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侯爵令嬢の災難  作者: 千夜
後悔先に立たず、識るのは迅速に
18/20

智者は先達に学ぶ

修正


前話の冒険者のくだりですが、この世界→この国に編集しています。

諸外国には普通にいたりすることを失念してました。

「「お嬢様!」」


 カタリナとソフィーがあまり大きくはないが、力の籠った声を上げ私の方へと向く。

 ソフィーは驚愕と困惑の混じった表情をしており、カタリナは取り繕っているので表情からは読み取れないが、概ねソフィーと同じ感情だろう。


 和風……と括っていいのかはわからないが、和風の女性は私のスカウトについてはある程度の予測をしていたのか、少しばかり目を開いたのちに表情を戻てこちらが続きを促すのを待っている。


「先ほどの発言、何かこの瞳について知っていると推測しました。そのことについてお伺いしたいこともありますが、まずなにより少しお話をいたしませんか」


 二人を手で制したあと、話をする場を設けることを提案する。

 彼女が応じてくれるかはわからないが、私の天眼に映った以上はどこかでまた邂逅することになるのだろう。その時にでもいいが、少しでも未来視についての情報が手に入るならこの機会を逃す手はない。


「構わない。貴女がそうするべきだと思ったのなら、私もそれに身を任せるべきだ」

「ありがとうございます。カタリナ、この辺りで歓談に適しているカフェはあるかしら」


 ソフィーかカタリナに近くの個室がある喫茶店に案内をお願いしようと思ったら、ソフィーは頬を少し膨らませ怒っているように見えるし、カタリナは呆れたような表情をこちらに向けていた。

 だがすぐに私に任せることにしたのか、私を信用しているのかはわからないが、案内してくれることにしたようだ。


「かしこまりました。こちらに」


 カタリナが先導して、ソフィーは私の右後ろに控える形で歩き始める。二人ともあからさまに初対面の方に向ける態度じゃないと思うが、私の魔法のことを鑑みると彼女のことは警戒して然るべきなのもまた事実だ。

 気を悪くしていないといいのだが……。





 案内されたカフェはオープン席やブース席が主ではあるものの、貴族区が近いこともあり個室も何室か用意されている。

 クラシカルな雰囲気のある店内は、やはりというかきちんとした背格好の客しかない。

 一室を借りることが出来たようで、今はそこに私と和風の女性が対面で座っており、ソフィーが私の後ろ、カタリナも私の後ろだが入口に近いところで外と中の両方を警戒している。


「このような形でお連れすることになってしまい申し訳ございません。私はアルバート侯爵家が長女、ステラレイン・アルバートと申します。貴女のお名前を伺っても?」

「……ユウ、そう呼ばれている」


 ユウさんは少しだけ考えるように顎に手を置いた後にそう答える。

 「呼ばれている」……か。


「ではユウさん、いくつかお聞きしたいことがあるのですがよろしいでしょうか? 無論お答えできないものに関しては、拒否していただいて結構です」

「ああ。私もできうる限りの協力をしよう」

「では、まずはこの瞳についてなのですが」


 身元とか出身とか色々と他に気になることが多々あるが、ユウさんの言った「道を整える力」というのはいったいどういうことだろうか。


「瞳に魔力を通すことで、普通ならば見えないものを捉えられる者というのは、貴女が思っているよりも多いかもしれない。それら特殊な瞳は『魔眼』と呼ばれている」

「……それは、諸外国には魔眼持ちの方がそれなりにいらっしゃるということですか?」

「ああ。だがその効果は、肉眼に毛が生えた程度のものがほとんどだ。無属性魔法の延長線上のようなものだろうか。貴女のような能力を持っている魔眼使いというのは、世界中を見ても数えるほどしかいない」


 魔眼持ちがたくさんいたら、魔法理論の授業でもそれについて触れるだろうから、ユウさんの言った通りなんだろう。


「ユウさんの友人も強力な魔眼を持っていたということでしょうか」

「ああ。それも貴女の持っているものと似たものだろう」


 私と……同じ魔眼……?

 つまり他にも未来視が出来る人がいるってことになる。自分だけの能力と自惚れてたわけじゃないけど、先輩がいるということはかなりデカい情報だ。

 どうやって使用しているのかとか、有効的な使い方はなんなのかとか、聞きたいことは山ほどある。


「その方は今どちらに? 出来ればお会いしてお話をしたいのですが」


 その言葉にユウさんは、ほんの少しだけ瞳が揺らいだ気がした。

 体を背もたれに預け、少し悲しそうな表情をして天井に目線を預けながら続ける。


「あの人はもういない。随分と昔の話だ」

「っ……それは、申し訳ございません」

「気にするな。あの人も私も、そういう道を選んだだけだろう」


 そうは言われても、悲しい思い出には違いないだろう。その証拠に、ユウさんの表情や雰囲気が若干だが哀愁を纏ったものになっている。

 そうなると、ユウさんが私にアドバイスをくれたのは友人と似た魔眼を持っている私を気にかけてくれたからとかだろうか。


「『将来、私と同じような魔眼を持った子がユウの前に現れるから、その時は力になってあげて』 あの人は私にそう言っていた」


 それは……捉え方によっては呪いの言葉にもなる。

 ユウさんとそのご友人の関係はわからないし、よく知りもしない人のことを悪く言うのは良くないことだと理解しているが、聞いている感じかなり仲がよかったのだろう。その友人から言われた言葉は残り続けることになるんじゃないか。


「私のことは気にしなくていい。確かにあの人の言葉がきっかけだが、自分の意思でやっていることだ」


 ……というかさっきからしようとしていた質問を先回りして回答されているような気がする。

 もしかしてユウさんは……


「ユウさんも魔眼持ちなんですか?」

「ああ。私の眼は物事を見通す力だ」


 やっぱりか。

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