第30話 のちに大親友となる男との出会い
僕は7歳になった。これまでは同世代が居なかったが、どうやら明日、僕と同い年の男の子が教会に入ってくるようだ。
それを聞いた僕は”初めて友達が出来るかも?”と思い、ワクワクしていた。
だが今日、子供たちが噂をしていた内容で気になることがあった。
これはとある女の子たちが話していた内容だ。
「ねぇ、あした入ってくるリンキーって男の子。実家が王都にあって、親が商人らしいよ?村で一番大きな商会を潰しに来たってお父さんとお母さんから聞いたわ」
「あら、それはひどいわね。村の商会ってナガリオさんがやっているナリガリ商会でしょ?村人にとって大切なところよね。何だか嫌ね」
こんな感じの話だ。ナリガリ商会はカンテナ姉ちゃんの婚約者のゾーシンのお父さんがやっているお店で、僕も前にお鍋をプレゼントしてもらったことがあるし、何より親戚となる大切な人たちであり、大切な場所だ。
だけど、7歳の子供が商会を潰すだなんて考えられないから、ただの噂で決めつけちゃダメだよね。
僕は評判や噂話で会ったこともない人を良いとか悪いとか判断はしないようにしている。なぜなら、そこには誰かの主観的な感情が入っていることがほとんどだからね。
ここの子供たちは女の子たちが話していた内容をそこら中で話していたから、”明日、何も事件が起きなければいいけど”と思いながら、その日はいつものように終えた。
◆
翌日の午後。
エルプーリさんと一緒に7歳くらいの男の子がやってきた。
ちなみにその子の見た目は金髪ウルフカットの碧い目をした超絶イケメンだ。
僕もイケメンなはずだけだけど、明らかに負けてる感がある。
そして、エルプーリさんから新しく一緒に勉強をする子の紹介がされた。
「みんな、聞いてほしい。今日から一緒に学ぶことになった、リンキー君だ。みんな仲良くしてやっておくれ」
「「「はーい」」」
「では、リンキー君。自己紹介をしてくれ」
「はい!リンキーと言います。家の都合で王都から親戚の家があるこの村に引っ越してきました。
たくさん友達作りたいのでよろしくおねがいします。」
そう言ってリンキー君は頭を下げた。
パチパチパチパチ。
盛大な拍手が起きたので、僕の昨日の考えは杞憂に終わったようだ。
「じゃあリンキー君。今日は勉強しなくて良いから、みんなとたくさんお話しして、まずは慣れていってね」
「はい!神父さま。ありがとうございます」
「じゃあクーフ君、リンキー君にこの教会のことを教えてやってくれないか?」
「はい、わかりました」
それからエルプーリさんは退出していった。
僕はリンキー君に挨拶をした。
「こんにちは、クーフです。7歳です。よろしくね」
「リンキーです。同い年なんだね、よろしくね」
「同い年なんだ。僕、ここで同い年の子が居なかったからすごくうれしいよ」
「僕もここに来るまで、すごく不安だったけど、クーフ君は優しそうだから、うれしいよ」
「あ、クーフ君じゃなくて、クーフでいいよ。同い年だし」
「ありがとう!じゃあ僕、・・・オレのこともリンキーでいいよ」
「ありがとう!ちなみに僕はここで文字の読み書きと計算の先生としてお手伝いをしてるんだ。
リンキーは王都に住んでいたってことは家庭教師の人が居て、お勉強していたの?」
「うん、家庭教師が居たよ。だからオレは読み書き、計算はある程度できるよ。というかクーフはここで先生をしているんだね。すごいね!」
「ううん。たまたま覚えることが得意なだけだったからだよ。それより、リンキーは読み書きと計算できるのに教会に来たんだね」
「・・・うん。ちょっとね、事情があっていまは両親とは一緒に住んでいなくて、親戚の家に預けられてるんだ。だからお昼の間は“教会に行ってなさい”って叔母さんから言われてね。
あ、でもね!今日、クーフと出会えたから良かったよ」
何やら、深い事情がありそうな雰囲気だ。
まだ出会ったばかりだから、聞かない方がいいのか。それとも逆に誰かに話した方が気持ちが楽になるのか。しっかり見極めながら、話さないとな。
「そっか。もし、何か困ったことがあったり、なかったりしても気軽にお話ししてね」
「ありがとう」
それから僕は教会での一日の流れや設備について、リンキーに説明をした。
そのとき、他の子供たちがチラチラと僕らの方を見ていたけど、たぶん新しい子が珍しいだけだろうと僕はあまり気にしていなかった。
だけど、翌日からリンキーに対するあたりがだんだんと強くなっていった。
リンキーが来てから1週間が経過した。
初日とは違って、いまではお勉強の時間中であっても、リンキーの方を見ながら、陰口を叩いている子供たちがかなり増えた。それも男女関係なく。
エルプーリさんやシスターたちは中立の立場があるため、何も言わないが、今の雰囲気をあまりよく思っていない表情をしていた。
そんな日々を過ごしていたからか、リンキーの表情が暗くなっていた。僕はリンキーが来た初日はずっと一緒だったけど、翌日からは女の子たちへ教えていたので、勉強が始まる前と終わったときにリンキーと話す以外は接点がなかった。
だけど、このままではいけないと感じたので、シスターにお願いし、僕はリンキーと一緒に居ることにした。
「リンキー!今日は一日、僕と一緒だよ」
「あ、クーフ。オレのことは構わなくていいよ。勉強はもう出来るから、もらった課題をずっとやっていくから他の子たちを教えてあげて」
リンキーはどうやら僕の立場を気にしてくれてるようだ。
根が優しい子なのにどうしてみんなからこんなにもイジメのようなことをされているのか。
僕は商会が関係していそうなのは何となくわかっていたつもりだったが、実はまだこのとき、本当の意味でリンキーが暗くなっていた理由についてはわかっていなかった。
「うーん、よしっ。今日は僕と二人で教会の外で勉強をしよう!」
「え、いや、あの。」
戸惑っているリンキーの腕を取り、僕はシスターへ「課外授業してくる」と告げ、外へ出てきた。
「ふぅー、やっと二人きりになれたね。あ、変な意味じゃなくてね」
「ははっ、そんなことわかってるよ」
やっと、リンキーが笑ってくれたことに僕はホッとした。
「やっぱり、あの教室だと息が詰まっちゃうよね」
「う、うん。それよりいきなり外に出てきて大丈夫だったの?」
「大丈夫だよ。たまに課題授業って言って外で勉強を教えることもあるからね」
「そうなんだ。でもオレと一緒に居たら、クーフに迷惑掛からないかな?」
「迷惑?大丈夫だよ、僕は教会では結構馴染んでるし。
それよりも僕はリンキーが嫌な思いをすることが嫌なんだ。それと僕はあまり世間のことがわかってないんだけど、どうしてみんなはリンキーに対してああいった態度を取ってるの?あ、言える範囲でいいんだけど」
「ううん、ありがとう。オレがわかってる範囲でしか答えられないけど、聞いてくれる?」
「うん!もちろん!」
そうしてリンキーの家庭の事情とこの村の事情を知ることになったのだが、リンキーの置かれている状況を聞いたとき、僕はどこにぶつければいいのかわからない憤りを感じることになったのである。




