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第10話
「わああぁぁぁ!」
佐藤は携帯電話を投げ捨てた。
荒くなった息が肩を大きく動かし、焦点の定まらない目で見たせこいはモノクロになった。
佐藤の膝が力無く崩れそうになった時、歪む程濃い黒色の建物が目に入った。
佐藤は何かから逃げる様に建物に向かって走り、逃げ込む様に入り、二重の扉を開けて進んだ。
少し埃っぽい香りが漂う部屋に、黒いソファが2つ、黒い小さなテーブルが一つがランプの光に揺れる弱いスポットライトを浴びて浮かび上がっていた。
少し感じる肌寒さに気付くと、部屋の奥の方から靴音がゆっくりと聞こえてきた。
「・・・いらっしゃいマセ」
突然耳元で声が聞こえ、振り向くとハルセが不適な笑みを浮かべていた。
「本日はどうされまシタカ?」
佐藤は間髪入れずに
「ここは過去に戻れるんでしょ?
ほら、前みたいに。
前に戻りたいんだ!」
ハルセは少し間をおき、
「何のお話でしょウカ?
当店は喫茶店でございマスが」




