下
――杉並第二ダンジョン第十層深部「岩山エリア」
「十層まで来るのに1週間か。思ったよりかかったなあ」
「普通の冒険者に比べたらずっとハイペースですよ」
「……実習で潜ったときは、2週間かけた」
旅の道連れができた俺たちは、さらに速度を上げてダンジョンを潜っていた。
潜ると言いつつ、いまは岩山を登ってるんだけど。
ダンジョンの地形はマジでわけわからん。
急坂続きでなかなかしんどいが、俺だけでなく、マジョッコを逃げ出した二人にも追手がかかっているそうなのでのんびりはできないのだ。
俺の方はアジトを爆破しているからその分で時間稼ぎができていると思うのだが、マジョッコの方はフリーハンドだ。
二人の予想になるが、門限通りに寮に帰っていない時点で探査魔術が使われている可能性が高いらしい。
「……右上、岩場の影に何かいる」
「りょーかーい。チャー、シュー、メーンっ!」
棍棒で足元の石ころをゴルフスイングで殴りつけ、散弾のように岩場に浴びせる。
すると岩陰から2枚の羽をはやした人型が飛び立っていった。
棍棒は第3層のボスから頂戴した代物だ。
リーチも長いし、やたらに頑丈なので重宝している。
あの戦闘以来、人喰い雄呂血も温存できているのでありがたいことだ。
「ガーゴイルもどきですね」
「またかー」
「……ガーゴイル天国」
シオリちゃんがメガネをくいっとさせてさっきのモンスターの正体を教えてくれる。
本来のガーゴイルは魔法生物に分類され、人工的な建造物に警備として備え付けられていることが多いそうだ。
そして先ほど逃げていったのはガーゴイルもどき。
岩のように硬い皮膚を持ち、背中にある2枚の羽で飛び回るという点はガーゴイルと変わらないが、血の通った肉のあるれっきとした生物なのだそうだ。
食用も可能らしいのだが、臆病ですぐに逃げるせいで先ほどから捕まえられていない。
「食料も乏しくなってきましたし、そろそろ何か捕まえたいんですが」
「携帯食はまだまだあるけどね」
「……それは最後の手段」
なんでモンスターの正体にこだわっているのかと言えば、手持ちの食料が少なくなってきたせいなのだ。
1層のコウモリや3層のオオカミのように好戦的なモンスターであれば狩るのに苦労はしないのだが、9層以降は逃げ回るモンスターばかりで追加の食料を確保できていないのである。
食料が切れたら地上に戻る、というごく当たり前の対策が取れない俺たちにとって食料の確保は重要な問題だ。
時間をかけて保存食を作る余裕もないし、行きあたりばったりにモンスターを狩って食うのがメインの食料調達手段になるのは避けられないのだが……。
「まあ考えても仕方がないし、ひとまず10層ボスまで進んじゃおうか」
「そうですね」
「……致し方なし」
* * *
二人が持っていた有料のガイドブックの地図に従い、10層ボスのいる近くにまで辿り着いた。
道中で問題になるようなモンスターには出会わず、また食料として捕まえられるモンスターにも出会わなかった。
10層のボスは岩山の山頂にある岩戸を開けると中で待ち構えているらしい。
なかなか貴重な素材を落とすらしく、再発生を待つ冒険者達が周辺でキャンプを張って待機していた。
これ、順番待ちしなきゃいけないのかなあ。
素材は譲るから、割り込みさせてもらえないだろうか。
「すんませーん、そこのお兄さんたち」
というわけで、さっそく交渉だ。
岩戸の一番近くでたむろしているお兄さんたちに声をかけてみた。
顔中傷跡だらけの強面で、いかにもベテラン冒険者って感じだ。
「ああン? なんか用か、兄ちゃ……え、ジャージ?」
使い込んだ革鎧を着たスキンヘッドの兄ちゃんが振り返り、俺の姿を見て固まる。
うんうん、わかるよ。
なんか5層から10層は中堅冒険者向けで、そっから先は上級冒険者向けだって話だ。
俺みたいな、近所を散歩してるような格好の人はまったく見かけないもんね。
「あの、実は俺たちですね、先を急いでまして。分け前はいらないので、次の順番が来たら交ぜてもらえないっすかね?」
「ダメに決まってんだろ。そうやって経験値を吸おうなんてしても、受けてくれるやつなんていねえよ」
経験値? 経験値とはなんぞや。
すげなく断られてしょんぼり戻ってきた俺に、シオリちゃんとトウコちゃんが教えてくれる。
