第24話 聞き方ひとつで答えが変わる
夕食後、僕は今日の出来事を家族に話していた。
そこで魔力を感じることが出来なかったことを言ってみた。
「・・・という感じで、1時間くらい魔力を感じるための訓練をしていたんだけど、いまいちわからなかったんだよね」
「あら、大変だったのね。うちで魔力を扱えるのはアルフだけだものね。」
うん、母さんはいつものように能天気で朗らかだ。
「そういえば、そうだったね。父さん、魔力を感じるにはどうしたらいいの?」
僕は前にも聞いたことはあるが、新たな発見がないかを確認するためにもう一度聞いてみた。
「ん?魔力を込めるとは魔力を込めるだけだぞ?」
うわっ、前と同じ答えが返ってきたよ。
うーん、どうしよう。ん?待てよ。確か脳筋タイプには脳筋タイプに合わせた質問方法があったな。
「そっか、そういえば、父さんは生活魔法と感知魔法以外に何が使えるの?」
「他には攻撃魔法として火魔法、水魔法、防御魔法として土魔法はある程度使えるぞ」
意外とたくさん使えるんだ。やっぱりセンスあるっていいよね。それもある意味何かのスキルなんじゃないかと思っちゃうよ。
「じゃあ、父さんは水魔法を使う時どんな感じで使っているの?」
僕はイメージしやすそうな水魔法の使い方を聞いてみた。
「そうだな、水魔法で手から水を出す場合は体全体に水が巡っているイメージをして、その水が手から流れ出るようにしているな。ただ、全部が出るというより体を巡っている一部が出ていくという感じだな」
おぉ、魔力のことを聞いたときとは表現が全然違ってる。というかそれが魔力を感じるという答えな気がする。
やっぱり脳筋タイプには具体例を持って質問しないと、こちらの欲している意図が伝わらなかったみたいだね。というより僕が父さんの事を脳筋一筋で何も考えていないんだろう、と勝手なイメージで決めつけていたせいで、気づくのに遅れたんだけどね。
これからは傲慢な態度を改めて、何か知りたくて尋ねるときには“教えてもらう”ように尋ねるのではなく“聞き出す”ように尋ねるといった姿勢を意識していこう。
その点、エルプーリさんに関しては察しが良すぎるから、こっちはこっちで言動には気を付けないとね。
「そうなんだ。なんか父さんの話を聞いて、成功する気がしてきたよ。ありがとう!」
「お、そうか。なら、明日にはできるだろう。クーフは天才だからな!わっはっは」
この明るさと母さんの能天気さが僕たち姉弟が現実的な感覚を持つ要因になったんだろうね。
まあそれはさておき。さっき父さんから聞いたことを今すぐにでも試したい気持ちはあるけど、体を休めることも大事だから、それは明日にしよう。
というか、お腹も満たされ、なんとなくでも解決方法が見えてきたから眠たくなってきちゃったんだよね。
翌朝。
僕は昨日、相当疲れていたのか、めちゃくちゃ熟睡出来たよ。まあいつも熟睡してるんだけどね。
元気いっぱいになった僕は日課の水撒きを終え、教会に来ていた。
「おはようございます。エルプーリさん」
「おはよう!クーフ君。早速だけど、昨日の続きをやっていこうか。まずは魔力を感じて、それから土魔法を使っていこう。」
「はい!よろしくおねがいします!」
僕は今日、畑の水撒きの時にふと思い出したことがある。
それは僕が身体強化魔法を使ったところをエルプーリさんに見られた時のことだ。
そのとき、エルプーリさんは「キレイな身体強化魔法を纏っていた」と言ってたんだよね。それって、僕が身体強化魔法を使う時に全身に血が巡るイメージで使っていたことが関係していると思うんだ。
昨日の父さんの水魔法を使う時も体全体に水が巡るイメージって言っていたから、たぶんこれが魔力を感じるということだと思う。
あと身体強化魔法がキレイだった理由としては筋肉が反応しやすい状態というのは心拍数を上げること、筋肉への血流量を増やすことをイメージしていたのが関係していると思うんだよね。これが魔法の原理に繋がるものだと感じる。
勘の良いエルプーリさんへは、何を追及されるかわからないから、とてもじゃないけどいまはまだ詳しいことは聞けないけどね。
それから僕は魔法訓練の為、誰にも見られないよう教会の裏手にやってきた。
エルプーリさんは神父さまとしてのお仕事があるから、それを終えたら見てくれるようだ。
「よし、とりあえず漠然と魔力を感じるのは難しいから、父さんから聞いた水魔法のイメージでやってみよう」
それから僕は目を瞑り、全身に水が流れるようなイメージをした。
すると、身体強化魔法を使うとき感じていた似たような感覚を得た。
それはうっすらと全身を薄い膜に覆われるような感じだ。そこで僕は一度、体の力を抜き、目を開けた。
「今のが魔力の感じなのかな?」
そう考えているとエルプーリさんが走ってやってきた。
「クーフ君!魔力を感じられたみたいだね。しかも水魔法だなんて」
ん?どういうことだ?
