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第6話
「お名前ハ?」
佐藤が少し躊躇する様を見せると、男はゆっくりと答えるように促した。
「・・・・・・佐藤、佐藤です」
男は一礼して立ち上がると、
「では、サトウ様。
ご面倒をお掛けしますが、こちらの椅子に座って頂けますでショウカ?」
「なんでそんな・・・」
佐藤の質問を遮る様に、男は佐藤にソファーを座り変える様に促した。
佐藤は力なく立ち上がり、ずるずると足を引きずりなから、反対側の椅子に向かった。
「これでいいんですよね?」
男は座りながら話しかけた佐藤の言葉を遮る様に、額に手を当てゆっくりと背もたれに頭を押さえた。
「サトウ様・・・いってらっしゃいマセ」
目を開けると、ランプの光に照らされた、日中とは思えないほのかに明るい世界が広がっていた。
少し埃っぽい香りが漂う部屋に黒色のソファーが2つ、黒い小さなテーブルが一つがランプの光に揺れる弱いスポットライトを浴びて浮かび上がっていた。




