プロローグ
これは、われら地球人の知らない、はるか宇宙の果ての銀河にある小さな惑星の物語である。
惑星の名は『リアース』。
地球と似た環境を持ち、地球と同じように人類が進化してきた惑星だ。
惑星全体は、地球でいうところのヨーロッパのような文化で統一されている。
そして、その街並みは何百年と変わることなく続いていた。
そして何より独自の経済システムによって、醜い争いや、奪い合いなどをする必要がなかったこの惑星では、社会的成長速度の鈍化と引き換えに、長いこと戦争もなく平和だったのだ。
だが──
そんな争いのなかった世界を、悲劇が襲ったのは700年前のこと。
突如として、この惑星の人々を絶望に陥れた悪夢──
それは魔王率いるモンスターたちの襲来だった。
魔王は、この惑星の中心にある世界樹のはるか上空に浮遊する魔王城を作り、次のように世界に警告を発したのだ。
『聞こえるか人間どもよ。わたしは魔王。この惑星は、これよりわたしの支配下とする。いつ如何なるときも、モンスターに襲われる恐怖と不安に怯えながら生き永らえるがよい────』
それからというもの、モンスターとの遭遇における報告はあとを絶たなかったが、幸か不幸か魔王軍の被害による一般市民の死亡例は、今まで一度も報告されていない。
ただ──
この700年のあいだ、魔王討伐に向かった何人もの勇者たちは、例外なく帰らぬ人となってしまったと記録されている。
当初は世界各地に出現したモンスターを蹴散らすべく、銃火器をはじめ、戦車や戦闘機などといった現代兵器で挑んだが、魔王が率いるモンスターたちの軍勢には傷ひとつ与えられなかったという。
恐怖した人間たちは、かつて核兵器による攻撃を行ったこともあったそうだが、それですらも無傷だったそうだ。それどころか、核兵器による人体や環境への悪影響のほうが深刻になってしまった。
長年の研究からわかったのは、魔王やモンスターたちの身体は特殊な魔力で薄く覆われており、それが物理的な攻撃を無力化していることがわかったのだ。
人々はそれを『魔力装甲』と名付けた。
それからの人類は、魔力装甲に有効な攻撃手段を模索していたという。
そしてたどり着いたのが、地球では伝説の鉱石とされているレアメタル『オリハルコン』だった。
リアースには、希少ながらオリハルコンが存在していたのだ。
初代勇者が使ったとされる伝説の剣『ゼットカリバー』も、このオリハルコンによって作られたと伝えられている。
そして現在────
リアースの平和をとり戻すべく、ひとりの男が立ちあがった。
そして彼もまた勇者として、魔王を倒す旅に出たのだった。