「あ、あの確かに魔力っぽいものは感じたけど、水魔法?」
「あぁ、言ってなかったね。私は感知魔法が得意でね。一度会ったことがある人なら感知魔法の範囲内なら誰がどんな魔法を使おうとしてるのかわかるのだよ」
す、すごい能力だ。
「感知魔法ってそこまでできるんですね」
「あぁ、ただ感知精度をあげると、感知範囲は極端に狭まるけどね。
いまは教会の裏手に誰もいかないよう普段から皆が発している微力な魔力を感知するようにしていたんだ。そしたらクーフ君の魔力の質が変わって、水魔法の魔力を纏ったから、不思議に思って慌ててきたんだ」
それから僕は水魔法のイメージすることになった理由をエルプーリさんへ話した。
「なるほど。アルフからそんなアドバイスがあったのか。アルフも成長しているんだな」
そこでエルプーリさんは何故か物思いに耽っていた。
「エルプーリさん、それで魔力を感じるって決まった魔法をイメージしなくてもできるの?」
「あぁ、できるよ。というより、魔力を感じてから魔法を覚えるものだと思っていたけど、いまのクーフ君の方法を聞くと、そちらの方がしっくりくるね。これは魔法についての認識や教え方を改める必要がある気がするな。」
そういったエルプーリさんの顔は実に満足気になっていた。
「そうなんだ。じゃあ僕はまず土魔法を学んだ方がよさそうだから水魔法を使ったイメージで、先に土魔法を試してみるね」
おそらく、水魔法は使えるようになっているんだろうけど、まずは魔力についての実証をしてみたくなった僕は土魔法の発動を試ることにした。
土が全身を巡るイメージが難しいと思った僕は泥をイメージして、ゆっくりと泥が全身を巡るイメージをしてみた。
すると先ほどと似たような魔力の流れを感じることが出来たので、そのまま魔法の発動を試してみた。
「お、おー!何か出た!?」
「クーフ君、やったね!土魔法が使えたね。でも土ではなく、いきなり泥を発動させるとは、びっくりしたよ」
そう、僕は土を出したかったんだけど、なぜか泥になってた。
「エルプーリさん、何で僕の土魔法は泥になったんだろう?」
「泥というのは実は土魔法と水魔法の複合魔法になるんだ。なぜ、いきなり複合魔法が使えたのかは私にもわからないが、クーフ君が魔法発動前に感じた魔力の質としては土魔法と水魔法が混ざった気配がしていたよ」
「そうなんだ」
んー、なんとなくだが、『魔力≒全身を巡るもの』な気がしてきた。僕は複合魔法どころか普通の魔法もよくわかっていないのに使えたのは、最初から泥をイメージしていたからな気がする。
なので、今度は土というより砂が巡るイメージで土魔法を試してみる。
「エルプーリさん、もう一度土魔法をやってみてもいい?」
「あぁ、もちろんだ。」
「ありがとう」
それから砂のイメージで実践すると、手から砂が出てきた。
「クーフ君、すごいね!土魔法使えてるね」
「ありがとう。昨日たくさん土について観察したから、まずは砂をイメージしてやってみたよ」
その後、僕は固めの土、柔らかめの土などイメージを変えて、土魔法を試したところ、すべて出来た。ただ、柔らかめの土は肥料がたくさん入ったものをイメージしたから、思った通りのものが出来たけど、固めの土は漠然としたイメージだったからか砂利と土が混ざったようなものが出来てしまったよ。
「うん。クーフ君、もう土魔法の初歩は十分に出来たようだね。じゃあ一度、部屋で座学をやろうか」
エルプーリさんはにこやかな笑顔で僕に話掛け、一緒に部屋へ向かった。
「エルプーリさん、次の座学は違う魔法のことを勉強するの?」
黒板のある部屋に着いた僕は椅子に座るなり、早速質問をした。
「いや、魔法ではなく、魔力から各属性への魔法の変換についての話をするよ」
「魔力の変換?」
ん?どういうことだ?魔力から変換?
僕はもう魔法が出来てるけど、本当の使い方は違うのかな?
「まあクーフ君が戸惑うのも無理がないな。魔力の変換について教える前に魔法の発動が出来てしまったからね」
「あれ?でも魔力を感じてから土魔法を発動させる訓練じゃなかったの?」
「うん。本当はね、魔力の流れを感じるところまでをやってもらって、そこまで出来たら、“土魔法を発動して”と言って、全然できない状態を確認してもらおうと思ってたんだ。
それでその発動プロセスを今回の座学で説明しようとしていたんだ。」
「あ、なんか、ごめんなさい」
「いやいやいや、さすがはアルフの息子だと思ったよ。感覚で出来る人はなかなか居ないからね。でもね、魔力の流れを知り、魔力変換についての知識を持っていないと魔力効率について説明しても理解が難しいのだよ。だから、今回説明するんだよ」
「魔力効率?よくわかってないけど、ちゃんと理解するのでよろしくお願いします」
うん。どうやら蛙の子は蛙と思われたようだ。僕が父さんの息子と思ってくれるのは嬉しいことだけど、脳筋と一緒にされるのは、ちょっとね・・・。
それからエルプーリさんによる魔力変換と魔力効率についての座学が始まったのだが、これを知った僕は先ほど使えた魔法がいかに常識外れであったかを知ることになったのである。




