表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/19

プロローグ

 遅くなりました。

 深い訳あって、二章は改行なし&同作者比で誤字脱字が多いですがご了承いただければ幸いです。

 

 私の名は佐藤 澪。先日、桜坂 澪になった元庶民の女の子だ。

 名を変えた理由はたった一つ、余命宣告を受けた病気の妹を救うため。

 私の妹――雫は優しい女の子だ。まだ中学二年生の彼女が、あと三年しか生きられないと聞かされ、一体どれだけ悲しかっただろう? そんなの、私には想像すら出来ない。

 なのにあの子は私にこう言った。

「もうこれ以上、私のために無理をしなくてもいいんだよ」

 私が雫の立場なら、同じように他人を気遣えるだろうか?

 きっと無理だ。

 どうして私がこんな目にって、世界を怨んで泣きじゃくるしか出来ないと思う。

 掛け替えのない私の妹。

 だから私はある契約をして、あの子を救う為に桜坂家の養女になった。

 契約の内容はこうだ。

 私が紫月お姉様の代わりに悪役令嬢となり、桜坂家の令嬢として蒼生学園に通う。そして、ヒロインである乃々歌ちゃんの成長を促し、世界をハッピーエンドに導くために破滅する。

 それを代償として、将来的に認可される最新医療を雫に受けさせる。

 ここが乙女ゲームの世界だとか、紫月お姉様が本当の悪役令嬢だとか、私が実は桜坂家の血を引く女の子だとか色々あるけれど、端的に言ってしまえばそれだけだ。

 つまり、私は雫を救うために、乃々歌ちゃんを虐めればいい。

 ただそれだけ。

 それだけなんだけど――

「澪さん、澪さん、この服に合わせるスカートはどっちがいいと思いますか?」

 これである。

 校外学習で乃々歌ちゃんがファッションに興味を持つように仕向ける――という試みは成功した。だけど、私に馬鹿にされたことが悔しくて、それをバネにファッションの勉強をするのが本来の展開だったのに、いまの乃々歌ちゃんはどう見ても私にアドバイスを求めている。

 あれだけキツく当たったのに、この子のメンタルはどうなっているの?

 というのが私の正直な感想だ。

 もちろん、人を虐めることは悪いことだ。罪悪感だってある。だから、彼女を傷付けずに済んでよかったという想いはある。でも、雫を救うためにはこれじゃダメだ。

 だから――

「ベースカラーを考えれば、そっちの淡い藤色のスカートに決まってるでしょ。そんなことも分からないなんて、コーディネートを勉強したんじゃなかったの?」

 私は乃々歌ちゃんにキツく当たる。

 これ以上、私が優しいなんて勘違いをしないように。

 なのに――

「あ、たしかにその通りですね! じゃあ、上着はこれとこれ、どっちがいいですか?」

「だから、バランスを考えなさいって言ってるでしょ? 色々な組み合わせはあるけど、そっちの上着はバランス的に考えてあり得ないじゃない」

「じゃあ、鞄はどれがいいですか?」

「好みによるけど、わたくしはこっちかしら。……というか、ねぇ? わたくしの言葉、ちゃんと聞いてる?」

「もちろん聞いてますよ! さすが澪さん、すごいです!」

「……この子のメンタル、どうなってるの?」

 どう見ても懐かれている。

 慕われているというより、懐かれている、というのが正しいレベルだ。

 振られる尻尾の幻覚が見えるくらい。

 たしかに、私は乃々歌ちゃんの質問に答えている。ただ虐めるのではなく、それによって乃々歌ちゃんの成長を促すという役目があるから。

 でも、キツい言い方をしていることに変わりはない。普通なら、どうしてそんな言い方をされなくちゃいけないのかとキレるところだろう。だけど、乃々歌ちゃんは必ず『言い方はキツいけど、私のために言ってくれてる!』と気付いてしまうのだ。

 おかげで、この有様である。

 相当に厳しい言葉を付け加えているはずなのに、返ってくるのは満面の笑顔。

 紫月お姉様曰く、この世界は乙女ゲームを元にしてるって話だけど、そのタイトル、『悪役令嬢に転生したけど、真のラスボスはヒロインでした』みたいな感じじゃないわよね?

 乃々歌ちゃんが、悪役令嬢に虐められて落ち込むとか、想像できないんだけど。

「澪さん、澪さん。今度、この服を着た私とお出掛けしませんか?」

「嫌よ。私は忙しいの。そんなに出掛けたければ友達でも誘いなさい」

 ストレートに友達面しないでと言ったつもりだったのだけど、乃々歌ちゃんには「だから澪さんを誘っているんですよ?」みたいな顔をされた。

 もしかして、私のことを友達と思ってるの? とか、怖すぎて聞けない。

 しかも、しかも――である。

「最初は怖かったけど、澪さんって実はいい人なんですね」

 乃々歌ちゃんの友人にまでそんなことを言われてしまった。先日は琉煌さんにツンデレ呼ばわりされてしまったし、このままでは悪役令嬢として破滅できない。

 もし、私が悪役令嬢に生まれ変わった一般人なら、この展開を喜んだだろう。

 でも、私は巻き込まれた転生者じゃない。妹を救うために、望んで悪役令嬢になった。紫月お姉様の代わりに破滅するのが私のお仕事だ。

 このまま、乃々歌ちゃんと仲良くなる訳にはいかない。

 だから、まずは悪役令嬢の立場を再構築する。

 大丈夫。信頼を積み上げるのは大変だけど、一度積み上げた信頼が崩れるのは一瞬だ。私がその気になれば、悪役令嬢として人々から嫌われるのだって難しくない。

 目指すは、乃々歌ちゃんの敵。

「さぁ、悪役令嬢のお仕事を始めましょう」

 

 

 お読みいただきありがとうございます。評価やブックマークで応援していただけると嬉しいです!


 新作2シリーズを投稿中です!

『乙女な悪役令嬢には溺愛ルートしかない』

 性格以外完璧な悪役令嬢に薄幸の女の子が転生した話

『三度目の皇女は孤児院で花開く』

 孤児院にいながら、貴族や情報ギルドを相手に権謀術数の限りを尽くす皇女の物語

 

 下にリンクがあるので読んでいただけると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