第27話「エルフ最強戦士との決闘」
「――ほぉ、お前が魔王を倒したとかいう、英雄か? ただの小娘にしか見えんが」
エフティヒアの国王の前へと連れてこられると、早速馬鹿にした態度を取られてしまった。
どんな酷いおじさんかと思っていたら、美青年なのだから嫌になっちゃう。
さすがエルフってところだけど……いったい何歳なんだろ……?
エルフの王ってことだから、二百後半くらい?
でも、ミルクちゃんやクルミちゃんは凄く若いし……。
まぁでも――私のほうが、遥かに年上だね……!
年上をちゃんと敬いなさい……!
と、心の中でおどけてみる。
そうでもしないと、イライラでやばそうだ。
「お姉ちゃん、名乗りませんと……」
考えごとをしていたせいで、隣に立っていたアリシアちゃんに促されてしまった。
ちなみに、ミルクちゃん、クルミちゃんの二人には外で待ってもらっている。
いくらスキルで変装を隠しているとはいっても、さすがに親にはバレてしまうだろうから。
「あっ、そうだね」
私は笑顔でアリシアちゃんへと頷き、国王を見る。
「この度は入国を許可して頂き、ありがとうございます。私は――」
「あぁ、いい、いい。どうせさっさとお帰り願うのだからな」
カッチーン。
それが、魔王を討伐してもらう相手にする態度なの!?
人を馬鹿にするのもいい加減にしなさいよ!?
そう思うものの、国王には笑顔を向ける。
もしかしたら、額には血管が浮かび上がっているかもしれない。
「お父様、さすがにそれは、失礼にあたるかと……」
怒りを我慢していると、国王の隣に座っていた女性が、国王を諫めた。
髪、瞳共に純白で、浮世離れした美しさだ。
彼女が、ルナーラ姫の言っていた友人らしい。
「はっ、こんな下等生物に、なんの気を遣う必要がある?」
「…………」
「ミ、ミリア様……? 抑えてくださいね……?」
ピリッとしたのが伝わったのか、アリシアちゃんが冷や汗をかきながら私を見てくる。
「大丈夫、気にしないで」
こんなのでも、一応は国を支配する王。
一時の感情によって叩き斬れば、エルフとの戦争が起きてしまう。
さすがにそんな愚かなことはしない。
「さて、我が国最強の戦士と戦い、敗れた際にはお帰り頂く約束だが……準備はいいか?」
国王は、私たちを今すぐにでも帰したいんだろう。
最強の戦士、か……。
エルフは弓の扱いと魔法スキルの扱いに秀でた種族だけど、どういう戦いになるんだろう?
そう思って、最強の戦士とやらが登場するのを待っていると――。
「お呼びでしょうか、国王様?」
腰に剣を携えた、女性が現れた。
……嘘でしょ?
「よく来てくれた、ローテリ。ヒューマンの英雄殿が、是非其方と手合わせをしたいようだ」
いや、私が望んだわけじゃないですけど?
勝手に記憶を改竄しないでください。
「英雄ですか……へぇ?」
ローテリさんというエルフは、ゴミでも見るような冷たい目で私を見てくる。
「面白いですね。英雄を語るということは、よほどの実力があるのでしょう」
口元を緩め、馬鹿にするかのように笑みを浮かべるローテリさん。
よく言うよ。
全然そんなことは思ってない目をしてるくせに。
完全にこっちを見下している。
ただ、油断はできない。
威圧感と殺気は、勇者と比にならないくらいに強い。
むしろ、こちらを舐めてくれている今の状況は、ラッキーかもしれない。
「よろしくお願い致します」
「えぇ、こちらこそ。どちらで決闘を?」
私に合わせてローテリさんは頭を下げた後、すぐに国王へと視線を戻した。
すぐに戦いたいようだ。
「相応しい舞台を用意してある。こちらに来てくれ」
そう言って、国王に連れて行かれたのは――剣闘士が戦う、コロシアムだった。
既に観客席も満席になっており、多くのエルフが集まっている。
しかも、異様な熱量だった。
「殺せぇえええええ! ヒューマンなど、ズタボロにしろぉおおおおおお!」
「汚い下等生物が、よくもエルフの国に足を踏み入れたな!」
「ローテリさまぁ! 今日も素晴らしい試合を見せてくださぁい!」
うん、野蛮すぎる。
これが、あの誇り高きエルフ?
まるで、私が知るエルフとは別の種族みたい。
「はっはっは、昨日告知したばかりというのに、こんなにも国民が集まってくれるとはな。いやぁ、実にめでたい」
なるほど、見世ものにしたくて国王が集めたのか。
ヒューマンがやられるところを見たいエルフたちが集まっているのなら、この熱気にも納得がいく。
だけど、それにしてもやっぱり異常な様子だ。
「ふっ、わざわざ忙しい前線から戻ってきたんだ。数秒で降参などという、つまらないことはしてくれるなよ?」
やはりローテリさんは、私を見下しているようだ。
おかげで、隣に立っているアリシアちゃんの表情が、不機嫌そうなものになってしまっている。
温和なこの子でも、ここまで馬鹿にされると怒るらしい。
「決闘のルールは? スキルの使用はありでしょうか?」
「スキルありでエルフとヒューマンが戦っては、それこそ勝負にならん。剣技で十分だ」
だから『戦士』として、剣士を連れてきたわけか。
一瞬、エルフが自分たちの長所を捨てたのかと思ったよ。
「わかりました。お気遣い頂き、ありがとうございます」
スキルはなしということで、私は常駐しているスキルを解除する。
剣は取られ、代わりに木刀を渡された。
てっきり、剣で戦えと言うかと思ったけど――まぁ、優しさではないだろう。
こっちのほうが嬲れるからかもしれない。
「――お互いが負けを認めるまで、勝敗は決しない。もちろん、スキルを使用しなければなんでもありだ。さぁ、かかってこい」
ステージに立つと、相対するように立ったローテリさんが、私に木刀を構えた。
どうやら審判はおらず、もう開始されているようだ。
「どうした? ほら、ハンデだ。一発打たせてやる」
「それはどうも」
お言葉に甘えて、私は木刀を一振りする。
それによって――ローテリさんの木刀が、吹き飛んだ。
「「「「「……は?」」」」」







