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第13話「千年前の真相」

「どうして、私がその者だと思われたのでしょうか?」


 普通なら、ありえない。

 初代冒険者が生きていた時代から千年も経っているのだ。

 長寿といわれるエルフでさえ、寿命は三百年。

 どう考えても生きているはずがない。


「リリアンからお聞きしました。詠唱なしのスキル発動に、常識外れなスキル。次元違いと思わされるほどの研ぎ澄まされた剣技に、魔物や罠に関する多彩な知識。今を生きる冒険者たちには、どれも当てはまらないことなのです」

「それだけ、ですか?」


 確かにシルヴィアンさんの反応的に、どれも今の冒険者にはできないんだと思う。

 でも、不可能ではないと思った。

 ルナーラ姫やシルヴィアンさんの目の届かないところで暮らし、知らない間に力をつけている冒険者がいるかもしれないから。


「決め手は、ミリア・ラグイージというお名前です。『アルカディア』の王族には、代々伝えられていることがあるのですよ」


 アルカディアとは、この国の名前だ。

 千年経っても、名前は変わっていなかった。


「もう既にお気付きかと存じますが――私の名にある『オリビア』とは、私のご先祖様であり、初代勇者――オリビア・ルージュから取られたものです」


 やはり、彼女はお姉様の子孫だった。

 千年の年月があるから、いろんな血が混じっただろうに――こうしてお姉様ソックリに生まれてきたのは、運命かもしれない。


 そっか、お姉様――王子様と、結婚したんだ……。

 まぁ仲がいいなぁ、とは思ってたけど……そっかそっか……。


「だから、私のことを知っていたんですね……?」


 私はショックを顔に出さず、笑顔でルナーラ姫に尋ねる。


「ミリア様は、我々王家の大恩人でございますので」


 大恩人、か……。

 まぁ、お姉様が王家に入ったなら……そうかもね。


「どのように伝わっているかはわかりませんが、大袈裟に捉えないでください。身の程知らずの小娘が、勇者一行に散々迷惑をかけたことに対する、せめてもの償いですから」


 正直、私は勇者パーティの一員と呼ばれる資格なんてなかった。

 他の二人とは違い、私はお姉様に選ばれたわけじゃない。

 実力不足にもかかわらず、無理矢理付いて行っていただけなのだから。


 Bランクになれたのも、十五の時からお姉様たちに無理矢理付いて行き、経験と実績を積ませてもらったおかげで、それがなかったら今もCランクにすらなれていないかもしれない。


「そんなことはおっしゃらないでください。初代勇者様は、ミリア様を実の妹のように思い、その才能と人格を買っていた、とお聞きしております。何より――魔王を討伐した際に、死にゆく魔王の呪いから、初代勇者様をミリア様が庇ってくださったおかげで、私はこうして生まれることができたのですから」


 お姉様が私の才能を買っているなんて、初めて知った。

 優しい人ではあったけど、鍛えてくれる時や冒険に連れて行ってくれる時は、凄く厳しい人だったから。


「実は……ミリア様に、王家を代表して謝罪をしないといけないことがございます」


 私が何も言わなかったからだろう。

 ルナーラ姫は、急に姿勢を正し、先程よりも深刻そうに真剣な表情となった。


「えっ、なんでしょう……?」


 私も同じように姿勢を正し、恐る恐るという感じで尋ねた。


「十年の眠りにつけば――というのは、初代勇者様方がミリア様にお()きとなった、嘘なのです……」

「う、そ……?」


 千年の時を超えて伝えられる、衝撃的な真実。

 私が千年も眠ったのは、何かの間違いじゃなかったの……?


「ミリア様もご存じの通り、魔王の呪いによりミリア様の寿命は、ほとんど残されておりませんでした」

「そう、ですね……」


 正確には、魔王の呪いが発動するのが、一週間と言われていた。

 その呪いが発動したら、私の命は奪われるって。

 だから、私は渋々眠りに――。


「その呪いはあまりにも強力で――解くのに必要な年数は、十年ではなく……千年だったのです……。そのため、ミリア様に生きていてほしかった初代勇者様方は――ミリア様に、十年とお伝えしたのです……」

「そう、だったんですか……」


 なんだろう……。

 うまく、頭が回らない……。


 お姉様たちが私に嘘を吐いていたというのもショックだし、お姉様たちがいない世界で、私が生きる意味なんてないのに……。

 それだったら、たとえ一週間しか残されていなくても、一緒に過ごさせてほしかった。


 せめて――別れくらいは、言ってくれてもよかったんじゃないかな……?


「大恩あるミリア様に嘘を吐き、勝手な都合を押し付け……その上、御身(おんみ)をお守りすることができず、大変申し訳ございませんでした……」


 ルナーラ姫は、王族としてあるまじき土下座で、私に謝ってきた。

 お姉様が悪人相手に好んでさせていた謝り方だ。


 そんなこと、王族は絶対にしたら駄目なのに……。


「やめてください……ルナーラ姫は、何も悪くないのですから……」


 自然と、私はそう言っていた。

 頭で考えるよりも先に、口から言葉が出た感じだ。


「それに、ずるいですよ……。そんなことで、私の気は晴れないのに……何も悪くないお姫様に、土下座なんてされたら……無理にでも、飲み込まないといけないじゃないですか……」


 そういう、いじわるな言葉まで続けて。


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