第34話 オプション効果
リンキーと魔法の訓練を始めて1か月ほどが経過した頃。
いつものように教会の裏手で魔法の訓練を始めようとしたとき、エルプーリさんからとある提案がされた。
「クーフ君、リンキー君。いつもお手伝いしてくれてありがとう!」
「エルプーリさん、どうしたの?そんな改まった感じになって。」
「いやね、君たち2人のおかげで、この教会の評判がかなり良くなってね。
クーフ君が先生として頑張ってくれたことで、シスターたちがクーフ君の教え方を取り入れて、勉強ができる子が増えたんだ。」
「そうだったんだ」
「それからね、リンキー君が手伝ってくれた事で、教会の仕事がかなり改善されたんだ」
「え、リンキー。なにしたの?」
「クーフ。オレには何が出来ると思う?」
なんだ?この面倒くさい会話のラリーは。
魔法を自慢したそうな雰囲気がリンキーから滲み出ているよ。
仕方ない。まじめに答えてあげるか。
「リンキーは、・・・落ち葉の掃除が得意。ぷぷぷっ。」
「おい。」
ぷぷぷっ。面倒くさそうなことには面倒くさそうな対応が一番だ。
「うん、イチャイチャしてるところ申し訳ないけど、話を進めさせてもらってもいいかな?」
「「はい、ごめんなさい。」」
「うん。リンキー君には魔法で教会の古びた箇所の修復や王都で便利なアイテムの情報をまとめてもらったりしていたんだよ。」
やっぱり、魔法に関することだったか。すごいな、リンキーは。
「それでね、二人が活躍してくれたおかげで、お手伝いはもう無くても、教会としては十分にやっていける見込みが付いたので、二人にはお昼からも魔法を訓練する時間に使ってもらおうかと思ってね」
「え、それってクビって言う意味じゃないよね?」
「ははっ、君たち二人をクビにするなんて勿体ないよ!私は二人の目標を知っているからそれを応援したくてね。あ、あと魔法が上達したら、教会の仕事に関わることもたまにやってもらいたいって言うのもあるんだけどね」
ん?エルプーリさん、最後に本音漏れてるよね?
ま、でもいっか。9割くらいは僕らの為を思ってくれているもんね!たぶん。
「ありがとう、エルプーリさん!」
「ありがとうございます、神父さま!」
「じゃあ、いきなりだけど、今日のお昼からリンキー君。オプション効果について勉強会をしてもらえるかな?
「は、はい!わかりました」
こうして午前中はいつものように魔法の基礎訓練を行い、昼からオプション効果について学ぶことになった。
そしてオプション効果勉強会。
リンキーは初めての先生役で緊張するんだろうな。先生としては僕が先輩だから何か困っていたらフォローをしてあげなくちゃね。
「では、初めて勉強を教えるので、わかりづらいところがあったら、どんどん言ってください。よろしくお願いします。」
「「よろしくお願いします!」」
「まず、オプション効果にはメリット・デメリットが必ずあるので、状況に合わせて使い分ける必要があるということを前提に考えてください。
例を挙げると、前にオレが使った落ち葉だけを集める風属性の魔法に付けたオプション効果は“落ち葉の僅かな魔力を引き付ける”という効果を付与しました。
この場合のメリットは落ち葉以外の砂などが舞わないという点、デメリットは落ち葉がないところで使っても何も魔法の影響がないことです。またオプション効果が未熟であった場合は“落ち葉と似たような魔力のものも引き付ける可能性”や“通常の風属性魔法の発動”となります。
それからオプション効果については各属性ありますが、オレが使えるのは無属性に関するものだけです。
オプション効果の簡単な説明はこれくらいになりますので、何か聞きたいことはありますか?」
おー、リンキーめちゃくちゃ説明上手いなぁ、僕がフォローしなくちゃって思ってたけど、全然いらなかったよ・・・。
やっぱり裕福な家庭で両親が才能に溢れていたら、子どももしっかりするんだね。
