第37話 圧力制御魔法
僕たちはカリンさんから魔法訓練の効率化を学んでから、魔法開発にも取り組んでおり、そして目標としていた魔法が完成した。
そう、あれから2年が経っていた。
この世界は前の世界と比べると体の成長が少し早いのか、10歳を目前としていた僕は前世で言う14歳くらいの見た目になっていた。
そして今日、圧力制御魔法が完成した。
「よしっ、これで圧力制御魔法が完成したね」
いつもの教会の裏手で僕は両手を上空へ向け、水球を上空に浮かべていた。
それから水圧を調整し、東西南北と4方向へ水を放出していた。
「おい、クーフ!オレの方へ水を放出するなって何回言ったらわかるんだよ」
そう言いながらリンキーは風魔法で傘を作り、僕が放出した水を弾いていた。
「まあ、リンキーなら水に掛かることないから大丈夫でしょ!」
「またそれかよ、不意打ちにやられるとなかなか焦るんだよ」
「ははっ、でも野生動物はいつだって不意打ちばかり狙ってくるからいい訓練になるでしょ」
「まあな、っておい。」
こんな調子で僕らは魔法の訓練をしながら、野生動物への対応力も深めていた。
僕が圧力制御魔法の習得に至るまでにはかなりの試行錯誤を重ねたのだが、進むべき段階としては間違っていなかった。
ステップ1:耐圧力のある膜を作る
このステップ1ではまず何で膜を作るかを考えるところから始まった。
金属性、木属性、土属性、水属性、風属性と、この5つが候補に挙がり、それぞれで試した結果、風属性で膜を作ることになった。
最初は水で膜を作ったりしていたんだけど、その水膜の中に水を入れると、同化するか、何故か爆発をしてしまったので、水での膜作りは諦めた。
ちなみにその水爆発で毎回、僕らはびしょ濡れになっていたんだけど、その時にリンキーが濡れないようにと自身に風を纏い、雨合羽のような魔法が偶発にできたのだ。それをさらに発展させたのが、先ほどリンキーが使用した風魔法傘というわけだ。
風魔法の雨合羽や傘は割と簡単に習得できたので、僕も雨の日は使っている。魔法は発想力が大事ということをこの時に学んだ。
話は戻るが、僕らが風魔法で膜を作るのも一筋縄では行かなかった。
風球を作り、その中に空洞を作ることから始め、それ自体は割と上手くいった。
それであとは風球の中に水球を入れれば、完成だ!と思っていた。
このアイデアは前にカリンさんが来たときに、リンキーが熊を仕留めた方法を参考にした。
だから最初はリンキーの魔法のようにしてみたのだが、風球の中に水を入れると、どうしても膜側に水が持っていかれてしまい、風と水が混ざったような水風球みたいになってしまったのだ。
その状態で集中力を欠くと、水が周りに飛散し、僕らはその時にもよくずぶ濡れになっていた。
だけど、この経験があったからこそ、不意打ちに対する対応力が身に着いたんだけどね。
そこで僕らはなぜ水と風は混ざるのか?ということに着目して、思考を巡らせた。
その結果、分かったことは風球自体の回転方向が地球の自転と同じように一定方向に回転しているから、水もその流れに乗ってしまうのではないかということに気が付いた。
そこからは風の回転方向を内側に向けてみたり、風球を内外の二重にして外側と内側で回転方向や速度を変えてみたりしたけど、すべて失敗に終わった。
僕とリンキーは風魔法でも膜は作れそうにないなと話をしていた。そのとき僕は適当に水球を浮かべて、なんとなく風魔法をぶつけて遊んでいるとリンキーがとあることに気が付いたのだ。
「おい、クーフ。今のどうやったんだ?」
「え、何?急にどうしたの?」
「いま、風魔法が水球に当たった瞬間、風が水球の外側へ逃げなかったか?」
「え?もう一度、やってみるよ。それ!
