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第39話 もう一つの家族会議

今回はアルフ(クーフ父)視点のお話になります。


 俺は朝起きるとすぐに村に向かった。

それは宿屋へ定期的に芋を直納するためであった。

その日はいつもは見ない宿屋の娘が朝から店番をしていた。


「おはようございます、アルフです。いつものお芋を納めに来ました。

ってあれ?女将さんは今日は居ないの?」


「おはようございます、今日はお母さんちょっと忙しくて、私が対応しますね。」


「あぁ、ありがとう。」


「あ、そうだ。アルフさんってクーフ君のお父さんですよね?」


「ああ、クーフという息子はいるが。それがどうかしたかい?」


「私はイーメルと申します。昔、教会でクーフ君に勉強を教えてもらってたんです」


「そうだったのか。クーフはうまく教えられたかな?」


「すっごく上手くて、感謝しています。それにクーフ君は教会に通ってるときは女の子にモテモテだったんですよ」


「あぁ、そんな噂は神父さまに聞いたことがあるよ。でも同性からはあまりよく思われていなかったとか」


「ふふっ、そうですね。あ、でも少し前かしら?同性で同年代のお友達がこの宿に泊まりに来たときに一度、訪ねてきたことがありましたよ」


「同性の友達?聞いたことないな。名前は何ていう子かな?」


「えっと、確かリンキー君だったかな?すごく美人なお母さんと泊まっていたわ。いまでも半年に一度は泊ってくださってるの。」


「・・・リンキー。そうか。ありがとう。

 じゃあ今回のお芋はこれで全部だからまたよろしく頼むよう女将さんにも伝えておいてくれ」


「はい!ではまたよろしくお願いします」




 俺は不思議に思った。クーフは教会での出来事や魔法の事をよく家で話してくれるが、リンキーという少年の話は聞いたことがない。

 それにリンキーってどこかで聞いたことがあるような・・・。


 あっ!?思い出したぞ、確か王都の商会の子だったな。

 それから急いで家に帰り、リンキーという少年のことをクーフに問いただそうとしたのだが、今日に限って朝早くから畑の水撒きをしに行ったようだった。

 俺は落ち着きを取り戻すべく、先ほどの話をイザリアにもした。


「まさかあの子が同性と友達になるなんてね。

 でもあなた、どうするの?」


「どうするもこうするも、カンテナの婚約を考えると、リンキーという少年との交友を断ってもらうしかないだろ」


「それはいくら何でも酷じゃない?たぶんあの子にとって初めての同性で同年代のお友達よ?

 納得してくれるかしら?」


「納得する、しないの問題ではない。この村で生きるとはそういうことだと受け入れてもらうしかないだろ。」


「うーん・・・。」


 息子のことについてイザリアと話をしていると、玄関のドアが開き、息子が帰ってきた。


「ただいま!ねぇ、父さん、母さん!あのね、」


「クーフ。先に話がある。まずはそこへ座りなさい」



 それからリンキーという少年についての話を終え、少し重苦しい空気のなか朝食を摂ろうとしたのだが、手を洗いに行ったクーフが一向に帰ってこなかった。

 そのことでさらに食卓の空気が重くなり、イザリアが少しイラついた表情で話始めた。


「あなた、クーフは出て行ってしまったようね。

 さっきのこと、カンテナとキールにもちゃんと説明してあげてくれるかしら。」


「あぁ、わかった」


 俺は今朝、宿屋で聞いた話とこれまでの村での噂やカンテナの婚約に関わる事情まですべてをもう一度確認するかのように家族へ説明した。

 

