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第38話 クーフの家出



 僕が圧力制御魔法を魔道具じょうろに適用して水撒きができ、嬉しくて両親へ報告しようと帰ったのだが、その前にリンキーとの関係性を聞かれてしまった。


「クーフ。リンキーという少年を知っているか?

 いや、違うな。リンキーという少年とどういう関係だ?」


「・・・。」


「クーフ、いまは話をしているんだ。下を向かないで、ちゃんと人の目を見なさい。

 ・・・それで、リンキーという少年とはどういう関係なんだ?」


 僕はリンキーとの関係性を打ち明けるべきか、すごく悩んだ。

このままリンキーと仲良くすることを望めば、カンテナ姉ちゃんの婚約が無くなるかもしれないし、リンキーの間違った噂が原因で僕たち家族も村人から不信感を持たれるかもしれない。

 だけど、僕は友達を友達と言えない人にはなりたくない、そう思った。


「・・・友達だよ。教会で知り合ったよ。

 それがどうしたの?」


「あぁ、そうか。先ほど、村で聞いたことは本当だったのか。

 クーフはわかっているんだろう、その少年と仲良くすることでカンテナに迷惑が掛かることを。」


「父さんが村で何を聞いたかはわからないけど、リンキーが悪いような言い方はしないでほしい。」


「クーフがそういう態度を取るということは、やはりカンテナへ迷惑が掛かるってことは分かってるんだな。」


「・・・父さんは僕にどうしてほしいの?リンキーと友達になるなって言いたいの?」


「クーフ、お前は賢い子だ。だから、そんなにたくさん話す必要もないと思ってる。

 その少年とはもう関わるな。カンテナや俺ら家族がこの村に住めなくなる可能性すら出てくる。

お前も知っているだろう。この村がある程度まで発展できたのはナリガリ商会のおかげだと。」


「・・・知らない。僕はこの村の歴史なんて知らないよ。」


「まあいい。それよりも今後、その少年とは関わるな。今日からはもう教会へ行くことも禁ずる。

 畑の手伝いをしなさい。わかったな?」


「待って、そんな急に。僕の話も聞いてよ」


「ダメだ!今回だけはわがままを聞いてやることはできない。

 お前は既に人に教えられるほど勉強ができるんだ。だからもう教会へ行く必要もないんだからな。

 とにかくもう教会へは行くな。」


「そんな・・・。」


「わかったら、朝食の時間だ。」


「うん・・・。その前に手を洗ってくるよ・・・。」


 僕は皆が食卓に着いたのを確認してから手を洗いに行くフリをして、そのまま家を出た。

 家を出てから教会までがむしゃらに走った。前が霞んであまり見えていなかったけど、ただただ走った。

 教会着き、裏手までやってきたが、いつもより早くに来たからか、まだリンキーは来ていなかった。

僕は先ほどの父さんとのやりとりを思い出し、どうすることも出来ない境遇にただただ悔しくてその場にしゃがみ込み、両手で顔を覆った。


 どのくらいの時間が経ったのだろうか、突然声を掛けられた。


「クーフ?どうしたんだ?そんなところでしゃがみ込んで。」


「あぁ、リンキーか。」


 僕は声を掛けられ、顔を上げて返事をした。


「おい、大丈夫か?目が腫れてるぞ?何があったんだ?」


「・・・ううん。なんでもないよ。うん、なんでもない。」


「クーフ。何でもないわけないだろ。

 何があったんだ?ちゃんと話してくれ。」


 リンキーはそう言いながら、僕の隣に座った。


「・・・なんでもないから、大丈夫だよ。」


「そうか。言えないならそれでいい。

 じゃあオレの話をするからただ聞いててくれ。」


「うん。」


「オレがこの村へ来た時の話は前にしただろ?

 この村に来た時、オレには味方となってくれる人は居なくて、叔母さんたちからも嫌われ、不安しかない中、どうしようか悩みながら、この教会に来たんだ。

 この教会に来た時も、他の子どもたちから、嫌な視線や噂話をされて、本当にこの先どうしたらいいのかわからなかったんだ。

 でもな、そんなとき、クーフが教室から連れ出してくれて、そこで色々と話を聞いてくれて、上手く言えないけど、オレはすごく救われたんだ。

 ただ、話を聞いてもらえるだけでこんなに幸せで苦しさから解放されるなんて、その時に初めて知ったんだ。

 それにな、そこからクーフとは友達になれて、今ではかけがえのない親友だと思ってる。

そんな親友が何かを抱えてるってわかってるのに知らないふりはできないんだ。」


「うん、僕もリンキーのことは親友と思ってるよ。だけどね、親友だからこそ言えないこともあるんだ」


「それはオレに関することか?オレがそれを聞いたら傷つくかもしれないと思って、一人で抱え込もうとしてるのか?」


「・・・。」


「クーフ。オレはな、親友の為なら傷ついてもいいと思ってる。いや、違うな。親友だからこそ、嫌なことや苦しいこと、嬉しいことや楽しいこと、その全てが共有出来たらいいと思ってるんだ。

