で、ああ言ってくれたのよ。
私も、もっとクーフと暮らしたかったし、もっと話をしたかったわ。
でももう、遅いのよ。これからはみんなで陰ながらクーフのことを支え、応援するしかないのよ。」
「あぁ・・・。」
残された家族はクーフの決意を受け、これからはクーフのことを外で話さないようにしようと決めた。
*****
僕はお芋を抱えて、教会へ戻ってきた。
それからエルプーリさんへ家族へお話したことと父さんから月に一度、お芋を受け取ることを伝え、僕の居場所は言わないようにお願いした。
それから魔法の基礎訓練をしているリンキーと合流し、魔法訓練を一旦中断し、僕の住む場所を一緒に作りに行くことになった。
山の中腹に到着した僕らは川の近くで住むのに良さそうな木を探していた。
「リンキー!この細身の樫の木にするよ!川に程よく近くて、木を成長させても周りに影響なさそうだし。」
「あぁ、いいんじゃないか。じゃあ木属性魔法で魔力を与えて、二人で成長させてみるか!」
「うん!」
それから僕らは隣に立ち、直径50cmほどの木に両手を当て魔力を送った。
すると、木からミシミシとした音が鳴り始めた。
「ねぇ、リンキー。何だかミシミシ音がするけど、これってやり方あってるの?」
「ん?大丈夫だ。王都に居る時も庭の木で魔法訓練するときにやっていたからな。」
「そっか。じゃあ、このまま続けていればい、うわっ!!」
「うおっ!」
突然、木全体が大きくなり、僕らは吹っ飛ばされた。
「痛ったー。リンキー大丈夫?」
「痛っ。大丈夫だ。それより急に樹齢1000年級の木になったな。」
「なったな、じゃなくて。リンキーの魔法訓練のときとは違うの?」
「あーそうだな。オレはまだあの頃は未熟だったし、そもそも魔力量も少なかったから木が少し成長したくらいで疲れてやめていたよ。
今回はおそらくだけど、二人同時に大量の魔力を送りすぎたんだな。」
「えー。
まあいっか。一応、住む分には十分そうだし。」
「それでここからどうするんだ?斧でも使って中をくり抜くのか?」
「ふっふっふ。そんな旧魔法時代的なことはしなくてもいいんだな、これが。」
「えらく自信満々だな。それでどうするんだ?」
「見てて、こうするんだ。それ!」
僕は30cmほどの風球を作り、その風球を高速回転させ、コントロールしながらそのまま木を削り始めた。
まずは入口となる部分を削り、そのまま木の中心まで削っていく。
壁となる部分の厚みはある程度残しておきたいので、大人が寝ても大丈夫なスペースを削った。
ちなみに雨の日に水が浸水したら嫌だから、玄関部分だけ少し低めに削って、生活スペースは50cmほど高さを取って削った。天井の高さはとりあえず圧迫感解消のため、床上から2mほど削った。
「ふぅー。こんなものかな。とりあえずは雑魚寝が出来ればいいや。」
「おー、なかなかいいじゃないか。
それでクーフ。扉はどうするんだ?」
「あ!何も考えずに扉のところも削っちゃったよ。どうしよ?」
「うーん。扉はオレも作ったことないからな。
とりあえず、扉なしでは危なそうだから、今日はオレの小屋に泊まるか?
ついでに小屋の扉の構造を参考にすればいいんじゃないか?」
「え、いいの!?ありがとう!」
こうして僕の無計画ツリーハウスは一旦、中断した。
時間的にもちょうどお昼ご飯のタイミングであったため、魔法の訓練も兼ねて狩りをすることにした。
「クーフ。今日は鳥を狩りしないか?一回もしたことないだろ?」
「言われてみればそうだね。でも難しくないの?」
「そうだな、今までのオレたちなら出来なかっただろうけど、今ならたぶん簡単に出来ると思う。」
「ん?何をするの?」
「圧力制御魔法を使うんだよ!それしかないでしょ。」
「水撒いて、鳥をおびき寄せるの?」
「なんでだよ!そんなので来るわけないだろ。
圧力制御魔法で高圧力にして、水を高速発射させれば飛んでる鳥も落とせるでしょ!」
「あー、なるほどね!リンキーっていつからそんなに柔軟な考えが出来るようになったの?」
「いや、散々水を掛けられたからな。これを強力にして当てれば、攻撃魔法になるなってずっと思ってたんだ。」
「おー、僕のおかげか。」
「おい。」
「ははっ、冗談だよ!でも水球を当てればいいんじゃないの?」
「オレもそう思ってやったことがあるんだけど、水球程度じゃ速度が遅くてすぐに躱されてしまうんだよ。」
「そうなんだ。」
「ああ。だから二人とも習得したこの圧力制御魔法ならいけると思うんだ。」
「うん!じゃあどっちが先に狩れるか勝負だね。」
「ああ、勝負だ!」
それから僕たちは上空に飛んでいる鳥を狩るため、ほとんど同時に圧力制御魔法を発動させた。
僕は一点集中放水タイプでかなり高密度にした水を放水し、鳥を狩ることが出来た。
