第2話 現代から剣と魔法の異世界へ転生
目が覚めると俺は赤ん坊になっていた。
確か俺はぼったくり店を論破しようとしていたはず。いや、推理が外れて殺し屋にやられたのか。そういや「神をなめるでない」とか言われたような気がするな。
その割には前の記憶がある。ん、もしやこれは、いやこれが俗にいう転生というやつか。
ぷぷぷっ。これはチート生活が待っているな!
とりあえず、俺の目の前には両親らしき人たちが何か言っているようだが、まったく言葉がわからない。
しばらくは心理学を使ってちょうど良く手のかかる赤ちゃんでも演じて、言葉を覚えて、この世界がどんな世界かを調べるか。
時は流れ、今日僕は3歳になった。
どうやら名前はクーフというらしいのだ。赤ちゃんらしくしていたら喋り方まで変わってしまったよ。
ちなみにこの世界は容姿端麗が標準のようで僕も該当し、髪色は黒が強い青色でウルフカットみたいな感じで瞳の色は青色のクリクリおめめなのだ。
それから知ったこの世界のこと。
まず良いニュースからいうと、どうやらよくある剣と魔法のファンタジーの世界のようだ。
そして悪いニュースは僕の家は農家でしかも超貧乏ということ。
さらに僕は姉、兄に次ぐ3番目の子であり、どうやら家を継ぐことがなく、そのうち家を出なければならないということ。
これが前世の行いが反映された神罰というやつか。
しかもご飯が美味しくない。まずくはないが、美味しくないのだ。しかも、農家なのに土地が悪いせいか、僕の家は芋しか育てていないようで毎晩芋、芋、芋である。茹でるか焼くかの2択。幸い塩はあるが、芋の栄養価が低いのかとにかく美味しくない。
そしてこの世界は栄養価の概念がないのか、そんな芋でも体がやせ細ることがなく、父さんはがっちり体型で超が付くほどの健康体だ。魔素とか存在してて関係しているのかな?そのあたりの知識も幼すぎて、見識を広げる術がない。
ただ、両親の話している様子から魔法は誰でも使えるみたいだ。というより生活魔法を両親は使っている。
水を出して洗い物をしたり、風で服を乾かしたり、小さな火を出して薪に火を着けたり。
なので、僕が魔法を使いたいとお願いしたら、5歳までに魔法を使ってしまうとスキルが与えらないと説明されたのがつい先ほどのことだ。
しかも魔法を使うにはかなり体力を使うそうで、たとえ魔法が使えてもすぐにバテ、倒れ込んでしまうらしい。そこで僕が5歳になって魔法を覚えられるようになるまでの間、体を鍛えるために、3歳なのに畑仕事のお手伝いをすることになり、父さんと畑に来ていた。
「さあ、クーフまずは水撒きをするぞ」
「はーい!僕、水撒き隊の隊長やりまーす!」
「お、クーフは隊長をやるのか。ならこの特別なじょうろを渡そう。」
父さんはニヤけながら、僕の頭をなで、じょうろを渡してくれた。
ぷぷぷっ。素直でかわいい子ども作戦大成功だ!
「え、え、え、父さん。このじょうろ全然重くないんだけど、どうなってるの?」
「そのじょうろは魔道具だからな。水は無限に出てくるし、重さは3歳のクーフが持てるくらい軽いんだぞ。ちなみに栄養付与効果があるからその水で育った作物はなんでも栄養満点になるんだぞ」
そこで初めて知った。芋だけでも生きていける理由を。
そのせいで芋の改良が進まないことを。
「そっか。というかこれでどうやって体を鍛えるの?」
「じょうろで鍛えるというより、まずは水撒きをこの畑全体にすると、足腰が鍛えられるんだ。まずは下半身から鍛えないとな。」
と言いながら頭ポンポンする父さん。
ちなみに畑の広さはテニスコート1000面分、東京ドームでいうと6個分ほどある。
「え、この小さなじょうろだけで水撒きしているの?」
「そうだぞ。だから父さんはこんなに体力がついたんだぞ。それにな、いまは畑をさらに広くするために鍬で地面を掘り起こし耕しもしているんだぞ。まだクーフに鍬は早いからまずは水撒きからだな。とりあえずはあの端の区画から始めようか」
父さんが指さしたところはテニスコート10面分ほど。とてもじゃないけど3歳になったばかりの子に厳しすぎやしないだろうか。そう思いながらも父さんが満面の笑みで僕に言ってきたので反論できなかったよ。というか畑広くする前に芋を美味しくして欲しい。
「わ、わかった。僕、今日から水撒き頑張るね!」
そうして始まった足腰を鍛えるトレーニング。
初日から気合を入れて頑張ったよ、水撒きに8時間かかるとは。こんなのサラリーマンの労働と一緒じゃないか。
まあ3歳児の体力なので半分以上は休憩しながらではあるのだけれども。
そして水撒きから2か月が経過した。
だが水撒きにはまだ7時間ほど掛かっている。日々何とか工夫しなければいけないと思いながらもあまり成長を感じられない。
そんなある日、ふと前世で見ていた某アニメの“あの気を溜める”をすれば強くなった気になり、思い込みの力(プラシーボ効果)で、少しはマシになるのでは?と思いつきで始めた。
しかし、それが今後の僕の人生を大きく変えることになるとは。