 だからもし、オレに気を遣って言えないのが理由ならそれは言わない理由にはならない。

 だから、話してくれるとオレは嬉しい。」


「・・・ありがとう。じゃあ話す、ね。」


 僕はポツリポツリと今朝の出来事をリンキーに話した。

 僕が話している間、リンキーは何も言わず、静かに聞いてくれた。


「・・・それでいまに至るんだ。」


「ありがとう、話してくれて。」


 僕はゆっくりと話したことにより、混乱していた頭が少しばかり落ち着いた。

それから今後の考えをリンキーに話した。


「リンキー。」


「どうした?」


「話を聞いてくれてありがとう。少し落ち着いたみたい」


「そうか。」


「それでね、やっぱり僕はリンキーとはこのまま親友で居たい。」


「うん。」


「でもね、家族とも仲良くしたい。

 まあその両方を取ることはできないんだけどね。」


「クーフ。」


「なに?」


「家族を取れ。オレのことは考えなくていい。」


「ははっ、やっぱり、リンキーは優しいね」


「クーフ、何泣いてんだよ。」


「リンキーが僕のことを一番に考えてくれて、嬉しいからだよ。

 というか、リンキーこそ泣きそうな顔してるよ。」


「ふん、オレは一人でも大丈夫だ。」


「そっか。うん、決めた。

 僕はリンキーと居ることにするよ。」


「何言ってるんだ、クーフ。」


「僕はリンキーと一緒に居る。

 僕が一度決めたら、意見を曲げないってこと知ってるでしょ?」


「あぁ、そうだったな。

 ごめんな、クーフ。オレのせいで。」


「リンキー。言い方間違ってるよ。ごめんじゃないよね?」


「クーフ、ありがとう。オレの為に。」


「ううん、僕の方こそありがとう。それにこれからもよろしくね。」


「あぁ、よろしく。じゃあこれからはもう親友ではなくなるな。」


「え?」


「オレたちは家族だ!」


「うん!家族だね。」


 そう言った僕たちは互いに抱き合った。

 しばらくして落ち着きを取り戻し、それから僕はこれからどうするかを話した。実はいつかこうなる日が来るかもしれないとは予想していたのだ。

 まあ実際に来た時にはかなり混乱して取り乱してしまったけどね。


「じゃあ僕はこのことをまずはエルプーリさんに報告するよ。それから、一度父さんと母さんにも伝えてくる。」


「あぁ、わかった。でもこれから住む場所はどうするんだ?」


「それに関してはエルプーリさんに許可を貰わないといけないんだけど、山の中腹に住もうかと思って。」


「山の中腹?野宿か?野生動物が居るから危なくないか?」


「野宿じゃないよ。木属性の魔法を使って、山の木を急成長させて、その中をくり抜いて、ツリーハウスにして住もうかと思ってね。」


「旧魔法学時代の生活をするってことか。」


「そう!前にエルプーリさんから旧魔法学の話を聞いた時から密かに憧れてたんだよね」


「うん、そうか。それにしても立ち直り早いな。」


「ははっ、くよくよしてて物事が良い方向になるならいいけど、実際は何も変わらないからね。

 だったら、さっさと気持ちを切り替えた方がいいでしょ!」


「まあ、そうなんだけど。普通は思っててもなかなか・・・ね。」


「ん?リンキーは僕が普通のイケメン秀才ボーイだと思ってた?」


「いや、そのどれも思ったことがない。

 まあいつものクーフならオレも安心したよ」


「でしょ?じゃあ早速、話をしに行ってくるね」


「あぁ、オレは一人で魔法訓練しておくよ」


 こうして僕はエルプーリさんに事情を説明し、山の中腹に住む許可をもらった。

そして家族と決別する話をしに、再び家へ帰るのであった。




次回はアルフ(クーフ父)側の視点でのお話になります。

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