「経験値というのはですね、ダンジョンのモンスターを倒すと手に入るもので、一定以上入ると魂の格が上がって、身体能力や魔力が上がるんです」
「……経験値も知らなかったとか、ビビる」
「へー」
シオリちゃんたちは魔法少女になるための修行の一環として、ダンジョンには何回も潜ったことがあるらしい。
レベルが上がると強くなるので、卒業までに10レベル以上にすることが義務付けられていたのだそうだ。
ゴブリンに換算すると、一人で100匹くらい倒すと10レベルに達するそう。
さすがは魔法少女育成の名門校である。
卒業試験に殺し合いがある点も含めて、殺意の高すぎるカリキュラムだ。
「それで、二人はいま何レベルなの?」
「私は13レベルですね。この1週間で2レベルも上がっちゃいました」
「……ボクも同じ」
「それで、俺はいま何レベルなの?」
「いや、それはわからないですって」
「……ボクに聞くな」
二人がどうやって現在レベルを把握しているのか聞いてみると、冒険者カードを見せてくれた。
冒険者カードは俺も持っているんだけれど、最低料金で作った単なる身分証明書だ。
追加料金を支払うとオプション機能が付与されて、いま現在の自分のレベルや、魔力の残量などを表示してくれるとのこと。
二人の冒険者カードを確認すると、レベル欄にはたしかに13と表示されていた。
「あと、気になったんだけど、このジョブって何? 中学生じゃまだ就職できないと思うんだけど」
「ああ、ジョブというのはそういう意味じゃなくてですね……」
ジョブというのは、レベルアップによって得られる強化の方向性を定めることのできるものなのだそうだ。
シオリちゃんは白魔道士で、トウコちゃんは黒魔道士。
白魔道士は回復や補助などを得意とする魔法職で、黒魔道士は攻撃魔法を得意とするのだそうだ。
「じゃあ、俺のジョブは何なの?」
「……だからボクたちに聞くなって」
俺の冒険者カードには顔写真と住所氏名、それに有効期限くらいしか載ってない。
二人の冒険者カードにはレベルやジョブの他に、ステータスとかいう数値も細々書かれている。
これが所得と資産が生み出す情報格差ってやつか。
貧乏人は正しい情報にすらたどり着けないのだ。
「なんか違う気がしますけど」
「……ひがみ根性だ」
たしかに、昼飯を数回我慢すれば足りるくらいの金額で冒険者カードのアップグレードはできたはずだ。
ま、いまさら悔やんだところで仕方がない。
俺はもう過去は捨てた男だ。前を向き、未来だけを見て生きよう。
「というか、レベル1であの強さだったんですね」
「……ドン引き」
ほぼ毎日、生き延びるために必死で戦ってたからねえ。
サディストのヒーローたちが暴れまわる採石場に比べたら、ダンジョンなんてぬるま湯みたいなものですよ。
ともあれ、経験値というのは一緒に戦った仲間で分配されてしまうものらしい。
援軍が欲しいパーティならわざわざこんなところでキャンプは張っていないだろう。
素直に順番待ちをするしかなさそうだ。
というわけで、ダンボールを敷いて野営の準備だ。
* * *
6~7時間くらい待って、ようやく俺たちの順番が回ってきた。
この階層のボスはだいたい2時間に1度くらいのペースで復活するらしい。
ただの岩壁だった場所にすうっと線が走り、扉の輪郭が現れる。
これがボスが復活した合図だ。
先にボスを倒したパーティは、また最後尾に並び直している。
中に居座っていれば独り占めできるんじゃないだろうか。
「人が見ていると復活しないらしいですよ」
「恥ずかしがり屋さんなのかな?」
「……それは違うと思う」
岩戸をぐいっと押して中に入ると、大きな空間が広がっていた。
壁際には松明がかけられていてけっこう明るい。
松明なんて長持ちしないだろうに、誰が取り替えてるんだろうな、あれ。
「余計なことを話している場合じゃないですよ」
「……油断大敵」
おおっと、そうだった。
ここはボス部屋なんだな。
棍棒をかまえて中へと進む。
部屋の奥にはエリートホブゴブリンよりもさらに巨大な人影があった。
身長は俺の2倍以上。
そのくせ、地面につきそうなほど長い腕をしている。
皮膚は岩のようになっていて、いかにも硬そうだ。
ゴブリン棍棒でダメージは入るんだろうか?