「・・・という話を先ほど、クーフとしたのだ」


「そう、私がゾーシンと婚約していたことも原因だったのね。」


「カンテナ、それは気にするな。どちらにしても、王都の商会の者と関わると村八分にされてしまう。」


「・・・うん。それでクーフはそのリンキー君だっけ?その子のことについては何て言っていたの?」


「ああ、それ何だが・・・。俺が一方的に話をしただけだから、ちゃんと聞いてないんだ。」


 俺はカンテナに言われて気付いた。

 クーフの言葉に耳を一切傾けていなかったことに。


「え、どうして?クーフが仲良くしたいって子なら、ちゃんとしてそうだけど。」


「あぁ、そうかもしれないな。」


「ちょっと!“かもしれない”で済む問題じゃないでしょ!」


「カンテナ、ちょっと落ち着きなさい。アルフにとっても想定外のことだったのよ」


「でも、母さん。私ね、小さい頃のクーフはあまり好きじゃなかったの。何だか媚びてるみたいで。

 だけど、生活魔法を教えたり、料理を一緒にしていく中でクーフが一生懸命に取り組む姿勢を見て、私ももっと頑張ろうって思えたんだよ?」


「そうね。」


「それにね、クーフが居たから色んな食材持ってきたりして、たくさん料理を覚えられたし、みんなで食卓を囲みながら“美味しいね”って笑いながら過ごすことが出来たんだよ?

 私それまで食事なんて、栄養取れればいいとか思ってただけだったのに、いつからかみんなでご飯を食べることが楽しみで、クーフの教会でのお話も聞いてて楽しくて。なのに、なのに・・・。」


 涙をこらえるカンテナをイザリアが優しく抱きしめていた。

 俺はその様子を見てクーフの事情も聴かずに一方的に話したことを悔やんでいた。


「父さん。俺もクーフのことはちょっと苦手だったけど、いつも前向きで一生懸命で決して諦めない、そんな姿を見て、自分のスキルについてもう一度考えてどうすれば上手くできるかって頑張ることが出来たよ。

 クーフはどこか変わったところはあるけど、俺は弟のクーフを誇らしく思ってるんだ。」


「ああ、そうだな。」


「あなた、あなたがクーフを大切に思ってることは私もわかってるわ。

 だからもう一度、クーフの話を聞くようにしましょう。あの子、行く先なんて教会くらいしかないんだから、あなたの気持ちが落ち着いたら一緒に迎えに行きましょう」


「あぁ、ありがとう。俺がクーフの話もちゃんと聞かず、強く言ってしまってすまなかった」


 俺はクーフが大好きだ。もちろん家族全員が大好きでとても大切だ。

 家族もそれぞれが想い合ってることを知ることが出来てよかった。

もう少し気持ちを落ち着かせたら、教会へ迎えに行こう。俺はそう決意した。


「じゃあ父さん、俺は畑仕事してくるから、絶対にクーフを連れて帰ってきてよ。」


「あぁ。」


「じゃあ行ってきます!」


 キールは朝ごはんのサンドウィッチを持って、畑仕事に行った。

そらそうか、今の食卓で食事したいと思わないもんな。あぁ、それに芋以外の朝食があるのもクーフのおかげだったな。


「父さん!」


「ん?キールか?どうしたんだ?今さっき、畑仕事に行ったんじゃないのか。」


「クーフの担当していた場所の水撒きが終わってるよ。」


「あぁ、朝早く起きて済ましていたんだろう」


「いや、違うよ!クーフが前に担当していた場所も含めて終わってるんだよ。

 これって何かの魔法を使ったんじゃないの?」


「あっ!そうか・・・。」


 俺はこの時、気付いた。今朝、畑から嬉しそうな顔で帰ってきて、何かを言おうとしているクーフの姿を。

 あぁ、魔法を使いこなせるようになったんだな。それが今日、完成したところだったのか。

 それに今日はクーフの10歳の誕生日だったな。

そんな大切な日に俺はちゃんと話も聞いてやれなかったのか。

 せめて、あの子の嬉しそうな話だけでもきちんと聞いてあげられたらよかった。褒めるところしかないのに何であんなに感情的な対応をしてしまったんだ。

 俺はいったい父親として何をやってるんだか。


 だけど、いつまでもくよくよするのはやめよう。

 しっかりとクーフの話しを聞こう。考えるのはそれからだな。


 そう俺が決意した時、玄関が開き。クーフが帰ってきた。

 ただ、そのときのクーフの顔は何かを決意した表情で、なぜか俺は不安な気持ちになった。





次回、クーフ視点に戻ります。

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