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WordraW  作者:
53/77

053.Die For Dendria

Wordle 273 5/6


⬜⬛⬛⬛⬛

⬛⬛⬜⬛⬛

⬛⬜⬛⬛⬛


⚪⚪⚪⚪⚪




 私は入国管理官。

 今日も貴様らの虚誕を暴こう。

 

 次!


 高潔なる私の執務室。左側の扉からまた一人、男が入ってくる。

 名前は。


「オットーです。オットー・ゲルプケ」


 ふん。Otto(オットー) Gelbke(ゲルプケ)籍国帳(ジャスパ)に相違ないな。だが私の目は真っ黒だぞ。

 では入国目的は。

 

「妻に会うためです。リンダといいます。リンダ・ゲルプケ」


 間抜けが(forbidden)。デンドリアにそんな名前の国民はおらんわ。

 手元のボタンを押すとすぐに警備兵(キルボット)が五体、天井に開けられた穴から這い出てくる。デンドリアの国防の要となる生体兵器だ。

 オットー・ゲルプケは悲鳴を上げるまもなくキルボットにすり身にされる。死者に血さえ流させないというのがなんとも美しい。完璧な私の仕事にふさわしい部下たちだ。

 

 ◇

 

 私は入国管理官。

 今日も貴様らの虚誕を暴こう。

 

 次!

 

 高潔なる私の執務室。左側の扉からまた一人、女が入ってくる。

 名前は?

 

「レベッカ・ポーシャール」

 

 歳は。

 

「……31ですけど」


 入国目的は。

 

「おたくの軍に傭兵として雇われました」


 民間傭兵か? 傭兵管理監督契約授受書類は。

 

「これです」


 先に出せ。

 ……ふん。デンドリアへ入国したらどこへゆく。

 

「ディテントへ。そう言われているので」


 良いだろう(allowed)デンドリアの土へ(ForDendria)

 女は最後まで不遜な態度で右側の扉へ消えた。私はその程度で腹を立てたりはしない。躾は私の仕事ではない。私は貴様らをデンドリアに入れるか、入れないか。それだけだ。

 

 ◇

 

 私は入国管理官。

 今日も貴様らの虚誕を暴こう。

 

 次!

 

 高潔なる私の執務室。左側の扉からまた一人、男が入ってくる。

 名前は?

 

「ディートフリート」


 …………。

 

「おい、てめえこの格好が見えねえのか。俺はデンドリアの軍人だぜ。早く通してくれ。時間がない」


 籍国帳(ジャスパ)はどうした。ディート・フリートというのが貴様の名か。

 

「あんまりふざけるなよ、管理官(Admie)お役所仕事(botwork)も大概に──」


 籍国帳(ジャスパ)を出せ。ディート。機械(bot)で死にに来たのでないなら。

 男は青筋立った頭を思い切り私から背けて、二度三度弾けるような声を上げる。そのままこの執務室の壁や扉に殴りかかるかと思われたが、デンドリア人というのは本当なのだろう、そんな無駄なことはせず、しばらくしてから震えた声で「ディートフリート・クレンク」と籍国帳(ジャスパ)を差しだした。

 ふん。最初からそうすればいいのだ。軍人はこれだからいかん。

 では、ディートフリート。入国目的は。

 

「……お前、ふざけてるのか。それとも今外がどうなってるか知らねえのか」


 聞かれたことのみに答えろ。

 

「…………」


 あまり無駄な時間を使わせるな。

 

祖国防衛のため(ForDendria)


 ふん。その通りだな(allowed)

 男は右側の扉から慌ただしく出て行った。

 

 ◇

 

 私は入国管理官。

 今日も貴様らの虚誕を暴こう。

 

 次!

 

 高潔なる私の執務室。左側の扉を蹴破るようにして、五人組の男たちが入りこんでくる。蹴破るようにして、というのはその通り。蹴破れやしないからそうして入ってきたのだ。

 最近地鳴りが激しいとは思っていたが、そうか、壊せないとみて入ってきたな。

 貴様ら、名前は?

 

「…………」

「こいつか」

「……」


 籍国帳(ジャスパ)を求めるまでもなく、その言葉が名前ではないことは明瞭だった。

 私が、退去(forbidden)を命じる前に、その一人の持つ自動小銃が火を放つ。火を放つのと、そして彼らの末期(forbidden)とは同時だった。キルボットの流れるような所作は何度見てもほれぼれするようだった。これこそ、デンドリアの栄光を湛える一つの杯になる。

 私は今日も、その杯を傾ける。

 

 ◇

 

 私は入国管理官。

 今日も貴様らの虚誕を暴こう。

 

 虚誕ばかりだ。

 虚偽に妄言、大言壮語のほら吹きばかりなのだ。

 

 今や左の扉も右の扉も関係なく、籍国帳(ジャスパ)すら持ち合わせていない痴れ者(forbidden)共がこの執務室にやってくる。どいつもこいつも、敵国の軍服に身を包み、敵国の言葉で語る、騙る。

 デンドリアはもう無いなどと。馬鹿馬鹿しい。

 

 私は入国管理官。

 貴様らの虚言はお見通し。

 

 私は入国管理官。

 デンドリアの栄光は、この執務室から永遠に続く。

 

 私は入国管理官。

 いつかデンドリアの土に還る。




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