俺たちが部屋の中央まで進むと、岩の怪物はゆっくりと歩きはじめた。
ロックトロールというモンスターらしい。
一歩ごとにずしんずしんと地面が震動する。
体重は1トン以上ありそうだな。
「とりあえず、つっかけてみる」
全速力で突進し、飛び上がってロックトロールの脳天に棍棒を振り下ろす。
衝撃でロックトロールがのけぞるが、致命傷にはほど遠そうだ。
「援護します! 武器強化!」
「……装甲剥がし」
シオリちゃんの魔法により、棍棒に薄っすらと光るエフェクトが入る。
反対に、トウコちゃんの魔法はロックトロールの全身にまとわりつく闇のようなものを発生させた。
前者が武器の攻撃力を増す魔法で、後者が敵の防御力を下げる魔法だそうだ。
説明してもらったけれども結局原理は理解できなかった。
ともあれ、有効であるのは間違いないのだから、ありがたく恩恵に預かる。
この魔法のおかげで棍棒一本でここまで来れたのである。
続けてぼこんばかんと殴りつけると、面白いようにロックトロールの皮膚が砕けた。
反撃で長い腕を振り回してくるが、すっとろいのでまるで当たる気がしない。
このまま問題なく押し切れるだろう。
なんて、甘いことを考えていた時代が俺にもありました。
「おほほほほほほほほ! 相変わらずぱっとしない魔法を使っておりますのね!」
「アメリアちゃん、ぱっとしないとかそういう言い方よくないよう」
ロックトロールの背後に光り輝く魔法陣が現れ、そこから二人に少女が現れたのだ。
一人は金髪縦ロールのザ・お嬢様という風貌。
もうひとりは黒髪のロングストレートで和服を着たザ・大和撫子だ。
「アメリアちゃんにアイカちゃん!?」
「……なんで二人が」
シオリちゃんとトウコちゃんが驚きの声を上げている。
俺も驚きの声を上げたいが、ロックトロールを殴っている最中なので声が出せない。
なんか疎外感を感じてさびしい。
「決まっているじゃない、あなたたちが卒業試験から逃げ出したから、わたくしたちが追手に選ばれたのですわ」
「そういうことなの。ごめんね、あなたたちを殺せば、私たちの卒業試験は免除になるんだって」
うわー、マジョッコから来た刺客だったのか。
俺の方より早く来るなんて想定外だったな。
そっちの業界は詳しくないから、無意識のうちに甘く見てしまっていた。
「簡単に殺されるわけにはいかない! それに、あなたたちだって殺し合いなんかしたくないでしょ!?」
「……一緒に逃げちゃえ」
うんうん、そうそう。
女の子同士……というか、人間同士が殺し合うなんて健全じゃないよ。
俺も悪の組織暮らしが長すぎて感性が死にかけてたけど、暴力反対、平和万歳です。
って全力で同意したいのだけれど、ロックトロールを殴るのに忙しくて口が出せない。
「ふん、それは平民の考えですわね。わたくしたちには血を流してでも叶えなければならない責務がありますの!」
「私たちが逃げて、暗黒生命体が地球に攻め込んできたら絶滅だからね……。嫌だけど、やるしかないんだよう」
そういうと、金髪縦ロールは腰の細剣を抜き、大和撫子は空中に生じた魔法陣から大鎌を引き出して構えた。
ええ……大鎌とか魔法少女の武器としてアリなの?
