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第3話

黒く蠢く建物の前に立ちすくんでいると色彩の世界に戻り、そこには先程感じた異様な気配とは全く異なる様相の見慣れたどこにでもあるビルが建ち並んでいた。


普段なら目にも止まらない13階建てで灰色の薄汚れたコンクリートの建物を、観光地でみる珍しい建物の様にまじまじと見つめていた。


すると、佐藤は一階出入り口に表札程の小さな看板が掲げられている事に気付いた。


「分岐店 クロスロード」


(分岐店・・・?)


何の事だかわからない佐藤は、引き返そうと足に力を入れた。


その瞬間、携帯電話のバイブ着信の振動が身体を駆け巡り、現実世界は再び白黒の様相を呈し、鼓動が酷く早まった。


現実世界から逃げる様に、佐藤は入り口の扉を力なく押し開け、ビルの中へと足を踏み入れていった。


二重の扉を開けると、ランプの光にともされて、日中とは思えないほのかに明るい世界が広がっていた。


少し埃っぽい香りが漂う部屋に、白いソファが2つ、白い小さなテーブルが一つがランプの光に揺れる弱いスポットライトを浴びて浮かび上がっていた。

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