第16話 相手に合わせて手法を変えよう
先生となって2日目を迎えた。
昨日はもう少しというところでジメール君の心を掴み損ねたから、今日は注意していこう!そう思って、教会の扉を開けたところで、フォーシラさんから声を掛けられた。
「クーフ君、ちょっといいかしら?今日はジメール君へ教えるのではなく、別の子へ教えてもらってもいいかしら?」
「あ、うん。でも何で?」
「・・・いや、色んな人を教えてもらえたらいいかなって。」
どうやら、やらかしてしまったらしい。
ジメール君が何かしらクレームを入れたんだろな。まあ仕方ないか。
昨日は昨日、今日は今日で割り切っていこう!
「わかったよ。今日は誰を教えたらいいの?」
「今日はバックス君をお願いするわ」
「バックス君ね。わかった」
そうしてバックス君を教えることになり、教室へ入るとジメール君が友達とのお喋りを少しやめて、僕のことをちらっと見た。そしてその後、また友達と話を再開していた。
どうやら、相当根に持っているみたいだ。これは時間が解決してくれるのを待つしかなさそうだ。
だけど、一応挨拶はしておく。
「ジメール君、こんにちは」
「・・・」
「昨日は僕が突っ走っちゃってごめんね」
「・・・」
「じゃあ勉強頑張ろうね」
「・・・」
くそぅ。完全なる無視じゃないか。
でも僕が話しかけるのを諦めたら、このギスギスとした感じはずっと続くんだろうな。まあ声掛けるのはタダだし、続けていこう。
軽くショックを受けつつも僕はバックス君のもとへ向かった。
「こんにちは、バックス君。クーフです。よろしくね」
「ども、こんにちは」
バックス君は素直そうな子でよかった、年齢はジメール君と同じだそうだ。
見た目は地味で体の線が細いサブキャラタイプだけど、見方によっては癒し系にもなりそうだ。
今日は雑談なしで、丁寧に教えていくことにしよう!
~レッスン2~
相手の実力を確認して、相手に合わせた教え方をしよう
「じゃあバックス君、いきなりだけど今どれくらい読み書きと計算が出来るのかを知りたいのでテストをしよう」
「ういっす」
そして、それぞれ10個の問題をやってもらった。
ちなみに問題を作るときは木板をもらえるのでそれに書いて出していた。もちろん回答するのは砂に描く方法だ。
それからバックス君には問題を解く時間については実力を知るために時間制限なしでテストに取り組んでもらった。
テスト内容は30分くらいで終わる程度にしてある。
ちなみに僕なら5分で終わるけどね。
そしてテスト開始から30分が経過した。
どうやらまだテストに取り組んでいるようだ。ここで声を掛けて焦らせてもミスを誘発する可能性があるので、待つことにした。
その間、僕は今後のことを考えて、様々な問題を木板に書いていた。
そしてさらに30分が経過した。
あまりにも時間が掛かっているようなので、後ろからテストの進捗を覗いてみた。
すると、そこには丸とか三角とか四角だとかの図形を描いていた。
「ねぇ、バックス君。それは何を書いてるのかな?」
僕は顔が引き攣るのを抑えながら、優しく問いかけてみた。
「うっす」
うん。こりゃだめだ。僕は思わず天井を仰いでしまった。
世の中、自分がやりたいこと以外は全くせず、とりあえず時間が過ぎるのを待つ人がいたのは前世でも同じだったな。
まさか、バックス君がそうだとは思わなかったよ。
僕は自身のやる気が空回りしているのを隠しつつ、バックス君へ問いかけてみた。
「バックス君、10+5はいくつになるかな?」
「・・・うっす。」
「もしかして計算は得意でないのかな?」
「・・・・・・うっす」
ここで相手を馬鹿にしてはいけない。
誰しも最初は出来ないものだから。教える側が雑になってしまうと教えられる側は理解できることもできなくなるからね。
なので、僕は少し方向性を変えてみることにした。
「じゃあ読み書きにしよう!」
「うっす!」
おっ、どうやら自信がありそうだ。
ここは慎重に出す課題を考えて、と。
「じゃあバックス君、自分の名前を書いてみよう」
「うっす!」
そしてバックス君は砂地に書き始めた。
「出来たっす!」
「おー!キレイに書けているね!」
「うぃっす!」
どうやら、計算は苦手なようだけど、文字は書くのが得意そうだ。
というより、めちゃくちゃ字がキレイなんだけど。
そういえば、さっきの丸とか三角とか四角もめちゃくちゃキレイだったな。
芸術家としての才能があるみたいだ。
先ほどの問題には読み書きの問題もあったけど、恐らく計算問題を見た瞬間にすべてのやる気を失くしたんだろうな。
とりあえず、得意なことから始めていこう。
「じゃあ次は好きな食べ物の名前を書いてみよう」
「ういっす!」
こうして、物をイメージしながらの課題を出して、バックス君への読み書きの勉強を教えていった。
もちろん、書けない文字もあったりしたけど、バックス君の興味あるものを主体として読み書きの勉強をしたおかげか、かれこれ1週間ほどでかなり出来るようになった。
それは他の子供たちがバックス君の成長に驚くほどであった。
そんな日々の中、ジメール君が僕に向ける視線が徐々に陰湿なものへとなっており、とうとうとある事件が発生した。