とにかく、このままではマズイ。
シオリちゃんもトウコちゃんも遠距離専門で近接戦闘が得意なタイプじゃない。
距離を詰められたらあっという間に追い込まれてしまうだろう。
というわけで、
「だぁぁぁあああっっっしゃぁぁぁあああ!!!!」
渾身の力を込めてロックトロールの腹をかち上げる。
宙に浮いたそれをドロップキックでさらにふっ飛ばした。
ふっ飛ばした先はもちろんアメリアとアイカの二人組だ。
二人は左右に跳んで吹っ飛んできたロックトロールの巨体をかわす。
「さっきからボコスカとうるさいですわね! あなた誰ですの!?」
「部外者は下がっててほしいよう」
「うーん、部外者じゃなくて、仲間なんだよね」
地面でのたうっているロックトロールを一旦放置して、シオリちゃんとトウコちゃんの前に立つ。
「あの二人は強いの?」
「強いです。まだ変身できないのに、現役の魔法少女なみの実力があります」
「……マジョッコ史上最強」
マジかー。
魔法少女っていうと、たぶんこっちの業界のヒーローなみの強さでしょ。
こりゃ俺も手を抜いてられないぞ。
「本気出すから、援護よろしく」
「わかりました!」
「……了解」
俺たちのやり取りを見たアメリアとアイカが笑う。
「本気ですって? 一般人が魔法少女にかなうと思っているのかしら?」
「女の子だと思って甘く見るのはよくないよう」
「いや、俺も悪の組織の……いやいや、たしかにいまはもう一般人か」
とりあえず棍棒を捨て、邪刃を解放して正面に構える。
暗黒のオーラを放つ人喰い雄呂血を見て、魔法少女たちの表情が変わった。
「その邪悪なオーラ……まさか暗黒生命体の手先!」
「そうか、おまえがシオリとトウコをたぶらかしたんだ!」
暗黒生命体とかいうのは知らんし、たぶらかすも何も知り合ったのは二人がマジョッコから逃げた後なんだけど……。
まあ、ヘイトが俺に向かう分にはやりやすい。
俺を放って後ろの二人を狙われる方が危なかった。
ついでにスイッチも入れておく。
発動前に押し切られたらマズイが、防戦に集中すればきっと大丈夫だろう。
……なんて考えていた俺が甘々でした。
この短時間で何度自分の甘さを痛感させられたことか。
もう、穴という穴から砂糖が漏れ出そう。
激高した二人は得物を手に俺へと殺到した。
レイピアによる、機関銃のような刺突の連撃。
大鎌による攻撃は大きく避けざるを得ず、体勢を崩しそうになる。
そこへまたレイピアによる鋭い追撃。
あっという間に俺のジャージがボロボロになっていく。
紙一重でかわし……きれずに浅手を負いまくっている。
いつ致命傷をくらってもおかしくない。
あれほど忌々しく思っていた中途半端な力が早く発動してくれないかと焦るほどだ。
かわす、かわす、かわす。
受ける、かわす、かわす、受ける。
数十秒にも満たない攻防が、何十分にも、何時間にも感じられる。
切りつけられた痛みを感じる暇もない。
呼吸をする暇もない。
腹の奥が熱くなってくる。
おお、おおお、これはきたか……!!
突然、視界が明瞭になる。
速すぎて目で追うのが精一杯だったアメリアとアイカの動きがスローモーションになる。
血液が沸騰し、力がみなぎる。
レイピアの一撃を右手の雄呂血で弾き飛ばし、左手で大鎌の刃を掴んで止める。
やった、間に合ったぜ!
「なんですの……そのおぞましい姿は!」
「手を離せっ! けがらわしい!」
離せって言われても離さないよー。
時間制限付きのパワーアップなのだ。
ここで一気に決めないと時間切れになってしまっては勝ち目がない。
鎌を掴んだ左手を引き、アイカの腹に膝蹴りを叩き込む。
アイカは体をくの字に曲げて崩れ落ちた。
気を失っただけだよな?
