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死に場所を求めて魔王討伐隊に志願したら英雄になりました~千年前にBランク冒険者だった私、現代ではSSランク勇者より強いそうです~  作者: ネコクロ


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第21話「新たな冒険へ」

「それで、話って何かな?」


 隅に行った私は、邪魔が入らないよう《魔法障壁》を周りに張ると、妹ちゃんに笑顔を向けた。


「あっ、えっと……自己紹介、まだでしたよね……?」


 妹ちゃんは人差し指を合わせながら、チラチラと私のことを上目遣いで見てくる。


 なんだろう、小動物みたいでやっぱりかわいい。

 こんなにもかわいい子が、あの凶悪な勇者の妹だなんて本当に信じられない。


「そうだったね。私はミリア・ラグイージ、よろしく」

「あっ……私は、アリシア・ムーティです。よろしくお願いします」


 アリシアちゃんはホッとしたように笑みを浮かべて、ペコリッと頭を下げてきた。

 冒険者にしては、かなり行儀がいい子だと思う。

 もしかしたら、兄の悪い部分を真似ないよう気を付けて育ったのかもしれない。


「アリシアちゃんは何歳なの?」

「十六歳です」

「わぁ……」


 思わず、昔の自分を重ねる。

 私がお姉様のパーティーに入ったのは十五の時だったけど、この子はいつから冒険者をやっているんだろう?

 いろいろとお話を聞いてみたい。


「えっと……?」


 私が何に感激しているのかわからないアリシアちゃんは、困ったように首を傾げてしまう。


「なんでもないよ」


 変に疑われるのは嫌なので、とびっきりの笑顔を返してみた。


「…………」


 すると、なぜか顔を赤らめられてしまう。

 ポーッとしてるけど、大丈夫かな?