一方、リンキーは水弾のようにして、まるでライフルで狙ったかのようにクールに仕留めて、僕の方を向いてドヤ顔をしていた。
「狩ったのはほぼ同時だったな。だけど、クーフが狩ったあとは水浸しじゃねえか。これだと自分の居場所がバレて、鳥から警戒されて二羽目を狩ることができないぜ。」
「うぅ、なぜか引き分けのはずなのに、敗北感が、・・・。」
「ははっ、まあ無駄に魔力を使わずに狩ることも考えないとな」
「・・・次から気を付ける。」
さすが“効率厨”を母に持つだけのことあるよね。リンキーはカリンさんに洗脳されてるよ。
それから僕らは鳥を捌き、川辺でBBQをして鳥を美味しく頂いた。
昼食後は扉の構造を確認することもあって、早めに訓練を切り上げてリンキーの家(小屋)に来ていた。
「クーフ、叔母さんたちに見つかると面倒だから静かにしててくれよな。」
「わかった。ちなみに叔母さんたちの家ってどこにあるの?」
「実は少し離れてるんだ。あっちに大きめの家があるだろう?あそこに叔母さんたちは住んでるよ」
リンキーが指さした方を見ると、50mほど離れたところに柵があって、その内側に家があった。
「小屋って家の敷地内の小屋じゃなかったんだね。」
「あぁ、畑の道具があった小屋だからな。家とは離れてるんだ。
まあ今のオレからすると、離れてて気が楽だから良かったよ。」
「うん。距離が離れてるけど、念のため静かにしておく。」
「おう、じゃあ早速扉の構造を確認するか。」
小屋の扉は手前に扉を開く“開き戸タイプ”であったので、明日扉を作るためにじっくりと観察をした。
そのあと、小屋に入れてもらった。
「お邪魔しまーす。ってすごっ!」
リンキーの小屋は外から見ると二畳ほどの大きさだったんだけど、リンキーのDIY能力が高かった。
ベッドがロフト式にしてあって、そのベッドの下にはテーブルと椅子があったからだ。
今日僕が作ったツリーハウスと比べると雲泥の差だ。
「ははっ、すごいだろ?
このままだと今日クーフが寝る場所がないから簡易ベッドを作るよ。」
リンキーは木属性魔法で扉とは反対側の壁へ折りたたむことが出来る簡易ベッドを1分ほどで作っていた。しかもしれっと、金属性魔法も使って蝶番まで作っていたのだ。
「え、なんで、こんなに簡単に作れちゃうの?」
「オレの家って商会をやってるだろ?それで仕入れの時にたまに職人さんのところにオレもついて行くことがあって、そのときに職人さんに教えてもらったりしてたんだ。」
「そうなんだ。」
あれ?転生者って主人公ポジションじゃないの?リンキーの方が主人公要素多くない?
いや、不毛なことを考えることはやめよう。
「あ、あとな。夜になったらこの小屋には電気が通ってないから暗くなるぞ。」
「そっか、じゃあ僕も明日から住むところって扉付けて閉めたら真っ暗になっちゃうんだ。
何にも考えていなかったよ。」
「この小屋も窓がないから、そこの扉閉めたら真っ暗になるぞ。
でも、ここでは真っ暗にならないんだな。」
「え、なんで?」
「これだよ。ふんっ。」
「うわっ、危ないよ!こんなところで火球出したら家事になっちゃうよ!」
「ははっ、大丈夫だ。ちょっと触ってみろ。」
「えっ、熱くないし、燃えない?あっ、これってもしかして。」
「あぁ、オプション効果だ。ちなみ魔力濃度を上げると。」
リンキーは火球の魔力濃度を徐々に上げ、赤→青→白と変化させていった。
「おー!白色だとめちゃくちゃ明るくて、電気が通ってるみたいだね。」
「だろ?クーフもオプション効果二重掛けを早く習得しないと真っ暗生活から抜け出せないぜ。」
「オプション効果二重掛け・・・。難しすぎるんだよね。
光の採り方はまた別の方法を考えてみるよ。」
「そうか。」
「それよりね、このベッドと机椅子セットを明日、僕のツリーハウスにも作ってくれない?」
「んー、ダメだな。」
「え、なんで?」
「魔法の訓練にちょうど良いだろ?
だから自分で習得しないとな。」
「えーわかったよ。」
まさかこのスパルタ教育までカリンさん譲りとは。
「オレもな、最初からこのベッドが作れたわけじゃないんだ。
少しづつ作り変えて今の形になったんだ。」
「そうだったんだ。」
「まあこれが完成形ってわけでもないんだけどな。
クーフもその内、王都に行くことがあれば、色んなお店を見てみるといいよ。
本当に多種多様の家具があるからさ。」
「うん!ありがとう。」
その日はリンキーとたくさん話をして過ごしたからか、寂しくなることはなかった。
もしかしたらリンキーは今日だけは僕と一緒に居てくれるつもりだったのかもしれないね。
その日以降はツリーハウスの扉を作ったり、家具を作ったりしながら、魔法の訓練をして過ごしていた。
そして僕が家を出てから一か月が経ち、明日久しぶりに父さんと会うことになる。