内臓破裂とかしてないよな?
まあ、魔法少女とか言うくらいだし、即死でなければきっと治せるだろう……。
続けてアメリアの正面に跳ぶ。
急上昇したスピードに認識が追いついていないのだろう、防御姿勢も取れていない。
その瞳には醜く変貌した俺の姿が映っていた。
あーあ、適当に肉をこねてひっつけたような姿には俺自身も引くくらいだ。
ちびっこがテレビで見たらおしっこもらしてトラウマになるわ。
なんてしょーもないことを考えつつ、アメリアの顎先へ裏拳を一撃。
脳震盪に陥り、糸が切れた人形のように倒れ伏す。
ふいー、これで一旦無力化完了。
シオリちゃんとトウコちゃんの方を振り返ると、やっぱりびっくりして固まっている。
うーん、そうだよねえ、この姿、インパクトが強すぎるんだよねえ。
これが俺の切り札であり、なるべく使いたくない技である「1分間の怪人」だ。
ほんの短時間だが上級怪人なみの力が発揮できるという能力である。
ちなみに正規の怪人化手術は受けていない。
組織から、健康診断と偽って怪人細胞を注入されたのだ。
隠されていたが、噂では適合しなかった同僚が何人か廃人になっているらしい。
マジでブラックなんてもんじゃないぞ、あの職場。
一息ついていると、全身から熱が抜けていく感触がする。
というか、実際蒸気が噴き出している。
変身タイム終了だな……ってその前に、ひとつ仕事を忘れてた!
完全に蚊帳の外になっていたが、ロックゴーレムが視界の端でふらふらと立ち上がっていた。
素早くそちらに跳んで、十文字に分割。
再生能力が高いらしいから、念のためにバラした身体を離れたところに蹴り飛ばす。
そこまでしたところで、蒸気の噴出が止まった。
全身から力が抜けていき、膝をついてしまう。
これが「1分間の怪人」のもうひとつの弱点だ。
変身が終わるとフルマラソンを走りきった直後みたいに疲れ切ってしまうのだ。
「大丈夫ですか、マサヨシさん!」
「……回復ポーション、いる?」
大丈夫、ちょっと休めば動けるから……と言いたいのだけれど、息切れしてしまって声が出ない。
代わりに震える手でアメリアとアイカの方を指差す。
気を失ってはいるが、致命傷は与えていない。
いまのうちに拘束しないと、意識が回復したらまた戦闘になってしまうだろう。
俺の意図を察した二人がロープでアメリアとアイカを縛ってくれた。
「マサヨシさん、そんな力まで持ってたんですね」
「……若干、ピーキー」
拘束を終えたシオリちゃんとトウコちゃんが俺の心配をしてくれる。
シオリちゃんは疲労回復の白魔法をかけてくれているようだ。
「こわく、ないの?」
ぶっちゃけ、変身時の俺の姿はこのダンジョンで出会ったどのモンスターよりも醜くて恐ろしいものだった。
不細工すぎて、せっかく怪人になれたのに正怪人としては認められず、変身禁止令まで出されるほどだった。
いくら魔法少女候補だといっても、女子中学生には刺激の強すぎるビジュアルだろう。
「マサヨシさんは優しいですから、怖くないですよ。アメリアちゃんたちも殺さないでくれましたし」
「だって、友達、なんでしょ?」
「……悪魔の毒々モンスターみたいで、カッコいい」
「悪魔の、毒々、モンスター?」
そんな俺の内心を悟ったのか、二人がフォローをしてくれる。
トウコちゃんのセンスについては議論の余地がある。
その間に、ずごごごごと何か重量物が引きずられる音が聞こえてきた。
部屋の奥の壁がスライドして、地下に続く階段が現れたのだ。
俺はよろよろと立ち上がって、二人に声をかけた。
「それじゃ、11層行ってみようか」
「「はい!!」」
ぐずぐず考えてたってもう仕方がない。
目指すは悪の組織もヒーローも、ついでに魔法少女もいない憧れの異世界だ!
(了)
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いま書いている長編を完結させたら、リメイクして長編化するかも?
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