おお!本当だ。」
「これって水球と風が混ざってないってことだよな?」
「あ、そういうことか。もう一度やってみるね。それ!」
「「うわっ!!」」
僕は先ほどより少し強い風魔法をぶつけたせいで、水球が爆散し、僕らはびしょぬれになってしまったのだ。
「ははっ、ごめんね。ちょっと強くしたら、水球爆発したね」
「強くするなら言ってくれよ。でもこれで強さにさえ気を付ければ風でも膜が作れるってことだな」
「うん!行き詰っていたけど、何だか上手くいきそうな予感がしてきたね」
そこから僕らは水球の強さと風の強さのバランスを確認する作業をすることになった。
そしてここでステップ2の導入もした。
ステップ2:魔力密度を高める
水球の魔力密度を高めると風魔法への耐性がどれほど変わるのかが気になった僕らは水球の魔力密度を高めることを始めた。
魔力密度はすぐに高めることが出来た。というのもカリンさんの中級魔法単独強化版訓練で同属性の魔法の結合訓練を行っており、結合の際に魔法の大きさを変えずに結合すれば魔力密度が高くなりそうだと思い、実験したら成功したからだ。
それから密度を高めた水球は風魔法への耐性も上がっていることがわかった。
僕らは高密度の水球を”高水球”と呼ぶことにした。
高水球の確認項目として、風魔法の耐性確認、当てる方向、タイミング、膜の多重化を何度も試行錯誤し、風の膜こと風膜を作ることに成功したのだ。
これが出来上がったときには二人して飛び跳ねて喜んだよ。
だけど、風膜で高水球を閉じ込めた後、さらに高水球の密度を高める方法を考えていなかったのだ。
だが、これに関してはオプション効果が解決してくれることになった。
僕らはオプション効果についても並行して色々と試していた。
オプション効果についてはカリンさんが二度目の訪問のときにオプション効果に関する魔術本を持ってきてくれていたのだ。めちゃくちゃ高価なものだったらしく、現状維持魔法の多重掛けがされていたそうだ。
その本で色んなオプション魔法について、勉強した。
その中で習得したのが魔力増殖というオプションだ。
増殖効果オプションとは魔力密度を時限式で増殖できるものだ。
まあ簡単に言うと10秒後に魔力密度を2倍にするって感じだ。
それで魔力密度を後からでも高めることは出来た。
次にステップ3を行うにあたっても、大きな壁にぶつかった。
ステップ3:指向性を持たせ放出する
これは風の膜を三重化にすることで耐性のある膜を作っていたんだけど、ここに穴を開けて、放出しようとしたら、膜全体のバランスが崩れて、爆散した。それも圧力が高い状態だったからかまるで嵐が突然来たようで教会近辺がすごい水浸しになってしまった。
さすがにこの爆散にはエルプーリさんからも忠告が入ったので、僕らは圧力制御魔法を試す時は山の中腹にある川で行うことにした。
結果からいうと、魔磁力のオプション効果を使うことで解決した。
水を放出したい方向へ水の魔力のみを引き付ける魔磁力を付与することによって、放出することが出来た。
またこの魔磁力の特性を逆に使用することによって、後から水魔法を注入することも出来たのだ。
こうして圧力制御魔法の基礎が出来た僕らは使いこなせるようになるまで、ひたすら精度を磨いていったのだ。
またリンキーは川での訓練時に火属性魔力の密度を上げる訓練をしており、火球の色が魔力密度によって、赤→青→白へ変化することもわかった。
まあかなり危険なので、水辺がない場所では使えないけどね。
リンキーはさらにその火球にオプション効果として燃えない、熱くない、の二重付与をしていた。
ちなみに圧力制御魔法のオプション効果は二重掛けではなく、単独付与を二回やっているのでこの二重付与とは異なる。
僕はリンキーのようにセンスがないので、まだ二重付与を習得できてない。
そんな感じで、圧力制御魔法を完成とした僕は翌日の朝に魔道具じょうろで試すことにした。
◆
圧力制御魔法が完成した翌日の朝。
僕はいつもより早く、水撒きをするため畑に来ていた。
「よしっ!魔道具じょうろで試してみるか」
僕は魔道具じょうろを風魔法で上空に浮かべ、魔道具じょうろを真下へ向け、大量の水を出した。
それを風魔法の膜で受けつつ、水へ増殖効果を付与した。
「これくらい水があればいっか。」
直径2mほどの高水球が出来たので魔道具じょうろでの補給をやめ、そこから4方向へ放出させながら、高水球を回転させた。
「やった!成功だ!
じゃあこれで風膜を収縮させると、・・・おっ!出来た!」
風膜を収縮させることでさらに圧力を高めて、より遠くへ水撒きが出来るようになった。
元々僕が3歳のときに与えられた畑の水撒きの範囲をわずか5分で終えることが出来た。
「これは革命的だね!早速、父さんと母さんへ報告だ!」
そう思い、僕は急いで帰った。
「ただいま!ねぇ、父さん、母さん!あのね、」
「クーフ。先に話がある。まずはそこへ座りなさい」
何だろう?父さんの表情と声色がかなり険しい。隣に居る母さんも困ったような顔をしている。
僕は何か問題があったのだろうと、大人しく椅子に座ることにした。
「クーフ。リンキーという少年を知っているか?
いや、違うな。リンキーという少年とどういう関係だ?」
どうやら、これまで隠し通していたリンキーとの関係がバレたようだった。
そしてリンキーとの関係について、ピリピリとした家族会議が始まるのであった。