「熱でもあるの?」

「あっ、いえ……!」


 心労などによる疲れから熱が出たのかもしれない。

 そう思って心配すると、首を一生懸命横に振られてしまった。

 どうやら勘違いだったみたい。


「それよりも、その……お兄ちゃんがご迷惑をおかけして、申し訳ございませんでした……」


 アリシアちゃんは深々と頭を下げてくる。


『妹に尻拭いをさせるなんて、ほんとクズ兄貴』、と心の中でだけ毒を吐きながら、私は彼女の頭に手を置いた。


「いいんだよ、アリシアちゃんが悪いことをしたわけじゃないんだから」


 そう言って、優しく撫でてあげる。

 この子が気苦労で倒れないか、心配になってしまう。


「ありがとう……ございます……。ミリア様に……そう言って頂けて……心が軽くなります……」


 よほど気にしていたのか、俯いて顔を手で押さえたアリシアちゃんから、ポタポタと涙が落ちた。


 うん、今からもう一回勇者をしばいてこようかな――という考えが一瞬浮かぶけど、ブンブンと首を横に振って吹き飛ばす。


「少なくとも、私やルナーラ姫はアリシアちゃんに責任があるなんて欠片も思ってないから、安心してね」


 実際、処罰を言い渡されたのは勇者一人だ。

 それも騎士団の監視が付き、辺境で暮らさせられるというかなり甘めの処分だった。


 辺境には強い力を持つ貴族がいるため、そちらに監視を任せるんだろう。


「ありがとうございます……。あの、お兄ちゃんの処分がかなり軽かったのは、ミリア様が口利きをしてくださったのですか……?」

「ん? 違うよ?」


 あんなクズを助けてあげようなんて、これっぽちも思わないもん。

 処分が軽くなったのはルナーラ姫の考えだ。


「では、どうしてあのような軽い処分に……? 姫様は、お兄ちゃんをよく思っていませんでしたし……」


 この子はよく周りを見ているんだろう。

 嫌っていることを態度に出しそうにない、ルナーラ姫の気持ちにも気が付いていたらしい。


 まぁ、あれだけ勇者が好き勝手してれば、姫様からも嫌われているだろうと思い込んでいるだけかもしれないけど。


「単純なことだよ。勇者を追放したら、他の国に迷惑がかかるでしょ? そしたら、姫様の責任になりかねないもん」


 あれでも、現代最強といわれた勇者だ。

 対抗できる人がいないところに追いやってしまうと、その地で好き勝手されてしまう。


 かといって、一度『勇者』と認められた者を処刑すると、それはそれで体裁が悪い。

 ということで、一旦猶予を与えたというだけの話だった。


 もし、再度何か問題を起こしたのなら――すぐに姫様に連絡が入り、後のことは私に任されている。

 当然その忠告は勇者にもされており、今はおとなしくなったようだ。


 あのお姫様は、やっぱりただ優しいだけじゃない。


 ……だから怖いんだけど。


「そういうことですか……。辺境に、というのはよかったかもしれません……」


 納得したらしく、アリシアちゃんは弱々しい笑みを浮かべる。


「街に留まってしまうと、嫌な視線に晒されるでしょうから……」


 それもそうだろう。

 元々嫌われていたのに、あんな恥まで晒したのだ。

 私だったら、もう街に足を踏み入れたくはない。


 そのため姫様も、勇者を下手に刺激しないよう辺境へと追いやることにしたんだと思う。

 当然、辺境に入る貴族は頭がいいので、下手に勇者を刺激することもないはずだ。


「これから、どうするつもりなの?」


 私はアリシアちゃんのことが気になり、尋ねてみる。


「えっ……それは……」


 迷いがあるんだろう。

 アリシアちゃんは再度俯いてしまった。


「勇者について、辺境に行くの……?」

「わかりません……。今のお兄ちゃんに付いていくのは怖いですし……かといって、ここに残ったところで……」


 先程の貴族たちの態度を見てわかる通り、歓迎はされないだろう。

 それどころか、勇者の妹というだけでいじわるをされてしまう。

 アリシアちゃんが迷うのも無理はなかった。


「だったらさ、私と一緒に冒険をしない?」


 だから、私は助け船を出した。


「えっ……?」

「今って、ポーションなどの回復薬だけでなく、防具も武器も、正直言ってやばいんだよね。こんな状態で冒険者やるなんて、自殺行為だよ」


 ポーションは泥水かと思うほど濁っていて、あんなの回復薬じゃない。

 鎧に関してもやけに軽いなと思ったら、使われている鉱石は私たちの時代では最下級のものだった。

 支給されたものだけが――という可能性も当然考えたけど、どの鎧でも同じ鉱石が使われているらしい。


 当然武器も、私から見ると最低レベルのものばかり。


 これで魔物と戦うなど、無謀だ。


「だからさ、そういうのを改善して、多くの冒険者がしっかりと戦えるようにしようと思うんだ。そしたら、凄い功績になると思わない?」


 正直言うと、今の私は功績なんて興味がない。

 これ以上功績を積み上げなくても、優雅な生活が約束されているからだ。


 だけど――何か問題が起きた時、真っ先に駆り出されることになる。

 それは、今の冒険者たちの実力が低すぎるせいだ。


 そんなのごめんなので、落ち着いていられる今のうちに体制を整えさせてもらう。

 そうすれば、私はかわいい女の子たちに囲まれながら、優雅な隠居生活を送れるはずだ。


 ――生きる意味を失っていたけど……ミルクちゃんやクルミちゃん、アリシアちゃんにチヤホヤされる生活は最高だと思う。


「私を、連れて行ってくださるんですか……?」


 上目遣いで、意外そうにアリシアちゃんは見つめてくる。


「私一人だと大変だし、勇者パーティーでやってきたアリシアちゃんは、他の冒険者よりも頼りになると思うの。功績があれば、みんなもとやかく言わなくなると思うし……どうかな?」


 アリシアちゃんは素直ないい子だから、冒険の最中に戦い方を教えてあげよう。

 お姉様が、私にしてくれたようにね。


 そして彼女が実力をつけてくれれば、私は晴れて引退できる。


「ミリア様が、よろしいのでしたら……」

「決まりだね! それじゃあ、姫様に報告してこよ!」


 よしよし、これでお城にいなくて済む!

 なんだか怒らせちゃってるみたいだし、さっさとお城から逃げ――冒険に出よっと!


 私はそんなことを考えながら、アリシアちゃんと共に姫様のところに向かうのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 毎回面白い話をありがとうございます(*´∀人) 姫様の所に二人で行けば、氷点下の目線でネチネチと言われそう(* ̄∇ ̄*) これからも更新を楽しみにしていますね(^-^ゞ
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