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第4話
少し感じる肌寒さに気付くと、部屋の奥の方から靴音がゆっくりと聞こえてきた。
靴音に神経を集中させていると、
「・・・・・・いらっしゃいマセ」
急に耳元で男の声がし、身体が痺れ、硬直し、微かに眼だけがゆっくりと動いた。
「あちらのお席へドウゾ」
身体をポンと押されると、もう片方の手で指し示されているソファへと佐藤の身体が動き始めた。
座ると、柔らかなソファに身体が沈み、あまりの気持ち良さに、自分の存在が消えたしまうかの様に感じた。
「本日はどうされまシタカ?」
白い肌に細い眼が銀縁の眼鏡の奥に光り、若い様相に見えたが、真っ白の髪の毛が年齢をわからなくさせていた。
「とりあえずここは何ですか?あなたは?」
男は記憶喪失でされる質問項目に、クスッと笑みを浮かべたが、佐藤は泳いだ目が止まらずに目玉が動き回っていた。
すると、テーブルの上にどこからともなく男は紅茶を差し出した。