いや、違うか。リンキーの母親は確かスパルタ教育ママだったから、どちらかというとそっちの影響が強そうだ。
僕がオプション効果とは関係のないことを考えていると、エルプーリさんがリンキーへ質問していた。
「では、私から2点ほど質問させてもらっていいかな?」
「はい、神父さま、どうぞ。」
「まず一つ目だが、“落ち葉の僅かな魔力”とは感知魔法を使って把握するということかな?」
「はい、その通りです。」
「では二つ目だが、風属性に無属性を付与とはどうすれば出来るんだい?」
「はい、それは複合魔法では“魔力を合わせてから”使いますよね?でもオプション魔法では先に風属性の魔法を発動させて、その発動させた魔法へ無属性の魔法を合わせるようにすれば付与出来ます。
ちなみにオレが使った無属性魔法は魔力を持つもの同士を磁石のように引き寄せる魔磁力魔法を付与して使ってました」
「ほう、なるほど。そういうことか。原理を聞くと納得できるが、発動した魔法に魔力を合わせるのは魔力制御のセンスが問われそうだね。」
「そうですね、オレが母からオプション効果を習い、付与できるまでは1年かかりました。
あ、でも他の魔法の訓練もしながらだったので、オプション効果だけを訓練すればもっと早くできたかもしれません」
「なるほど。リンキー君のようにセンスがある人でもゆっくりやって1年か。
これは一筋縄では行かなさそうだね、私にとっては今後の楽しみが増えたよ。
実は、君たちを見ていると何故か向上心が芽生えてきてね。習得できるまで自分で試行錯誤して頑張ってみるよ。ありがとう。」
「いえいえ、オレの説明でわかってもらえたなら良かったです」
う、うぅ、話が高度すぎて、僕だけ置いてけぼりを食らってるよ。
頭をフル回転させて何とか会話を理解するので精いっぱいだ。
「クーフ、何か表情が硬いが、なんとなくわかったか?わからなかったら、一緒に実践しながらやっていこ!」
「うん!ありがとう、リンキー!」
やっぱり、リンキーは心優しい子だな。僕がリンキーを支えていくつもりだったけど、逆に支えられちゃってるよ。ありがとう。
この後、エルプーリさんは「これからお昼の時間は二人で魔法の応用やオプション効果についての訓練に励むこと」と告げ、仕事へ戻っていった。
それからこの日の残りの時間はオプション効果を使うために何の属性に何の効果を付けるのかを考えた。考えに詰まったときにはリンキーに風魔法で落ち葉だけを舞い上げるオプション効果の魔法を実践してもらい、どうすれば良いかイメージをしながら過ごし、その日は計画を立てるだけで時間が過ぎた。
翌日から色んな仮説を立てまくって、実証実験をひたすら行い、魔法研究のような生活が始まるのであった。
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魔法研究の日々に明け暮れるようになってからのお話。
クーフはまだ知らなかった。女子たちの噂話と結束力を。
クーフは教会に通っている女子から絶大な人気があったのだが、ある日突然先生をしなくなったことから女子たちの間ではまことしやかに囁かれている噂があった。
それは“クーフに特定の女が出来たのでないか”という噂だ。
噂というのは小さなコミュニティほど広まるのが早く、なぜか信じられてしまう傾向にある。
これは自分が違うことを言って仲間外れにされたくないという心理が働いているとも言われている。
そして女子たちの間ではこうも言われていた。
“私たちはクーフに弄ばれた”
そう、全くもって根も葉もない噂である。少し優しくされただけで勝手に惚れて、何もされなくなったら勝手に振られたと感じて、挙句の果てに自身の正当化の為に、勝手に弄ばれたと騒いでいるだけなのだが。
こうしてクーフの知らないところで、女子たちからの人気が急下落していたのである。
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